オートバイのあれこれ『公道で味わう2スト500ccの世界』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今朝は『公道で味わう2スト500ccの世界』をテーマにお話ししようと思います。
80年代に流行したレーサーレプリカブーム。
その筆頭は2スト250ccや4スト400ccだったわけですが、そのかたわらで、GP500(WGPの最高峰)レプリカとも言える2スト500ccの市販モデルも存在しました。
今回は、そんなレアな2スト500マシンをご紹介しましょう。
◆SUZUKI RG500Γ(1985年)
80年代に登場したGP500レプリカと呼ばれるモデルは、ホンダ『NS400R』、ヤマハ『RZV500R』、そしてこのスズキ『RG500ガンマ』の3モデルですが、この中で最も“レプリカ度”が高かったと言えるのが、RG500ガンマでしょう。
スズキの1983年型ワークスレーサー『RGΓ500』(XR45)と同じ形のスクエア4気筒エンジンであるのは当然のこと、ボア×ストロークといったエンジン内部の寸法もXR45とほとんど一緒でした。
フレームも然りで、『MR-ALBOX』(マルチリブ・アルボックス)というスズキ入魂のアルミフレームを投入。
特にステアリングヘッドが高コストな砂型鋳造で作られていたのがポイントで、500ガンマのフレームは純レーサーに匹敵する軽量高剛性を達成しつつ、外観的な美しさも実現されていました。
最高出力は輸出仕様で95psを発揮し、ホンダのNS、ヤマハのRZVを凌駕。
さらに車重も3車中最軽量で、500ガンマは軽量ハイパワーが最も際立っていました。
RG500ガンマに関しては「レプリカ」という言葉でも間に合わず、もはや「ナンバー付きのXR45」と言ってもいいくらいのバイクだったと言っていいでしょう。
◆YAMAHA RZV500R(1984年)
500ガンマ、NS400Rに先立って登場した最初の500レプリカが、ヤマハのRZV500Rでした。
1982年型のヤマハワークスマシン『YZR500』(0W61型)を参考に、ヤマハ製市販車としては初のアルミフレーム、そしてV型4気筒エンジンを採用。
「2スト屋」ヤマハのフラッグシップモデルであり、また500レプリカの先陣を切ったという点で、RZVの存在意義はひじょうに大きかったと言えるでしょう。
ライバルモデルとの比較でいくと、500ガンマが先述のとおりGPマシンをほぼそのまま踏襲していたのに対し、RZVは最終的にYZRと異なる設計となってしまった部分も少なくなく、レプリカとしての再現度では、スズキに一歩及ばずだったと言わざるを得ません。
ただ、それは見方を変えれば「公道走行に最適化した結果」とも言え、車体の作りだけを見て「500ガンマのほうが格上」と判断してしまうのはやや短絡的かもしれません。
FZ750といった4ストスーパースポーツもまだ無く、80年代前半のヤマハ製スポーツバイクの旗印となったRZVは、80年代のバイクシーンを語るうえで決して外せないモデルなのです。
※NS400Rの紹介は、また別の機会にさせていただきます。