都知事が国政の「最大最強野党」になる?!
安倍晋三総理の昭恵夫人は、「家庭内野党」を自認しているといわれる。これに対して、東京都知事選において、小泉純一郎元総理が支持する「脱原発」の細川護煕元総理が、勝利し、都知事になれば、日本における「最大最強野党」が生まれるのではないかと思う(注1)。
日本の現在の国政は、国民からの大きな支持があるわけではないのだが、野党の総崩れにより(注2)、現与党が国会で絶対的な多数をとり、衆参での「ねじれ」も解消している。このため、政治状況や政策形成状況が大きく改善しているわけでもないにもかかわらず、ある意味の政治における「凪(なぎ)」状態が生まれているのだ(注3)。それは、政治的決断がしやすくなったなどという良い面もあるが、今後の日本の将来を考えると問題の方が大きいと考える。
その意味で、細川・小泉連合は、日本の国政に「活」を入れる意味では、多くの批判もあるが、大きな意義・意味があると考える。その意味で、同連合は、国政における「最大最強野党」になるのではないだろうかと考える。
原発問題は、国の問題であり、東京の問題でないという意見も強い。確かにバランスある視点、物分りのいい視点からすればそうだろう。筆者もそうだと思う部分もある。
だが、3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故の後の、2011年の3月や4月ごろの夜の東京の様子を思い出していただきたいと思う。私たちはもう忘れかけているが、たとえば、銀座の街や地下街さえも、本当に真っ暗で、「あっ、日本も変わったんだ。大きく変わんないといけないんだ」と感じたあの感触を。
そして、原発事故が当時最悪事態になれば、首都圏がある意味消失し、日本が機能不全になる寸前までいっていたことを、思いだした方がいいのではないか。しかも、福島第一原発でつくられた電力は、東京を中心とした首都圏のために存在していたものだ。
これらのことを考えると、あの原発事故そして原発問題はまさに、東京の問題なのではないか。
脱原発の問題は、福島の原発事故のことからも、私たちの生活や社会にも関わる人類史的課題でもあり、結論はどうであれ、もっともっと日本国内で議論され、国民が納得できる結論に達するべきものだと思う。だが、今回の原発事故以降そのような議論やプロセスがあったかというと疑問を感じざるをえない。
国政も先述したような状態で、少なくとも2年半ぐらいは国政選挙がない可能性も高い現状において、今回の都知事選は、ある意味偶然の産物ではあるが、都民が国政に意思表明する貴重な機会になったのである。そして全国民を巻き込んで、日本の中心の東京そして日本で、原発について真剣に考えはじめる重要な機会になることはいいことなのではないかと考える。そしてさらに細川元総理が都知事になれば、その議論はさらに継続され、具体的な方向性が国政も絡んで打ち出される可能性は高い。
これらの意味からも、この都知事選では、東京都民の見識と洞察が正に問われているといえるかもしれない。
都知事選では、もちろん「脱原発」というワン・イッシューだけでなく、他の面も考慮しなければならないことは申すまでもない。しかしながら、細川氏は二十年ぐらい前とはいえ総理経験もあり、その点は熟知した上で、短期決戦である都知事選で勝ち抜こうという戦略なのだと思う。しかも、相変わらず国民の人気と支持の高い小泉元総理の明確な支持を得たことの意味は非常に大きい。
政治は、アジェンダセッティングと戦略が重要だ。他の候補や自民党さらにメディアなどの反応をみても、細川・小泉連合にアジェンダ・セッティングに完全に誘導されているといえる。
政治は、アートと同様に可能性を追求するもの、今回の都議選をきっかけに、新たなる政治の可能性を実現してほしいものだ(注4)。
(注1)すでにもう忘れ去られた感があるが、1960年代の後半から70年代の前半の
時期、日本の国政は自民党が与党であり国政を掌握し続けていたが、反公害や福祉重視政策や憲法擁護などを掲げて、数々の影響力のある革新首長が生まれた。その結果、地方で公害などで革新的な政策が行われ、それが国政にも一部影響を与えた。今回も、このようなことが起こる可能性があるし、今の政治状況を考えるとさらに大きな変化が生まれる可能性もある。
(注2)拙記事「得票数にみる有権者の真相と現実」を参照。
(注3)特定秘密保護法案の審議のように国会が混乱したこともあるが。
(注4)拙記事「政治におけるアートを追求してほしいー大島渚監督の逝去におもうこと」を参照。