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大阪桐蔭が履正社に敗れ、地方大会の「波乱」締め! 夏の甲子園49代表決まる 優勝候補は?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
履正社がライバルの大阪桐蔭に勝ち、波乱の全国地方大会を締めくくった(筆者撮影)

 今年の地方大会は「波乱」が多いと言われたが、最後の最後に大波乱が待っていた。大阪桐蔭履正社(タイトル写真)の「大阪2強」が対戦した大阪大会決勝は、夏の直接対決で大阪桐蔭に12連敗中(3年前の独自大会除く)だった履正社が3-0で快勝し、地方大会最終日に勝ち名乗りをあげた。

この結果を敢えて「波乱」とした理由は?

 「大阪2強」で波乱と言うのもいささか心苦しいが、今季の両者の戦いぶりを振り返ると、かなり力の差があったことは間違いない。秋の直接対決は大阪桐蔭が7-0で完勝していて、その後のセンバツで、その差は決定的になった。履正社は高知に初戦(2回戦)敗退を喫し、続く春の府大会も4回戦で姿を消した。大阪桐蔭はセンバツ4強で、大阪大会は大黒柱の前田悠伍(3年=主将)抜きで戦って準優勝。前田不在の間に2年生投手が急成長し、前田が復帰した夏の大阪大会で敗れる姿を想像するのは難しかった。過去の一方的な夏の対戦成績も加味して、履正社には申し訳ないが、敢えて「波乱」という言葉を使わせてもらう。

左腕・福田が大阪桐蔭を完封し、前田に投げ勝つ

 履正社との決勝は、頼みの前田が序盤からタマが浮くなど本調子からはほど遠く、味方の拙守も絡んで主導権を譲った。履正社先発の左腕・福田幸之介(3年)は、前田を上回る球威で大阪桐蔭打線を圧倒。6回のピンチも中軸を落ち着いて退け、最後まで球の勢いが落ちなかった。最大のライバルにして、先輩たちがことごとくはね返されてきた大阪桐蔭を3安打に完封し、3-0での完勝はあっぱれと言うしかない。多田晃監督(45)は「福田は最高のピッチング。安心して見ていた。甲子園では優勝を目標に頑張りたい」と声を弾ませた。大阪桐蔭は打線が全く打てず、大事な場面で失策が出て前田の足を引っ張った。前田の8回6安打3失点(自責2)は責められない。高校ナンバーワン投手は、甲子園を目前にして最後の夏を終えた。

「甲子園デビュー」は6校

 これで出場49校が決定した。昨年ゼロだった「甲子園デビュー」のチームが6校あり、10年以上のブランクを経て夏の甲子園に戻ってくる学校も6校ある。初出場の共栄学園(東東京)、浜松開誠館(静岡)、東京学館新潟高知中央鳥栖工(佐賀)、宮崎学園はいずれも春夏通じて初の大舞台となる。最長ブランクは21年ぶりの川之江(愛媛)で、16年ぶりの文星芸大付(栃木)が続く。最多出場は北海(南北海道)の40回で、仙台育英(宮城)が30回、広陵(広島)と徳島商が24回で続く。連続出場は5大会連続の近江(滋賀)が最長で、近江は春夏の甲子園が中止となった3年前の「独自大会」も優勝していて、滋賀の夏で6連覇の快挙となった。

優勝争いの中心は仙台育英、広陵、履正社か

 今夏は全国で「波乱」が多く、大阪桐蔭の決勝敗退を筆頭に、智弁和歌山や二松学舎大付(東東京)、創志学園(岡山)の早期敗退を始め、最右翼と見られた健大高崎(群馬)、明徳義塾(高知)などの有力校も地方大会決勝を前に姿を消した。また、センバツでワンツーだった山梨学院と報徳学園(兵庫)はライバル校に屈し、春夏連続出場を逃した。しかし、センバツで優勝候補に挙がった仙台育英と広陵は夏切符も手中に収め、大阪桐蔭を破った履正社とともに春夏連続出場となった。本大会ではこの3校が優勝争いの中心となる。

優勝候補は複数の好投手を擁する

 上記3校の強みは、複数の好投手を擁していること。連覇を狙う仙台育英はほぼ同等の力を持つ4投手をローテーションのように回したり、強打のチームには多数の投手をつぎ込んだりできる。広陵は2年生エースの高尾響が抜群の安定感で、控え投手も多彩。打線は真鍋慧(3年)を筆頭に左右の強打者が並び、投打ともハイレベルでまとまっている。この2校の経験値は特に高い。履正社は大阪桐蔭戦で好投した福田と、準決勝完投勝ちの増田壮(3年)の左腕2枚が軸で、打線は機動力も絡め、得点力が高い。3校の総合力は甲乙つけがたく、まずは日程も含めた抽選運が最大のカギになるだろう。準々決勝までに直接対決があれば、大会そのものの行方を左右しかねない。

春夏連続出場は経験値でアドバンテージ

 昨今は「大エース」一人で勝ち抜くのはもはや不可能で、カバーする控え投手と打線の援護は欠かせない。プラス、独特の雰囲気がある甲子園では経験値がモノを言う。その意味では、センバツを経験している沖縄尚学専大松戸(千葉)、慶応(神奈川)は投打にチーム力が高く、英明(香川)、クラーク国際(北北海道)も攻守のバランスがいい。北陸はレベルの高い福井大会を勝ち抜き、大激戦の兵庫で2年連続代表となったは、ともにセンバツ初戦敗退の雪辱を誓う。大垣日大(岐阜)は、阪口慶三監督(79)の甲子園最年長勝利記録が懸かっていて、孫の高橋慎(3年)との最後のタッグも話題になっている。

そのほかの有力校は?

 そのほかでは、総合力の高い浦和学院(埼玉)や日大三(西東京)、昨夏8強の愛工大名電(愛知)、強打者のいる九州国際大付(福岡)、花巻東(岩手)に注目したい。レベルの高い近畿勢では、智弁学園(奈良)が課題の投手陣復調気配で、強力打線が援護できれば上位も狙える。抽選会は8月3日で、6日に開幕を迎える。地方大会で波乱を呼んだ10回からのタイブレークや、継続試合導入など、激変する甲子園の高校野球は、記念大会でどんなドラマを呼ぶか、楽しみは尽きない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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