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娘が手術で、全額支払うとドタキャンの連絡 飲食店オーナーが「キャンセルできない!」と激怒して物議

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

飲食店の予約をキャンセル

飲食店の話題では、たびたびドタキャン(直前キャンセル)やノーショー(無断キャンセル)が物議を醸します。

Threadsで、飲食店の予約をドタキャンした客による、次のような投稿がありました。2連続でポストされていたので、どちらとも掲載します。

キャンセルの話が結構話題になってますよね。
私が今でも忘れられないのは
ずっと大好きだったパスタ屋さん
味も見た目も気に入って、
かなり通い、かなりのお客様を紹介して、宴会にも使って、一度もキャンセルもした事がないお店。
ある日、娘とディナー予約していた時間の直前に、娘が緊急で救急受診をする事になり、
予約時間が迫っていたので、
その旨を電話で連絡すると、
直前に来れないってどう言う事?!
と怒なられた上に、キャンセルはできません!って怒なられました。
娘が今から入院手術になるんです!と言っても、こっちは2人分席を空けて待ってる。前日に言ってくれたらまだなんとかできたかも知れないのに!
と↓

(以下、2投稿目)

むかついたので、お金は全額払いに行きますと言ったのですが、返事がないので、じゃあ、そのままにして料理出して下さい。私1人でも食べにいきます!一口でも食べて2人分払って帰るので宜しくお願いします!
って言いました。
お店につくと、
奥さんが今急遽2人お客様が入ったから、病院に行ってあげて下さい!
旦那さん(オーナー)がキャンセルに敏感になっていて、怒鳴ってすみませんでした。と言われましたが、
結局、娘は入院、手術をしましたが、
そんな事情を話してお金も払うって言っても、自分の機嫌で怒鳴り散らすオーナーさんって、、
怖すぎて、それまで沢山紹介してきたのを後悔しました。
2度と行くことはありませんが。

ある母親が娘と利用するために飲食店のディナーを予約しました。この店に何度も通っており、他の客も紹介し、これまでキャンセルしたこともない、いわゆる良客です。予約時間直前になって、娘が緊急で入院手術することになり、全額支払うとキャンセルの電話を入れました。しかし、キャンセルできないとオーナーが激怒したので、母親が一人で訪れることになりますが、来店するとオーナーの妻から、急遽2人分予約が入ったから病院に行ってと促されます。この態度や対応に、母親はもうこの店には2度と行かないと言及。

現在は投稿が削除されてしまっていますが、賛否両論を呼びました。

ドタキャンやノーショーがいけない理由

ドタキャンやノーショーが起きると、飲食店は損害を被ります。

来客人数を鑑みて事前に準備しますが、席に加えてコースや料理を予約しているのであれば、用意した食材や料理が無駄となります。客入りを予測してスタッフのシフトを組みますが、キャンセルがあれば、そこまでスタッフが必要なかったということになり、人件費も無駄になるのです。

ドタキャンであれば、件の事案のように、運よく直前に予約が入ったり、ウォークインの客が訪れたりすることもあるかもしれません。しかしその場合でも、同じものをオーダーしなければ、用意していた食材や料理が無駄になります。ノーショーの場合には客が遅刻する可能性も考慮して、15分から30分は様子をみるので、ドタキャンよりも売上機会を逸する確率が高いです。

キャンセルされた予約があったせいで、本来は受けられていた予約が受けられない場合もあるので、その場合には売上機会を損失してしまいます。

他の利用者にも迷惑

ドタキャンやノーショーは、飲食店だけではなく、他の利用者にも迷惑をかけます。先ほどとは逆の視点で、本来であれば、予約できたはずの人が予約できなくなるからです。

ドタキャンやノーショーがたびたび起きると、飲食店は損失分を転嫁して、より高い価格を設定しなければなりません。そうなれば、困るのは他ならぬ利用者です。つまり、ドタキャンやノーショーを行う人がいるせいで、他の人が損害の補填分を支払うことになります。

また、最初から訪れる気がなく、キャンセルするために飲食店を予約することは、偽計業務妨害罪となる可能性もあり、言語道断です。

ドタキャンやノーショーの理由

大手予約台帳サービスを展開するTableCheck(テーブルチェック)が実施した調査によれば、無断キャンセルをする理由のトップは「場所確保のためとりあえず予約」です。以下「体調不良」「複数店を同時に予約」「うっかり忘れ」「人気店をとりあえず予約」と続きます。

飲食店の無断キャンセル被害をなくす!現状やキャンセル対策を解説/TableCheck

コロナ禍の無断キャンセル理由、「体調不良」が急増。Go To Eatオンライン予約、キャンセル少ない傾向/TableCheck

「場所確保のためとりあえず予約」「複数店を同時に予約」「人気店をとりあえず予約」は、飲食店の予約に対する考えが浅く、キャンセルにあまり罪悪感をもっていないことが根底にあるのかもしれません。「うっかり忘れ」は、スケジュール管理の不備やルーズな感覚が主因でしょう。

唯一納得できる理由が「体調不良」です。無理を押して訪問し、余計に体調を悪化させたり、同席者や他の客、店のスタッフに病気を感染させたりしてはいけません。

自分でコントロールできない事象

ドタキャンやノーショーをしてしまったら、キャンセルポリシーにしたがうことが前提です。ただ、理由によっては考慮されることもあります。

体調不良というコントロールできない事象は、許容されやすいです。特にコロナ禍では、コロナに罹患していればもちろんのこと、濃厚接触者になっていたり、熱があったりしてコロナ感染の疑いがあれば、キャンセル料が課されないことがほとんどでした。

自分自身で制御できない突発的なアクシデントでも、キャンセル料を請求されないことがあります。件のキャンセル理由のように、家族の病気や怪我なども飲食店に許容されやすいです。

飲食店と客の関係

客との関係も大きく影響します。

売上などに貢献してきた客であれば、今回は仕方ないとキャンセル料が免除されることもあります。一般的な飲食店であれば、今後のことを考えて、良客にはあまり厳しいことをいえないものです。

件の客は良客であり、仕方ない事由によるキャンセルなので、キャンセル料を課されなくても驚きはありません。しかも、きちんとキャンセル料を支払うといっているのです。それなのに、キャンセル自体を認めずに激怒する態度は、明らかに度を越えています。

ドタキャンやノーショーは起きないに越したことはありません。しかし、不幸にも起きてしまった場合には、飲食店にも冷静な対応を期待したいところです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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