400人のシニアが「若いうちに知っておけば良かった」と後悔した10の必須知識とは何か?
「人生100年時代」と言われる昨今ですが、1年1年はあっというまに過ぎてしまいます。気がつけば歳を重ね、還暦を迎えていた、喜寿を迎えていた、と感じる方も多いでしょう。ことほどさように人生は、「光陰矢のごとし」とも言えます。
高齢期を迎える中で自分の過去を振り返り、「これを知っておけば良かった」と、悔やまれる方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、現在のシニアはどんなことに対し、「ああ、これを早く知っていれば良かった」、「知っていれば、今の生活をより良くできたのに、備えておけたのに」と考えていらっしゃるのか、実際に60〜92歳の男女400人にお伺いしてみました。以下、回答の多かったものから順番に説明していきたいと思います。
第1位●年金の仕組み
最も回答が多かった「知っておけば良かったこと」は、「年金についての仕組み」でした。
多くの方は、若い頃は、老後に支給される年金について、さほど興味もなければ、基本的知識も持っていない方が大多数でしょう。老齢年金の仕組みについて興味を持ち始めるのは、おそらく中高年期を迎える40歳前後ではないでしょうか。
しかし、たとえ興味を持っても、具体的な支給額の見込みを通知する「ねんきん定期便」は年1回。届いたとしても年金に対する理解を深めることは難しいでしょう。
かくして、知識不足ゆえに、高年期になってから老後生活の骨格を支えるはずの「年金」に関する後悔が高まることになってしまうのでしょう。
「退職金制度や年金についてよく知っておけば、老後の生活の見通しが立ち、安心できたのに…」(63歳女性・富山県)
「年金の重要性。若いころは何も思わず関心もなかったため国民年金を納めない期間が数年あり、今になって納めておけばよかったと後悔」(67歳女性・北海道)
など、年金制度の知識不足を悔やむ声が聞こえます。
第2位●資産運用に関する知識
若ういちに「知っておけば良かったこと」の第2位は、「資産運用に関する知識」でした。
「株への関心。もう少し関心があったら上手く運用し楽しめたかも」(66歳女性・熊本県)
「老後の資産運用について。現役時代は仕事を言い訳に、社内持ち株しか運用していませんでした。現役時代から資産運用の勉強をしていればと若干後悔しています」(71歳男性・東京都)
「資産運用。退職金や手持ち資金の運用方法をもっと知っていればと思う」(76歳男性・神奈川県)
このように、現役時代に資産運用を怠ったことに対して悔やむ声は非常多いものでした。とは言っても、彼ら彼女らが現役時代であった3・40年前は、通常の定期預金の金利でも5〜8%のケースはざらでしたから、預貯金で十分事足りると考えていた人も多かったのではないでしょうか。
しかし、バブル崩壊後のゼロ金利が長く続く中で、預貯金の金利メリットはほとんど無くなってしまい、投資に関する注目が高まってきました。しかし、高齢期になってリスクを伴う投資を行うことには躊躇いが生じます。そうしたことから、資産運用に関する後悔が生じたのでしょう。
「物価は上がりますが、年金は減ることはあっても上がることはないので、いかにうまく運用できるか情報を幅広く知る事が大切」(67歳女性・愛知県)という声は現在のシニアにとって切実な声でしょう。
第3位●歯の健康対策/健康に関する知識
3番目に多かったのは、「歯の健康対策/健康に関する知識」でした。歯の健康対策については、比較的女性に多い声でした。
「歯の知識。もっと早く歯周病になる経過を知っていれば、歯磨きをちゃんとしたし、食生活も考えたのにと後悔しています」(63歳女性・鳥取県)
「歯周病予防です。もう数本しか歯が残っていません」(67歳男性・奈良県)
「口内環境を整える事が、いかに健康に重要かを知らず、今になって苦労しています」(63歳女性・大分県)
「幼少期からの地道な歯のケアです。子ども時代は社会全体が今のように健康な歯に対する意識がなく、歯の治療も行き届いておらず、とても残念に思います。今の若い世代は歯がきれいな人が多くうらやましく思います。芸能人でなくても「歯は命」だとこの年齢になってつくづく思います」(66歳女性・神奈川県)
