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バリー・ボンズとロジャー・クレメンスは米野球殿堂入りできるのか。

谷口輝世子スポーツライター
今年の殿堂入り投票では落選したロジャー・クレメンス(写真:ロイター/アフロ)

今年の米野球殿堂入りには、マリナーズなどで活躍したケン・グリフィーJr氏とドジャースで野茂英雄投手とバッテリーを組んだマイク・ピアザ氏が選出された。

日本のメディアにはパフォーマンス向上を目的とした薬物使用疑惑のあるバリー・ボンズ氏とロジャー・クレメンス氏は得票率を伸ばしたが、今年も落選したことを伝えている。

得票率はメジャー歴代最多の762本塁打をマークしたボンズ氏が44.3%、サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)7度で通算354勝のクレメンス氏は45.2%。ともに昨年から7%以上伸ばし、40%台になった。2人とも資格取得から4年目だった。(共同)

出典:http://www.sanspo.com/baseball/news/20160107/mlb16010711010005-n1.html

今年、ボンズ氏とクレメンス氏が得票率を伸ばしたのはなぜなのか。そして、将来的にこの2人が選出される可能性はあるのか。

米野球殿堂入り投票について

殿堂入りする選手は、全米野球記者協会の投票によって決定する。同協会に10年以上所属している現役の記者に投票権が与えられる。

殿堂入り候補資格。メジャーリーグで10年以上プレーし、引退後5年が経過した元選手が有資格となる。得票率が5%に満たないと「足切り」として翌年以降の資格を失う。候補資格を得てから10年以内(かつては15年以内)に選出されないと候補者資格を喪失する。

記者投票で75%以上の得票率で殿堂入りとなる。

薬物疑惑のあるボンズとクレメンスは2人とも2013年に初めて候補資格を得た。2人の投票率の推移は以下の通り。

2013年 

ボンズ 36.2% クレメンス37.6%

2014年 

ボンズ 34.7% クレメンス35.4%

2015年

ボンズ 36.8% クレメンス37.5%

2016年 

ボンズ 44.3% クレメンス45.2%

投票数の減少

2人は今年の投票では急に得票率を伸ばしている。しかし、得票数そのものは昨年とほぼ横ばいである。2人の投票数の推移は以下の通り。

2013年

ボンズ 206票 クレメンス 214票

2014年

ボンズ 198票 クレメンス 202票

2015年

ボンズ 202票 クレメンス 206票

2016年

ボンズ 195票  クレメンス 199票

実は全米野球記者協会の投票者が昨年の549人から今年は440人に減っている。そのため、得票数は少なくなるが、得票率は上がっている。

薬物疑惑があってもボンズ、クレメンスは殿堂入りにふさわしい結果を残しているという判断をして投票した記者の数はそれほど変わっていない。

ボンズとクレメンスは殿堂入りできるのか

ボンズ、クレメンスともに野球殿堂入りまであと6回のチャンスが与えられている。今年の40%台からさらに得票率を伸ばすことはできるのか。

全米野球記者協会のメンバーたちは、投票する記者の世代交代に注目している。「薬物を使用した選手はどれほどすばらしい成績を残していても殿堂にふさわしくない」という考えの記者が世代交代によって現場から去り、新たに投票資格を得た若い世代の記者たちがどのように判断するかによって変化が起こる可能性を指摘している報道もあった。

しかし、世代交代だけで2人が当選するのは難しい。

投票資格のある記者たちの多くは自身の投票を公開していて、これを追跡しているRyan Thibodaux氏 @NotMrTibbsによると、初めて投票資格を得た人のうち、およそ50%がボンズとクレメンスに投票しているという。初めて投票資格を得た記者のうちで投票内容を公開したのは9人。非公開も含めても全体に影響を及ぼすだけの人数ではないだろう。

今年は投票者数が440人で、選出に必要な票数は330だった。候補者となって6年目だったジェフ・バグエルは315票を得たが、得票率71.6%で殿堂入りはならなかった。ピアザは365票で得票率83%で当選。

先に述べたようにボンズとクレメンスの獲得した票数は200票に満たない。今後、投票者数が大きく変化しないという前提で、毎年、新しく15人の記者が投票資格を得ると仮定し、その5割がボンズとクレメンスに投票すると6年間で45票の上積みとなる。それでもすでに投票資格を持っている記者の考えが変化しない限りは難しい。

今後、6年間に80人以上の記者がこれまでの薬物使用疑惑のあるスーパースター選手への評価を変えるような流れが起こるかどうか。

参考記事ニューヨークタイムズ紙1月7日電子版

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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