停電でも電気が使える!【自作】車中泊やキャンプに最適なポータブル電源をLFP電池で作る方法
LFP電池とはリン酸鉄リチウムイオンバッテリーのことで、なんだか長ったらしい名前の電池ですよね。
電池の正極材料にリチウム(Li)・鉄(Fe)・リン(P)を用いたリチウムイオン充電池の内の一つです。
安全性が高く、長寿命なバッテリーとして最近人気を集めています。
今回は、このLFP電池を使ったポータブル電源の作り方を紹介します。
LFP電池
リチウムバッテリーと言えば、発火や爆発のイメージがある方も多いと思います。
その原因は、衝撃や破損で起こるショートによって内部が高温になり、リチウム電池内部から発生する酸素に引火して発火や爆発が起こるメカニズムです。
その点、LFP電池にはバッテリーの正極材料に結晶分子間の結合が強いリチウム・鉄・リンが使われていて酸素が離脱(発生)しにくい特性を持っています。
その為、発火のリスクが少なく安全性に優れているのです。
※ウィキペディア:リン酸鉄リチウムイオン電池 より参考にさせていただきました。
LFP電池を使うメリットをまとめると。
【LFP電池を使うメリット】
・爆発・発火の危険性が低い
・充放電回数が約4,000回と高寿命
・自己放電が僅かしかない
・重量は同容量の鉛蓄電池の1/3ほど
・600度まで熱分解が起こらない
・安全制御システムが内蔵されている
対してデメリットを挙げると。
【 LFP電池を使うデメリット】
・体積エネルギー密度が低い
・特許が含まれるので価格が高い
・充電可能温度が10~50度と狭い
※リチウムイオン充電池(二次電池)の中での比較です。
LFP電池(100Ah)の販売価格は2023年10月の時点で3万円台の後半から5万円台の前半くらいです。
価格だけを見ると、割高なように感じますよね。
しかし、4,000回も充放電が出来るなら一日一回充電したとしても11年近くも使える計算になるのでお得感があります。
また、安価にポータブル電源を作るなら自動車用のバッテリーを流用して作る方法もあります。
しかし、「充電時に水素ガスが発生する」「倒すと希硫酸が流れ出る」「あまり電力が取り出せない」「自己放電する」といったデメリットがあるのが難点。
そんなデメリットも解消出来るのが、リン酸鉄リチウムバッテリーなのです。
非常用電源の作り方
今回は、片手で持ち運びができる重量で電力量が多い12V 100Ah 1280Wh のLFP電池を使用しました。
バッテリーの他に用意するアイテムは以下の5点になります。
【自作のポータブル電源に必要な材料】
①バッテリーの収納ケース
②バッテリー直結型ソケット
③100Vインバーター
④シガーソケット分配器
⑤12V用電圧計
まずは、バッテリーを入れるケースを用意します。
使用したケースは『ドカット D-4500』という工具箱。
取手引張強度は110kgfもあり、重量11kgのバッテリーを入れても問題ありません。
実は この工具箱、バッテリーのサイズにピッタリでした。
そして、バッテリーの電源を取り出す為に『バッテリー直結型ソケット』を使います。
バッテリーのプラス端子に赤色のワニ口クリップを、マイナス端子に黒色のワニ口クリップを挟むだけでシガープラグが使えるようになります。
ワニ口クリップを電源端子に取り付けると分かるのですが、少し金属面が露出していますよね。
このままだと作業中にドライバーやスパナが当たってショートする危険性があります。
そこで、ターミナルカバーを取り付けます。
もし、ターミナルカバーが無い場合は自己融着テープを巻いて電源端子を保護しても良いでしょう。
次に『シガーソケット分配器』を取り付けます。
このアイテムはバッテリー直結型ソケットを4つのソケットに分配する目的もありますが、安全装置としての役目もあります。
このシガーソケット分配器のシガープラグには10Aのヒューズが内蔵されているので、もし過電流が流れても配線を遮断してくれます。
各ソケットには通電用のトグルスイッチが個別に付いているので、使用したいソケットだけを通電することが出来ます。
使用中のソケットしか点灯しないので無駄な待機電力を使わないというメリットがあります。
