子宮について、どのくらい知ってる? 4月9日は「子宮の日」。
子宮は身近な存在でありながら案外知らないことも多い
子宮。
ほとんどの女性にとって、日々の生活で意識することの多い存在でしょう。
男性でも、この言葉を一度は聞いたことがあると思います。
子宮は(生物学的に)女性だけが持っており、下腹部(骨盤の中)に位置しています。
その存在目的は「新たな命を育て、産む」こと。
生物学的には、心臓や脳と違って生きる上で必要な臓器ではなく、あくまでも子孫を残すためだけに人間にも備わっているものです。
「子宮は、毎月の月経を起こして、妊娠すると赤ちゃんが育つ場所」
多くの方にとっては、子宮についてこのような認識をお持ちではないでしょうか。
しかし、実は「子宮」について詳しく考えてみたことがある方は少ないかもしれません。
普段の子宮は「ニワトリの卵」くらいの大きさ
通常、子宮は、下腹部の奥の方に1つだけあります。
妊娠していない状態ではかなり小さく、「ニワトリの卵」くらいの大きさ(全長7cm程度、横幅3-4cm程度)と例えられます。
重さは50g程度で、ほとんどその重量を感じることはありません。
その子宮の両脇に卵巣がくっついていて、女性ホルモンを分泌しています。
ちなみに、卵巣からは毎月1個だけ卵子が子宮内へ排出(=排卵)されますが、左右どちらの卵巣から出てくるかは毎月ランダムと考えられています。
なお、妊娠すると子宮はどんどんと大きくなり、出産が近い妊娠37-40週になると、子宮は全長35cm程度にまで大きくなります。
その中にいる2.5〜4kgの赤ちゃんを守っているんですね。
妊婦さんが胃もたれや息切れ、腰痛に悩まされるのも無理はないと想像できます。
知っておいてほしい、子宮に関連する病気や症状とは
そして大事なのは、「子宮にできる病気や辛い症状」です。
本来であれば自分自身が生きる上で必須な臓器ではないのに、病気や辛い症状を起こすことがある。
このように、女性は生まれながらにして「他者(未来の子ども)のために自らが抱えるリスク」を持っているとも考えられるのです。
それでは、どのような病気や症状が子宮には起こるのでしょうか。
【病気(良性)】
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、感染症(子宮内膜炎など) など
【病気(悪性)】
子宮頸がん、子宮体がん など
【症状】
月経不順、不正性器出血、過多月経、過長月経、月経困難症、子宮下垂 など
難しい病気や症状を書き連ねてしまったので読むのが嫌になってしまったかもしれませんが、あくまでも参考にしていただくだけで結構です。
ただ、もし、これまでに検診などで「そういえばこんな名前のこと言われたことあったけど放置してたな」という方は、ぜひ一度婦人科を受診してみてください。
なお、
・毎月の生理周期がバラバラ(月経不順)
・生理以外に出血がある(不正性器出血)
・生理の量が多くて/長くて困っている(過多月経)
・生理痛がひどい/きつい(月経困難症)
などに一つでも当てはまる場合には、ぜひこちらの記事(「あなたの生理は大丈夫? 生理の裏に隠れる婦人科の病気に注意、早めの相談を」)をご一読ください。
「子宮頸がん」は20-30代の女性も要注意
「がん」と聞くと、「40-50歳くらいになったら検診に行こう」くらいに思っている方は多いかもしれません。
実際に、がん患者数はおおよそ60歳代から増加し、高齢になるほど増えていきます。(文献1)
しかし、がんの種類によって関係してくる年代は違ってきます。
そして、女性に関係するがんのうち、子宮頸がんは比較的若い方にも起こることが特徴なのです。
日本では毎年約1万人が新たに子宮頸がんと診断され、年間に約2800人の方が亡くなっており、これは毎日8人もの人が命を落としていることになります。(文献1)
子宮頸がんの原因のほとんどはウイルス感染
がんの原因がウイルス感染と聞くと、「え?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
ウイルスって風邪や水ぼうそうなどの原因でしょ、というイメージがありますよね。
でも、子宮頸がんのうち95%以上がヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症することがわかっているのです。(文献2)
そして大事なことは、「HPV感染を防ぐワクチンがある」ということ。
予防できるHPV型の数によって、2価・4価・9価の3種類のHPVワクチンがあります。2・4価ワクチンで約6~7割、9価ワクチンなら約9割のHPV感染(子宮頸がんの原因になりやすいタイプ)を予防することができると言われています。(文献3)
HPVワクチンについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
・高校1年生の9月末までに接種を始めれば、HPVワクチンは全額無料に
他に、子宮体がんや卵巣がんについて気になる方は、以下の記事をご参照ください。
「お腹の膨らみや不正出血など、女性特有のがんで気を付けたい5つの症状を解説」
子宮の病気に対する最先端の治療・研究とは
子宮に関する最先端の治療や研究も、世界中で進められています。
(1)子宮移植
例えば、生まれつき子宮がないという病気を持っており、かつ妊娠を希望する女性に対して、「子宮を他者から移植する」手術の臨床応用が世界各国で少しずつ報告されています。
実際に、移植後の子宮から無事に出産したという女性も数十名おり、今後の発展が期待されます。(文献4)(現時点では、日本では実施できない状況です)
(2)がんに対する分子標的薬
また、子宮頸がんの治療として手術や放射線療法の他に、近年では「分子標的薬」が利用され始めています。
分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を標的にしてがんを攻撃する薬です。子宮頸がんに対しては、「ベバシズマブ」という薬が使われることがあり、通常はいわゆる「抗がん剤」と併用されます。(文献5)
(3)ロボット手術
近年では、子宮の病気に対して「医療用ロボット」が応用されるケースも増えてきています。米国では子宮手術のうちかなりの割合がロボットで実施されているようですが、日本でも一部の病気では一部の施設で実施されています。
例えば、早期子宮体がんは2018年4月にロボット支援下手術が保険適応となり、徐々に活用が広がってきています。
4月9日は「子宮の日」。
女性も男性も、子宮について知っていただき、防げる病気は防ぎ、人生をより望ましいものにできれば嬉しいですね。
*本記事は「生まれつきまたは何らかの事情で子宮がない女性」や「病気に対する治療などで子宮を摘出した女性」のことも十分に考慮した上で、「子宮に関連する医学的助言」を目的として書かれたものです。その点、ご了承くださいませ。
参考文献
2. 日本産科婦人科学会.
3. 日本産科婦人科学会.
4. PLoS One. 2020 Apr 29;15(4):e0232323.