岸田総理所信表明・選挙公約 こども政策チェックポイントはこれだ #こども庁 #子ども基本法 #給付金
果たして岸田総理のもと、自民党は親子に冷たく厳しい子育て罰政党から進化できるのでしょうか?
10月8日の岸田総理所信表明演説と、自民党選挙公約における、こども政策チェックポイントを整理しました。
1.10月8日所信表明演説のポイント
困窮子育て世帯給付金の支給、児童手当充実に言及できるか?
もっとも弱いのは赤ちゃんのいる世帯、政府の再分配の失敗を是正できるか?
まず10月8日の岸田総理所信表明演説のポイントは以下の2点に、なんらかの形で言及するかどうかです。
困窮子育て世帯への給付金
児童手当の拡充
衣食住すらままならない困窮子育て世帯への給付金は、子どもの貧困対策の現場から、早期の支給を強く要望してきました。
コロナ禍前から、食料が買えないことがある、衣服が買えないことがあると回答した子育て世帯の割合は約2割あります(内閣府・子どもの貧困指標)。
コロナ禍の中で、その状況は悪化し、大人向けの食料配布に親子が来るようになったり、各地の子ども食堂・フードバンク等でも利用者の増加に追い付かず、食料が足りないという悲鳴があがっているのです。
このような厳しい状況に対し、自民党議員を含む超党派子どもの貧困対策議連も、10月1日、田村厚生労働大臣に、困窮子育て世帯給付金の支給、児童手当拡充と保護者休業保障等の要望書を提出し、対応を求めました。
すでに連立与党である公明党は、全子育て世帯への給付金を打ち出しています。
立憲民主党も、困窮子育て世帯への給付金を総理所信表明に入れるよう、要望しています。
いまいちばん「弱い立場」にあり現金給付の優先度が高いのは、コロナ前から政府による所得再分配がもっとも冷遇されている、子育て世代、とくに乳幼児とその親です。
以下のデータは、政府による所得再分配は、乳幼児(とその親たち)にもっとも冷たい日本の状況を示しています。
政府の再分配により、0-4歳(乳幼児世代)と25-29歳(若い親を含む若者世代)で、かえって貧困率が悪化しています。
つまり赤ちゃんたちへの公助、とくに現金給付が失敗しているので、その世代の貧困率が悪化してしまっているのです。
赤ちゃんや小さな子どもとその親が、十分に食事や栄養もとれていない状況を放置する岸田総理だとは思いたくありません。
与党野党の垣根を越えて、要望される困窮子育て給付金について、岸田総理が所信表明で述べられるか、注目しましょう。
また、岸田総理の打ち出す教育費・住居費補助以外にも、児童手当の低所得世帯・多子世帯への加算が、衣食や電気ガス水道といったライフラインにも事欠く親子を日本でゼロにするために必要です。
現金給付を平素から、弱い立場の国民、とくに日本の未来を担う子どもに手厚くできるか、が岸田総理の覚悟が問われます。
2.自民党公約のポイント
岸田政権の自民党が、本気でこども政策に取り組んでいるかどうかは以下のポイントで判断できます。
困窮子育て世帯給付金の支給
児童手当の低・中所得層増額
高所得層の児童手当の復活
(菅政権のもとで待機児童対策のために来年秋に廃止決定)
もちろん総裁選の時から岸田総理が公約とされている教育費・住宅費支援は重要です。
その場合、以下のチェックポイントが満たされているかどうか、に注目する必要があります。
幼児教育の無償化の0-2歳適用(保育料無償化)
高校無償化の所得制限の緩和(現行制度:私立高校年収590万円、公立高校年収910万円からの引き上げ)
住宅費支援は、所得再分配恩恵を受けていない若者世代・子育て世代(10代後半~30代)への優先支給
教育の無償化の所得制限緩和は、連立与党・公明党も公約に掲げている政策でもあり、連立合意をした自民党側が呼応しないのであれば、たいへん奇妙な事態と指摘せざるを得ないでしょう。
3.こども庁は予算増・人員増・子ども基本法の3点セットの方針で本当の「こどもまんなか」
野田聖子特命大臣のもとで、こども庁の方針を年内に決定するそうです。
こども庁については、総理所信表明・自民党公約ともに、次の点がチェックポイントとなります。
こども政策への予算増、人員増
子どもの権利を守り実現する子ども基本法
すでに私が何度も懸念している通り、予算増・人員増を実現せず、新省庁だけ作っても、官僚組織は疲弊するだけです。
すでに総裁選で、岸田総理・野田大臣を含む4候補全員が、子ども関係支出倍増にYES回答をしています。
それを具体化していくことが、こどもまんなかの総裁選をたたかった、岸田総理と野田大臣の責務であるはずです。
総裁選の時だけの口先の約束ではないと私は信じています。
また政策に横ぐしをさすためには、こども政策をまたぐ基本理念である「子どもの権利」が法制化されなければ、今まで通りのバラバラの政策が進むだけでしょう。
子どもの虐待死・自殺死の増加、学校・園での性暴力や体罰・暴言も改善しないでしょう。
これらの行為は、子どもの尊厳と権利を理解しない大人たちによって行われており、その改善のためには、子どもたちの尊厳と権利を守る法である「子ども基本法」の成立が必要な状況にあります。
与党・公明党は子ども基本法をすでに公約に掲げており、野党も同様の公約を打ち出す可能性が高いと判断しています。
自民党だけが、子どもの権利や尊厳をないがしろにする政党、という状況にならないよう、子どもの人権についても明確なメッセージが必要とされるでしょう。
4.おわりに:「拒否権プレイヤー」(守旧派議員・右派議員)に忖度している限り、自民党は子育て罰政党
岸田政権で進化できるか?
最後に、自民党が子育て罰政党のままでいる危険性についても残念ながら触れておかなければなりません。
せっかく、こどもまんなかの総裁選をたたかっても、自民党内の守旧派議員・右派議員の中には、子どもが人権なんて生意気だ、児童手当は必要ない、という考えを持つ議員も少なくないそうです。
そのような守旧派・右派議員が「拒否権プレイヤー」として、ここまで述べてきたような政策・公約をブロックしてしまえば、自民党は子育て罰政党のままでしょう。
※参考文献 ジョージ・ツェベリス/眞柄秀子・井戸正伸監訳,2009,『拒否権プレイヤー政治制度はいかに作動するか』早稲田大学出版部.
いままでも、子育て罰政党として、親子に冷たい現金給付や薄弱すぎる支援制度しかできず、超少子化を加速させてきたのですから。
もしも子育て罰政党のままであれば、若い世代や女性の得票は愚か、国を滅亡と衰退に導き、国民からの信頼を失いかねないことを心配しています。
岸田政権で自民党が脱子育て罰政党に進化できるかは、こうした党内の「拒否権プレイヤー」をおさえこめるかにかかっているとも言えます。
岸田総理の、親子にもあたたかくやさしいリーダーシップを期待します。