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『香川照之の昆虫すごいぜ!』は、子供向けという既成概念を超えたインパクト!?

碓井広義メディア文化評論家

この夏、テレビ界随一の“珍種”がオンエアされました。不定期放送(!)のEテレ『香川照之の昆虫すごいぜ!』です。

タイトル通り、俳優・香川照之さんによる昆虫番組なのですが、子供向けという既成概念を超えるインパクトがありました。香川さんが、カマキリの着ぐるみ(その監修も香川さん自身)を着用して「カマキリ先生」となり、原っぱや河川敷で昆虫採集にまい進するのです。

アカデミー賞級の「カマキリ先生」
アカデミー賞級の「カマキリ先生」

聞けば、香川さんが民放のトーク番組で昆虫好きを表明し、「Eテレで昆虫番組をやりたい!」と望んだことがきっかけだとか。ですから、この番組での香川さんはひたすら楽しそう。その“昆虫愛”を爆発させていました。

前回の「モンシロチョウ」編でも、そのテンションはすでにMAXでした。カマキリ姿のまま、まるで座頭市の仕込み杖のような速さで補虫網を切り返し、次々とチョウを捕獲していく香川さん。同時に「モンシロチョウは春を呼ぶ一番バッター。昆虫界のイチローだあ!」などと絶叫、いえ解説も忘れません。

またモンシロチョウを指でそっと押さえながら、「うーん、この動き。伝わってくるチカラ。堪らないです」と子供のように感動していました。そして、すぐにチョウをリリース。香川、なかなか、いいヤツじゃん!

最新作のテーマは「タガメ」でした。昆虫少年の頃に一度触っただけで長いご無沙汰となり、なんと40年ぶりの再会だったそうです。

きれいな水にしか生息しないにも関わらず、小魚やカエルを食べてしまうという、どう猛なタガメ。香川さんはタガメを「殺人犯」に、自らを「タガメ捜査一課長」に見立て、全国の子供たちにも応援をお願いして、大追跡を敢行しました。

そして有力な目撃情報に導かれて、香川さんは栃木へ。結局、4時間をかけて全長7センチの大物を、見事「現行犯逮捕」します。最後は疲労で声も出ず、腰が痛いと正直に告白する、51歳の名優がいました。いいヤツな上に、香川すごいぜ!

この番組、なにしろ「不定期放送」なので、次回はいつになるのか、わかりません。Eテレには、せめて早めの再々放送をお願いするばかりです。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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