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久々の対戦は「ジャイキリ未満」(天皇杯4回戦: ジェフユナイテッド千葉1-0北海道コンサドーレ札幌)

宇都宮徹壱写真家・ノンフィクションライター
天皇杯4回戦で対戦した千葉と札幌。カテゴリーの違いを感じさせない試合となった。

 プロ・アマ問わず、日本サッカー界のナンバーワンを決めるトーナメント大会、天皇杯 JFA 第104回全国日本サッカー選手権大会(以下、天皇杯)は、4回戦(ラウンド16)に突入。8月21日、8試合が各地で行われた。

 今回のチョイスは、フクダ電子アリーナで開催された、ジェフユナイテッド千葉(J2)vs北海道コンサドーレ札幌(J1)。カテゴリーでは札幌が上だが、現在はJ1で最下位の20位。千葉はJ2で8位となっている。さっそく写真と共に振り返ってみることにしたい。

苦しい戦いが続く札幌だが、直近のリーグ戦ではサガン鳥栖に5-3で勝利。さらに勢いを付けたいところだ。
苦しい戦いが続く札幌だが、直近のリーグ戦ではサガン鳥栖に5-3で勝利。さらに勢いを付けたいところだ。

札幌がフクアリを訪れるよのは2016年11月12日以来。その後、J1に昇格したため千葉との対戦は8年ぶり。
札幌がフクアリを訪れるよのは2016年11月12日以来。その後、J1に昇格したため千葉との対戦は8年ぶり。

千葉はメンデス、札幌は高尾瑠を除いて、いずれもリーグ戦から10人入れ替え。千葉は中3日、札幌は中4日。
千葉はメンデス、札幌は高尾瑠を除いて、いずれもリーグ戦から10人入れ替え。千葉は中3日、札幌は中4日。

序盤は札幌が仕掛けるが、徐々に千葉がペースを握る。ドゥドゥが決定機を迎えるも、DF中村桐耶がクリア。
序盤は札幌が仕掛けるが、徐々に千葉がペースを握る。ドゥドゥが決定機を迎えるも、DF中村桐耶がクリア。

ドゥドゥが宮澤裕樹に倒され、千葉にFK。ペナルティエリア手前で、品田愛斗と 佐々木翔悟が並び立つ。
ドゥドゥが宮澤裕樹に倒され、千葉にFK。ペナルティエリア手前で、品田愛斗と 佐々木翔悟が並び立つ。

最初にモーションした品田が右足でキック。弾道はそのまま札幌のゴールに吸い込まれ、45分に千葉が先制。
最初にモーションした品田が右足でキック。弾道はそのまま札幌のゴールに吸い込まれ、45分に千葉が先制。

今季、札幌に加入したシエラレオネ代表のアマドゥ・バカヨコ。チャンスに絡むもののシュート1に終わる。
今季、札幌に加入したシエラレオネ代表のアマドゥ・バカヨコ。チャンスに絡むもののシュート1に終わる。

1−0のまま90分が経過し、アディショナルタイムは8分。札幌のミシャ・ペトロヴィッチ監督は「前へ!」。
1−0のまま90分が経過し、アディショナルタイムは8分。札幌のミシャ・ペトロヴィッチ監督は「前へ!」。

その後も札幌が猛攻を仕掛けるものの、千葉は逃げ切りに成功。2014年以来となるベスト8進出を果たした。
その後も札幌が猛攻を仕掛けるものの、千葉は逃げ切りに成功。2014年以来となるベスト8進出を果たした。

敗れた札幌はベスト16で今季の天皇杯が終了。ルヴァン杯も勝ち残る中、J1残留に向けた戦いは今後も続く。
敗れた札幌はベスト16で今季の天皇杯が終了。ルヴァン杯も勝ち残る中、J1残留に向けた戦いは今後も続く。

 試合前、野々村芳和Jリーグチェアマンにばったり遭遇した。前職は札幌の会長だったが、一方でプロデビューしたのは千葉(当時は市原)。古巣同士の対決に、チェアマンは何を思っただろうか。

 形の上では、J2クラブがJ1クラブに競り勝った、この試合。私の印象は「ジャイキリ未満」である。「高温多湿なこの気候での連戦は、両者に取って非常に厳しい環境だった」とペトロヴィッチ監督。結局のところ、運動量をコントロールしながら見事に逃げ切った千葉のほうに、カテゴリーを超えた試合巧者の印象を受けた。

 4回戦の他の試合では、レノファ山口FCがサガン鳥栖に2-0で勝利し、初のベスト8進出を果たした。準々決勝の組み合わせは以下のとおり(会場は未定)。

横浜F・マリノスvsレノファ山口FC(9/25)
サンフレッチェ広島vsガンバ大阪(9/11)
鹿島アントラーズvsヴィッセル神戸(9/25)
京都サンガF.C.vsジェフユナイテッド千葉(9/18)

 試合日にばらつきがあるのは、横浜FMと神戸がAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)、広島がAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)に出場するためである。この3クラブに加えて、鹿島とG大阪もJ1上位をキープ。こうした状況は、天皇杯での戦いにも、少なからず影響を与えるはずだ。

 一方でJ2勢の千葉と山口は、さらに上を目指すチャンス。千葉は2回のベスト4の経験があるが、山口は完全なる未体験ゾーンに突入する。J1勢とJ2勢、それぞれの戦いに、引き続き注目したい。

<この稿、了。写真はすべて筆者撮影>

写真家・ノンフィクションライター

東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。『フットボールの犬』(同)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)で2016サッカー本大賞を受賞。2016年より宇都宮徹壱ウェブマガジン(WM)を配信中。このほど新著『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)を上梓。お仕事の依頼はこちら。http://www.targma.jp/tetsumaga/work/

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