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物価高騰でもやってはいけない節約術もある!トイレタンクにペットボトルは節約にならない

栗栖成之防災士×探偵ライター
photo AC

何もかもが値上がりする昨今では、食費や光熱費を少しでも抑えようと、多くの方が努力しているでしょう。

筆者宅でも不要な電気はできるだけ消し、食費のかからないメニューを考えるなど、出費を抑える努力はしているつもりです。

ところで、水道代を節約するために、トイレタンクにペットボトルを沈めて利用している方もいますよね。

実はこの方法は間違った節約術であり、タンク内部の破損や、トイレをつまらせる原因になることを知っていましたか?

トイレ1回の水道料金は小:約1.4円・大:約1.9円

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トイレを使用してタンクから水を流した際の水道料金は、小レバーで約6リットル=約1.4円で、大レバーでは約8リットル=約1.9円です。

自治体によって水道料金は異なるため、これよりも安い地域もありますが、高くなる地域はほんの一握りのはず。

仮に500ミリリットルのペットボトルを2本タンクに入れて水を節約しても、1リットル当たり約0.23円~0.24円です。

つまり、節約しているつもりでも実際には、大きな節約にはなっていません。

1日7回「大」利用した際のシミュレーション

「そうはいっても、節水効果はあるはずだ!」と、いわれる方もいるでしょう。

そこでここでは、次の条件で水道代のシミュレーションをしてみました。

一般的に健康な方の排尿回数は、1日4~7回といわれています。そこで、最大値となる7回のトイレ利用で、7回すべて「大」で流した際の料金を計算してみましょう。

  • 条件1:自宅で仕事をする2人暮らしの家庭で、1人トイレを1日7回利用する
  • 条件2:7回すべて「大」で流す
  • 条件3:「大」利用での1回の水道代は1.9円とする

【計算式】
7回×1.9円×2人=26.6円/日
26.6円×30日=798円

以上の計算から、最大値の条件でトイレ利用した際の水道代は、ひと月(30日)で798円となります。

ペットボトルで節約した場合

では、先の条件にて500ミリリットルのペットボトル2本をタンクに入れて、1回1リットルの水道代を節約した条件で計算してみましょう。

1回の水道代:1.9円-0.24円=1.66円

【計算式】
7回×1.66円×2人=23.24円/日
23.24円×30日=697.2円

【節約金額】
ひと月(30日)の差額:798円-697.2円=100.8円
100.8円×12か月=1209.6円(約1,210円)

このように仮にタンクにペットボトルを入れて、1回あたり1リットルの水を節約すると、30日で100.8円節約できます。

1年に換算すれば、約1,210円が節約できることとなりますね。

2人家族でこの金額なので、家族人数が増えれば節約できる金額は増えてくるはずですが・・

現実の節約額は少額!それよりトイレトラブルの原因を作っている

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先のシミュレーションを見れば「2人家族で1年約1,210円節約できるなら、我が家は6人家族だから、約3,630円も節約できるじゃないか!」と、思われるかもしれません。

しかし、実際には最大値で計算しているため、家族が6人になっても約3,630円までの節約は期待できないでしょう。

逆に、タンクの水を少なくして多くトイレ利用すれば、タンク内の破損やトイレつまりが起きる確率が高くなってしまいます。

タンク内の水の量は正常な排水ができるよう設計されている

トイレのタンクは、便器内の汚水を正常に排水するために、必要な水の量を溜めるように設計されています。

つまり、トイレタンクの水の量は、便器の性能に合わせて設定されているのです!

約20年前のトイレでは、1回に使用する水の量は約13リットル必要でした。便器の性能が高まるにつれ、使う水の量は6リットル~8リットルに減っていき、最近では約3リットル~4.6リットルで済む「節水型トイレ」まで登場しています。

重要なのは、利用する便器の性能に合った水の量で、排せつ物を流すことです。

タンク内にはいろいろな部品がつまっている

出典:TOTO
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トイレタンクの内部には上記のように、いろいろな部品がつまっています。

この部品すべてが、便器の中の排せつ物を流すために欠かせません。そのため、1つの部品でも破損すれば、正常に水が流れなくなります。

狭いタンクの中にペットボトルを入れれば、部品を破損する可能性は高くなり、排水弁の上にペットボトルが乗ってしまうと、排水自体ができない恐れもあります。

そのため、タンク内にペットボトルを入れるのは、節水どころか正常なトイレ利用として、やってはいけない節約方法です。

TOTOやLIXIL、Panasonicなどのトイレメーカーでも、以下のように注意喚起がなされています。

  • ペットボトルや節水用部品などをタンクの中に入れ、洗浄水量を減らさないでください。
  • 洗浄水量が少なくなると、便器の洗浄性能や、汚物の搬送性能が著しく低下します。
  • 便器から汚物が見えなくなっても、建物の排管内で徐々に詰まっていく可能性があります。
  • 便器に適切な水量でご使用してください。

トイレつまりを起こすと高額な修理費が必要!

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ペットボトルだけでなく、節水用のアイテムなどでトイレタンクの水を減らすと、便器内のトイレットペーパーや排せつ物が正常に排出されません。

そのため、便器からは見えなくなりますが、汚水桝までの排水管のどこかで、つまりを起こす可能性が高くなります。

また、便器と排水管との接続部でトラブルが起きると、便器の脱着が必要となり高額な修理費がかかります。

仮に年間3,000円の節水効果があっても、タンク内の部品交換や便器の脱着、高圧洗浄などが必要になると、軽く10倍以上の修理費が発生するでしょう。

悪徳業者に依頼してしまうと、年間節約額の100倍の請求もあり得る!

出典:政府広報オンライン
出典:政府広報オンライン

トイレトラブルが起きると、ほとんどの場合でトイレが使えなくなります。そうなると、大変だと慌ててしまい、悪徳業者に依頼してしまう可能性が高くなります。

上記は全国の消費生活センター等に寄せられた「暮らしのレスキューサービス」に関する相談件数のグラフです。

2018年~2023年2月までの相談件数は「トイレ修理」がトップです。

これを見ればトイレトラブルが起きると、冷静でなくなることがよく分かりますね。

このように現実として、悪徳業者に依頼してしまう方も多く、そうなれば年間の節約金額約3,000円の100倍となる、30万円以上の請求をされる結果に成り兼ねません。

節水しているつもりが高額な修理費が発生する!本末転倒な状況を作り出す

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トイレタンク内に、ペットボトルなどの異物を入れて節水している方は、タンク内の部品の破損や、トイレつまりを起こす原因を自らが作っています。

「我が家はもう何年も、そんなことは起きていないよ!」といわれる家庭もあるかもしれません。

しかし、メーカー側もNGとしている行為であり、節水で削減できる費用は年間で数千円ほどです。

トイレつまりの修理が必要になれば、一度で吹っ飛ぶ金額ですし、つまりが起きてトイレが使えないと、非常に困った状況になるのは明らかです。さらに、悪徳業者に依頼してしまうと・・

そうならないためにも、節約効果の薄い対策をするより、トイレのトラブルを起こさない使い方の方が、断然節約につながるはずです。

思いあたる方は今一度、家庭のトイレ利用を見直してみてはいかがでしょう。

防災士×探偵ライター

これまで、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2017年に防災士とひょうご防災リーダーの資格を取得。2014年からWEBライターとして活躍し、現在では経験と資格を活かしてさまざまなメディアに多ジャンルにて記事を投稿中!フリーでの執筆活動をメインにしつつ、探偵として地域の困りごとも解決している。

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