なぜエムバペの移籍の噂が“再燃”しているのか?ネイマール、メッシとの関係性と狂ったプラン。
移籍の噂が再び立ち上っている。キリアン・エムバペが、パリ・サンジェルマンからの移籍を模索しているようだ。
フランス『RMC』は現地時間11日にエムバペが移籍を検討していると報じた。そして、スペイン『マルカ』を筆頭に欧州の大手メディアが追随するようにエムバペの移籍の可能性を伝えた。次のマーケットが開く1月に動きがあるのではないかとみられている。
エムバペは今夏、パリSGとの契約延長で合意した。2025年夏までの新契約を結び、2022−23シーズンをパリで戦う決意を固めていた。
エムバペがパリSG残留を決めた際、クラブにいくつか要求をしていた。その最たるものが、「スポーツ的側面における強化」だ。
具体的には、フロント、コーチングスタッフ、選手の入れ替えである。実際、この夏にマウリシオ・ポチェッティーノ前監督とレオナルド前SD(スポーツディレクター)がクラブを去り、クリストフ・ガルティエ監督の就任とルイス・カンポス氏の入閣が決定している。
そして重要だったのが、補強だ。1億4700万ユーロ(約205億円)を費やして、ヴィティーニャ、ファビアン・ルイス、カルロス・ソレールらが加入した。
だが補強のインパクトは少なかった。即戦力として活躍しているのはヴィティーニャのみ。チャンピオンズリーグではベンフィカに2試合連続ドローを演じるなど、ビッグマッチで競り勝てる戦力が揃っているかは疑わしいところだ。
■メッシやネイマールとの関係
また、エムバペの考えを改めさせている要因の一つとされているのが、チームメートとの関係だ。
リオネル・メッシ、ネイマール、マルコ・ヴェッラッティ、セルヒオ・ラモス、マルキーニョス…。パリSGには、各国の代表クラスの選手が揃っている。そのマネジメントは困難を極める。
メッシは昨年夏にバルセロナからパリSGに移籍した。ネイマールとは、バルセロナ時代に同僚だった。メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスは2014年から2017年にかけてバルセロナで「MSN」と呼ばれる3トップを形成。ピッチ内外で良好な関係を築き、2014−15シーズンにはバルセロナにビッグイヤーをもたらした。
メッシはパリでネイマールと再会した。加えて、アンヘル・ディ・マリア(現ユヴェントス)、レアンドロ・パレーデス(ユヴェントス)といったアルゼンチン代表のチームメートがいた。そこにヴェッラッティ、マルキーニョスと長年パリで過ごしてきた選手が加わり、ひとつのグループが形成された。
そこにエムバペは加わっていない。その辺りの関係性が、エムバペに今後の立ち振る舞いを考えさせている。
■エムバペの移籍先
ただ、エムバペの移籍は簡単ではない。
2022年夏に契約満了を迎える予定だったエムバペを、長らくレアル・マドリーが狙っていた。14歳の頃からレアル・マドリー移籍を“夢”と掲げていたエムバペを迎え入れるため、フロレンティーノ・ペレス会長は体勢を整えていた。
一方で、ペレス会長はエムバペの変化を感じ取っていた。マドリーに相応しい選手なのかどうかを、最後まで見極めようとしていた。
「我々はエムバペが変わってしまったと思った。フランス代表でチームメートと一緒にプロモーションに出演することを拒んでいた。私にはそれが気になった。フットボールは、コレクティブなスポーツだ。全員、平等に扱われるべきだ。その(代表の)ことだけではない。パリでは、チームの中心というだけではなく、クラブを率いるリーダーになれるようなオファーがあったのだろう。それは私が獲得を望んでいたエムバペではない」とはエムバペ獲得失敗後のペレス会長の弁である。
「エムバペはレアル・マドリーでのプレーが夢だと公言していた。昨年の8月に、我々は一度チャレンジした。だが獲得は不可能だった。パリSGが売りたがらなかった」
無論、エムバペに関心を寄せてきたのはマドリーだけではない。リヴァプール、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドとビッグクラブが移籍先候補に挙げられてきた。
しかし、繰り返しになるが、エムバペの移籍は簡単ではない。先の契約延長で、年俸は8300万ユーロ(約116億円/推定)まで引き上げられたと見られている。また、当然、契約期間が残されているので、移籍金が発生する。それだけの額を用意できるクラブは、実質上、皆無に等しいだろう。