高齢期における歯の大切さを啓発するために、平成元年より厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会は、「8020運動」(80歳になっても20本以上自分の歯を保とういう運動)を推進しています。80歳で20本以上の歯を保持している人の割合は平成28年時点で50.2%(推計)と初めて半数を超えました(平成28年歯科疾患実態調査)。
しかし逆に言うと、一般的に歯の本数は全部で32本ですから、約半数近い人は80歳までに10本以上の歯が失われているということになります。改めて若い頃からの歯のケアの大切さを思い知らされる事実です。
「歯の健康対策」同様に、「健康面に関する知識」を挙げる声もありました。
「健康面の知識全般。特に歯の日常ケアの知識。(若い頃からずっと知っていて励行しておれば、老後もおいしいものがもっと楽しめた)」(67歳男性・兵庫県)
「健康に関する知識です。若い時には健診でいくら注意されても、大して気にもしませんでした。この年になって初めて、改めて若気の至りを痛感しました。あの時に少しでも気にしていればと、後悔先に立たずでした」(73歳男性・兵庫県)
第4位●社会保険・税の仕組み
若いうちに「知っておけば良かったこと」の第4位は「社会保険・税の仕組み」です。
社会保険とは、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称です。サラリーマンはこうした社会保険に関する手続きは全て会社が行なってくれるため、多くの方はこうした納付実感もないまま過ごされているのかもしれません。
しかし、定年後はそういうわけには行きません。国民健康保険や介護保険の納付、確定申告のやり方など、初めて理解しなければならないことも数多く生じてきます。早く知っておけばと後悔する事項も多いのではないのでしょうか。
「社会保険。会社員時代は会社が勝手にやってくれたが、退職後は誰も教えてくれないこと」(63歳男性・大阪府)
「まだ定年退職前で、現在、退職後の年金や保険についていろいろと調べているところ。学生時代に国民年金未払いだったので、追納制度を早く知っておくべきだった」(64歳男性・高知県)
「65歳以上の介護保険の料金の仕組み」(67歳男性・神奈川県)
など、社会保険制度の知識不足ゆえの後悔は少なからずあるようです。
第5位●運動習慣を持つこと
知っておけば良かったことの第5位は知識関連ではなく、「運動習慣を持つこと」でした。歯の健康を保つために歯磨き習慣を持つのと同じように、高齢期に健康を維持するために、若い頃からの運動習慣を持つことの大切さを痛感する方が多いということでしょう。
「体を動かす習慣について。身につけてないから今になって運動しなさいと言われてもハードルが高いのだ。運動部の経験も知識もないからね。歩くくらいしかできない」(64歳女性・茨城県)
「筋トレの必要性を若い自分に伝えたい。正しい歩き方、正しい姿勢での生活が自分のためになるという事実。食べ過ぎや運動不足の結果が、体の不調を引き起こすことは、わかっているつもりでも、甘かったと思う」(67歳女性・滋賀県)
「若い時からの運動の継続。高齢になってからジムへ通う様になって体と脳に良い影響があるのが分かり、もう少し前から知っていればより健康になるのにと思った」(74歳女性・大阪府)
「習慣的な運動。ジムでするような激しい筋トレなどではなく、日常で背伸びするような気軽な運動がすごく大事だと70歳を越えて気づかされました。もっと早く知っておくべきでした」(75歳男性・東京都)
いずれの声も、運動習慣を持つことの大切さを教えてくれる意見でした。
第6位●英会話を学ぶ
第6位は、これも少し毛色が変わって「英会話を学ぶ」でした。ご回答いただいた6、70代の多くは、外国に対して憧れを持っている世代です。そのため、海外旅行に行った際、自由に会話ができないことにコンプレックスを抱いた経験をお持ちの方も多いのでしょう。また、英語を学んでいる孫との会話やインバウンド機運が盛り上がる中で英会話習得ニーズを感じる方もいらっしゃるようです。
「語学を勉強しておけばよかった。特に英会話をしっかり身につけておけば、生活全般に良い効果が有ったように思い、後悔しているところです」(83歳男性・静岡県)
