なぜ久保建英はソシエダで躍動しているのか?D・シルバの引退とカンテラーノへの期待。
久保建英が、躍動している。
レアル・ソシエダはリーガエスパニョーラ開幕節でジローナと対戦した。久保建英のゴールで先制したが、後半に追い付かれて試合は引き分けに終わっている。
「我々は、チャンスでゴールを奪えなかった。決定機は十分に作れていた。我々は素晴らしい試合をしたと思う。積極的にプレッシングを行い、多くのチャンスを作った。プレシーズンで調子の良かったジローナを相手に、だ。しかし残念だったのは、2点目を奪い切ることができなかった点だ」
「我々が良い状態だった時に、ジローナのゴールが決まってしまった。再びリードを奪う可能性があったが、そうならなかった。しかし、チャンスは作れたので、ポジティブに考えている。ゴールは、今後、必ず訪れる」
これはジローナ戦後のイマノル・アルグアシル監督のコメントだ。
■活躍の理由
開幕節で、勝利は逃した。だが久保の先制ゴールは見事だった。
久保は昨年夏、ソシエダに加入した。ソシエダが移籍金650万ユーロ(約10億円)をレアル・マドリーに支払い、移籍が成立。今季、ソシエダで2シーズン目を迎えている。
久保は昨季、リーガで35試合に出場した。出場時間2454分で、9得点7アシストをマーク。「9得点」というのは、久保にとって、キャリアハイの数字だった。
ソシエダは、リーガでも有数のポゼッション・サッカーを志すチームだ。後方からのビルドアップを試みて、個々人の能力を生かしながら、コンビネーション駆使して状況の打開を図る。そのようなチームスタイルが、久保に非常に合っていた。
また、サン・セバスティアンの土地、加えてそこに住む人たちの人柄が、久保の適応を助けた。同じスペインでも、マジョルカ、ビジャレアル(バレンシア)、ヘタフェ(マドリード)とそれぞれの土地に独特な文化と国民性がある。サン・セバスティアンのそれは、久保の性格に合っていたのだろう。加入後、すぐにチームメートに溶け込んでいる姿が、幾度となくクラブ公式H PやSNSで公開されていた。
■D・シルバの負傷と引退
とはいえ、今季のソシエダは、決して良い形でシーズン・インできたわけではない。
大きな痛手となったのは、ダビド・シルバの負傷だ。D・シルバはプレシーズンのトレーニング中に、左ひざの前十字靭帯を断裂。シーズン絶望の負傷で、このタイミングで現役から退くという決断を下した。
D・シルバの引退を受けて、イマノル・アルグアシル監督はその穴を埋めることを考えなければいけなくなった。
まず取り組んだのは本格的なシステムチェンジだ。昨季は【4−4−2】をメインシステムにしていた。トップ下にD・シルバ、2トップにアレクサンダー・スルロットと久保を配置する布陣で、攻守のバランスを整えていた。とりわけ、シーズン前半戦はこのシステムが機能して勝ち点を重ねられていた。
アルグアシル監督は、今季、【4−3−3】を使用している。左WGにミケル・オジャルサバル、CFにカルロス・フェルナンデス、右WG に久保。この3トップで、攻撃力を上げるという狙いを持っていた。
一方、D・シルバ以上に、トップ下に適任の選手がいないため、【4−3−3】を選択したのだとも言える。アルグアシル監督自身、そこは頭を悩ませているところなのだ。
■D・シルバの代役を探して
また、ソシエダは、D・シルバの代役探しに奔走している。ドニー・ファン・デ・ベーク(マンチェスター・ユナイテッド)、イスコ(現ベティス)、セルジ・ダルデル(現マジョルカ)…。代役候補として、複数の名前が挙げられてきた。
ただ、ここにきて、アーセン・ザハリャン(ディナモ・モスクワ)獲得の可能性が高まっている。
「我々はザハリャンを獲得するために動いている。これ以上、多くは言えない」とはジョキン・アペリバイ会長の言葉だ。
「現時点で、交渉が完了したかと聞かれたら、答えはノーだ。我々には、まだ仕事が残されている。その問題を、もうすぐ解決できるかどうか。様子を見よう」
「中盤に2選手を加えようとは考えていない。当初から、そういうプランは持っていなかった。(ベニャト・)トゥリエンテス、(ジョン・アンデル・)オラサガスティ、ウルコ(・ゴンサレス)、ロベルト・ナバーロ…。ウチには、カンテラ出身の選手たちがいる」
ザハリャンのポテンシャルは未知数だ。しかしながら、アペリバイ会長が語るように、ソシエダには素晴らしいカンテラ(育成組織)がある。
オジャルサバル、マルティン・スビメンディ、ロビン・ル・ノルマン、イゴール・スベルディア…。近年、多くの選手がカンテラから出てきて、トップチームに定着した。
D・シルバの不在は、痛い。だが、その状況を乗り越えるためのベースが、ソシエダにはある。