シガーソケット分配器のスイッチボックスとソケットボックスはケースの内側に両面テープで固定します。
次に『電圧計』を取り付けます。
電圧をチェックすることで電気の使い過ぎを防止して、バッテリーの劣化を抑えます。
モニターが見やすく、バックライトのオン・オフが可能で消費電力が少ないタイプが良いでしょう。
次に『100Vインバーター』を取り付けます。
100Vインバーターはバッテリーの直流12ボルト電源を家庭用で使える交流100ボルト電源に変換する装置です。
100Vインバーターの種類は数多くありますが、使用したい電気製品の電力に対応するものを選ぶ必要があります。
私の場合は、12Vの電源で使える電気製品を揃えているので車中泊で使用する100V電源はパソコンくらいです。
なので消費電力70Wで十分なのです。
インバーターはケースに固定しないので、好きな場所に置いて使用します。
収納する時は、バッテリーとケースとの隙間に入れる事が出来ます。
この状態なら問題なくフタも閉まります。
これで自作のポータブル電源が完成しました。
車中泊で検証
実際に自作したLFPポータブル電源が車中泊で使えるかを検証してみます。
自動車にポータブル電源を積載して移動する際は、安全の為にロープやベルトを使って後部座席等に固定すると良いでしょう。
急ブレーキを踏んだ時に11kgのバッテリーが後ろから飛んでくると危険ですからね。
通常の車中泊では必要ありませんが、今回は使用した電力量を測定する為にマルチメーターをバッテリーに取り付けています。
このマルチメーターでバッテリーの「電圧」「電流」「電力」「電力量」が計測できます。
現在、バッテリー電圧は13.5Vで満充電されていますが、このマルチメーターでは13.41Vを表示しています。
他の電圧計で測定した時は13.5Vを表示していたので、このメーターは少し低めに表示されているかも知れません。
この状態から計測を開始します。
自作のポータブル電源に車中泊で使用する電気製品を取り付けてスイッチオン!
12V LED照明、DC扇風機、ノートパソコン、携帯電話とデジカメの充電です。
100ボルト電源を使用しているのはパソコンのみです。
全体の消費電力は38W前後で安定していますが、パソコンのファンが起動した時や動画を流して高負荷になった時は70W前後まで上がります。
この状態で8時間使用した結果、総使用電力は335Whでした。
え!?意外と少ない…
車中泊で電気式の調理器具や冷蔵庫を使わなければ、電気ってあまり消費しないんですね。
その後、帰宅してからも同じ条件でバッテリーを使用して残量を計測します。
3日目でやっと1000Whを超えました。
そして、4日目にカタログスペックの電力量 1280Wh に到達しました。
最終的にバッテリーを使っている状態では電圧降下で11.56Vまで下がっていましたが、全てのスイッチをオフにすると11.71Vまで回復しました。
バッテリーの低電圧切断電圧は10.8Vなので まだまだ余裕があります。
しかし、使い過ぎはバッテリーの劣化を招くので、ここで使用はストップします。
このLFPバッテリーは4000回以上の充放電が可能なので4日に一度充電するとしたら、寿命が来るまでに何と43.8年もかかる計算になります。
これなら災害時に停電しても非常用電源として役に立ちそうです。
しかし、これはあくまでもバッテリーの容量を100%の効率で使えたらの話です。
実際には、バッテリーの劣化やインバーターの待機電力、変換効率、気温などの影響で電力量は落ちてしまいますからね。
使い方次第ではバッテリーの寿命が早く訪れたり、BMS(安全制御システム)が壊れたりする場合があるので、過充電と過放電には注意して使う必要があるでしょう。
最後に
私は電気工事士の資格を持っており、家では12Vのソーラー発電システムを自分で組んだりしています。
今回ご紹介した自作のポータブル電源は、資格など無くても誰でも簡単に作ることができます。
しかし、直流12Vと言えど、100Ahもの容量があるリチウムバッテリーを取り扱う場合は危険が伴います。
なので、自分で作る場合は必ず電気の仕組みを理解した上で行ってくださいね。
もしくは、私のような電気配線経験者と一緒に作業すると良いでしょう。