メジャーデビュー直後に薬物違反で出場停止80試合の22歳は、どんなプロスペクトなのか
6月18日、トロント・ブルージェイズは、右のふくらはぎを痛めているボー・ビシェットを15日まで遡って故障者リストに入れ、AAAからオレルビス・マルティネスを昇格させた。
6月21日、オレルビスは、客席で両親らが見守るなか、「8番・二塁」としてメジャーデビューし、2回裏にエラーを犯したものの、6回表にヒットを打った。
6月23日、メジャーリーグ機構は、薬物検査により、禁止薬物であるクロミフェンの陽性反応が出たとして、オレルビスに80試合の出場停止を科した。
選手会が発表したオレルビスの声明文によると、2年前から、オフにドミニカ共和国でガールフレンドとともに不妊治療を受けていて、処方された「Rejun 50」という薬にクロミフェンが含まれていたという。医師には、パフォーマンス向上薬(PED)は入っていないと言われていた、とも記してある。
オレルビスは、22歳の内野手だ。遊撃と三塁、二塁を守ってきた。
今シーズンは、昇格前にAAAで63試合に出場し、打率.260と出塁率.343、16本塁打を記録した。その前の3シーズンは、2021年がAとA+、2022年がAA、2023年はAAとAAAでプレーし、ホームランは28本→30本→28本、出塁率は.345→.286→.340と推移してきた。
ざっくりと形容すると、パワーのある遊撃手もしくは内野手だ。
今シーズンの開幕前のプロスペクト・ランキングにおいて、ベースボール・アメリカ、ベースボール・プロスペクタス、MLBパイプライン(MLB.com)のいずれも、オレルビスを全体90位前後としている。
また、カナダのメディア、TSN(ザ・スポーツ・ネットワーク)のスコット・ミッチェルらによると、2年前のスプリング・トレーニングにオレルビスが参加した時、ブラディミール・ゲレーロJr.は、スウィングが自分に似ている、打席に立ったオレルビスを見て若い頃のハンリー・ラミレスを思い出した、と語ったという。
ハンリーは、2006年に新人王を受賞し、2008年と2016年は30本以上のホームランを打ち――2008年は30-30を達成――2009年は首位打者を獲得した。また、キャリアの前半は、遊撃を守っていた。ハンリーとゲレーロJr.とオレルビスは、ドミニカンの右打者という点が共通する。
ブルージェイズは、6月17日から6連敗を喫し、ア・リーグ東地区の最下位に沈んでいる。地区首位のニューヨーク・ヤンキースとの差は15.5ゲーム、ワイルドカードの3番手に位置するボストン・レッドソックスとは6.5ゲーム差だ。
このままいくと、夏のトレード市場で売り手に回る可能性は高い。オレルビスのデビューはビシェットの離脱に伴うものだが、もしかすると、ビシェットを放出するかどうかの判断材料の一つとするため、オレルビスを試してみる――今シーズンは遊撃の守備についていないが――という意図もあったのかもしれない。来シーズンの終了後、ビシェットは、ゲレーロJr.とともにFAとなる。
なお、先発投手のなかでは、クリス・バシットも、来オフにFA。菊池雄星は、今オフにFAだ。