「趣味がたくさんあり色々なことをやりましたが、海外旅行を始めてから英語はもっとやっておけば良かったと思った」(81歳男性・神奈川県)
「最近3歳の孫が英語で話しかけてくるので、ちゃんと英会話を覚えておけばよかった」(64歳女性・北海道)
「英会話。外国人の多い地域なのでコミュニケーションを取りたい」(68歳男性・神奈川県)
第7位●個人年金(保険)
第1位「年金の仕組み」、第2位「資産運用について」と同じくお金に関する話で、「個人年金(保険)」を知っておくべきだったという声が第7位でした。老後を公的年金のみでやりくりするのはなかなか厳しい。そこで注目されるのが個人年金です。
「個人年金をかけておけば良かったと思います」(65歳女性・福岡県)
「公的年金だけで暮らして行けるかどうか。個人年金の必要性です」(67歳女性・北海道)
個人年金に加入されていても、掛け金を増額しておけば、と後悔する方もいらっしゃいました。
「個人年金にもっと多く加入しておけばよかったと思っています」(72歳女性・京都府)
「今、個人年金を受け取っていますが、加入時、もっと掛け金を増やしておけばよかったと思います」(74歳男性・神奈川県)
現在、人生100年時代の社会保障という名のもと、投資信託、インデックスファンドが推奨されていますが、当然のことながらこれらはリスクを伴います。個人年金(保険)は確定利回り商品も多いことから、手堅い老後対策商品とも言えるでしょう。
第8位●遺産相続の知識
後悔することの第8位は「遺産相続の知識」でした。今回の質問にお答えいただいた方の多くは60代から70代の方々で、両親との死別に遭遇する年齢でもあります。それだけに、人によっては相続に関する知識を必要とされる方もいらっしゃるのでしょう。
「相続税と相続に関する手続き」(67歳男性・神奈川県)
「親からの遺産相続」(73歳男性・神奈川県)
「年金の知識、税金対策、相続のあり方」(73歳男性・三重県)
第9位●医療に関する知識
そして第9位は「医療に関する知識」です。高齢になり、医者にかかる機会が増えてくる中で、インフォームドコンセントに基づく医療行為の説明を受ける機会は確実に増えているでしょう。
しかし、ある程度、知識を持ち合わせていなければ、自身の判断を下すことは難しいでしょう。近年高度医療が進む中でどういった医療サービスを望むのかを、個人の判断に帰する機会も増えて来ているゆえの知識ニーズなのかもしれません。
「医療、薬の知識。一人一人違うのだから病院で言われるままではなく、自分でもよく調べて納得した治療を受けた方がよかったと思います」(61歳女性・神奈川県)
「最新の医学の常識」(75歳男性・千葉県)
「医療・福祉・年金に関する知識です。高額医療費制度があり、医療費の上限が、私のように所得が低いと、49,000円ぐらいなので、生命保険の入院保険など必要がなかったことに、高齢者になって初めて気付きました!」(74歳男性・広島県)
第10位●家族の歴史・日本やや世界の歴史
そして「知っておけば良かったこと」、最後の第10位は、「家族の歴史・日本や世界の歴史」でした。
人間は歳を重ねてくると、なぜか自分の家系や生まれて育った地域の歴史、ひいては日本や世界の歴史に興味を持つ人の割合が増えます。その理由は不明ですが、おそらく寿命が近づく中で、自分を取り巻く環境を俯瞰的に把握したいという欲望が芽生えてくるのではないでしょうか。
「日本の歴史」(61歳男性・千葉県)
「世界史、アジア史、国史の勉強」(62歳男性・兵庫県)
「聖書とギリシャ・ローマ神話についての知識」(72歳女性・茨城県)
「家族、家系など身内の歴史。若い頃は家族の辿ってきた歴史など気恥ずかしくて聞けなかった」(61歳男性・福岡県)
など、家系に留まらず、日本や世界の歴史を学びたいというニーズが挙がっておりました。
以上が、「若いうちに知っておけば良かった」と後悔するベスト10の知識となります。
今回約400名の方にお答えいただきましたが、およそ9割の回答が大体この10の項目内容に含まれるものでした。ということは、ある意味でこの10の知識は高齢期を迎える前に知っておくべき、(あるいは実践しておくべき)必須知識であるとも言えるでしょう。
歳を重ねてから後悔しないためにも、これらの知識は出来るだけ若いうちから習得しておいたほうが良いのではないでしょうか。