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北朝鮮が平壌無人機侵入ビラ撒き事件の証拠となる墜落機を提示、韓国軍の新型無人機と形状が完全に一致

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「発見時の墜落した敵無人機」

 10月19日、北朝鮮国防省が平壌無人機侵入ビラ撒き事件の決定的な証拠を発見したとして墜落していた無人機を公開しました。それは韓国軍の軍事パレードでも公開済みの「遠距離偵察用小型ドローン(원거리 정찰용 소형드론)」の形状と完全に一致していました。

추락된 무인기사진 (墜落した無人機の写真)

北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「墜落した無人機の写真」
北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「墜落した無人機の写真」

比較用:韓国軍の「遠距離偵察用小型ドローン」

北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「敵が公開した《遠距離偵察用小型ドローン》写真」
北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「敵が公開した《遠距離偵察用小型ドローン》写真」

 形状が細部に至るまで一致しています。韓国軍の「遠距離偵察用小型ドローン」はアメリカ製の無人偵察機「スキャンイーグル」によく似た形状ですが、胴体が円筒形のスキャンイーグルと異なり角型断面であるなど特徴に違いがあります。

墜落した無人機の写真(側面)

北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「墜落した無人機の写真」
北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「墜落した無人機の写真」

墜落した無人機の写真(後方)

北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「墜落した無人機の写真」
北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月19日)より「墜落した無人機の写真」

 また事件が最初に発覚した際に北朝鮮外務省が10月11日に発表した重大声明でも、平壌に侵入した無人機とされる映像(ただし赤外線カメラで撮影した大まかなシルエット)には、韓国軍の「遠距離偵察用小型ドローン」と似た形状の無人機が映っていました。

조선로동당 중앙위원회 본부청사상공에 출현한 적무인기 (朝鮮労働党中央委員会本部庁舎上空に出現した敵無人機)

北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月11日)より「朝鮮労働党中央委員会本部庁舎上空に出現した敵無人機」
北朝鮮・朝鮮中央通信(2024年10月11日)より「朝鮮労働党中央委員会本部庁舎上空に出現した敵無人機」

※無人機の写真を拡大

無人機のシルエット確認の為に上記写真の拡大
無人機のシルエット確認の為に上記写真の拡大

10月11日:朝鮮外務省が重大声明発表

  • 10月3日、9日、10日、深夜に無人機が平壌市中区域の上空に侵入
  • 無人機は反北朝鮮の政治宣伝ビラを投下

10月18日:朝鮮国防省の代弁人発表(対外発表は19日)

  • 10月13日に墜落した無人機の残骸を社会安全省平壌市安全局が発見した
  • 発見場所は平壌市の兄弟山区域西浦1洞第76居住人民班地域
  • 形状の特徴から韓国軍の「遠距離偵察用小型ドローン」と特定
  • 無人機の蓄電池放電状態と燃油残量から、最小5~7日に使用されたと推定
  • 機体の下部にはビラ散布装置がそのまま付着していた

 発見された墜落機の残骸は形状が韓国軍の「遠距離偵察用小型ドローン」と完全に一致しています。しかし韓国軍は現在まで自らが行った作戦だとは認めていません。

 もし北朝鮮がコピー品を作っていた場合は、発表されている写真から外見だけ真似て作った場合では、どうしても内部構造だけでなく外観の細部なども異なってしまい、韓国軍から照らし合わされて別物と判定される筈ですが、現在までそのような指摘はありません。

 あるいは実はもっと以前から韓国軍は「遠距離偵察用小型ドローン」を北朝鮮への偵察に使っていて、既に北朝鮮は鹵獲済みで、調査した上で寸分違わないコピー品を作っていたというストーリーも有り得ますが、これには何の根拠もありません。今のところこれは可能性としてはあまり高い話ではないでしょう。

 同無人機の製造会社の韓国企業が同型機を韓国軍以外に納入した事例は確認できません。

 または「韓国軍が偵察のために無人機を侵入させたのは事実だが、ビラ撒きの部分は北朝鮮の創作」といったパターンも有り得ますが、これも根拠が無い憶測に過ぎません。

 なお「遠距離偵察用小型ドローン」は本来は物を運搬する機能が無い偵察専用の無人機ですが、偵察用カメラを外してビラのような軽い物を改造して取り付けて投下することは技術的には可能です。

 現状では俄かには信じ難いことですが、北朝鮮の言い分通りに「平壌無人機侵入ビラ撒き事件は韓国軍が実施した」という可能性が高い状態です。韓国軍がこれを否定する明確な証拠を新たに出さない限りは、北朝鮮が今回提示した証拠を否定できる要素は現時点ではまだありません。

【参考リンク】韓国軍の「遠距離偵察用小型ドローン」のモデル名はソンウエンジニアリング(SWE)社の「S-BAT」。出典:S-BAT | SWE

  • 2020年:防衛事業庁迅速デモ機取得事業20-1次選定機体
  • 2023年:国防科学研究所低価格型小型無人機製作事業採択(100台)

성우엔지니어링 (ソンウエンジニアリング、SUNGWOO ENGINEERING)。ソンウ(성우)は同音異義語が幾つもあるが、会社名はおそらく漢字では「星宇」の意味。本社の所在地は韓国忠清北道清州市。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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