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【新型コロナ】入院患者が4割減少 東京都の病床使用率も50%以下に改善

楊井人文弁護士
東京都の小池百合子知事(写真:つのだよしお/アフロ)

 新型コロナウイルス感染症の入院患者が全国的に減少し、最も多かった東京都でも4月下旬に比べ4割減になっていることがわかった。都の病床使用率も50%以下に改善していた。厚生労働省が5月16日公表した資料で明らかになった。(続報あり=東京都の重症者病床使用率、大阪を下回る 正確なデータを公表せず

東京都の入院患者、重症患者は4月下旬に比べ4割減

 厚労省が16日、ホームページに掲載した「新型コロナウイルス感染症入院患者受入病床数等」という資料によると、東京都の入院患者は4月27日の1832人から、5月6日に1511人に減少していた。(*1) 16日現在、1033人(東京都発表)で、4月27日より4割超減少したことがわかる。

 減少の要因は、軽症者がホテルなどの施設や自宅で療養させる人数を増やしたからというわけでもない。ホテル等療養者数も、4月27日時点の833人から、313人(5月16日)にまで減少していた。

重症病床使用率 大阪府は公表 東京都は非公表

 今回の厚労省の資料によれば、東京都は5月11日時点で、入院患者を受け入れるための病床を3300確保していた。病床利用率は、12日の入院患者数をベースに算出すると42.8%と5割を大きく下回っていたことになる。16日現在、31.3%にまで低下した。都は近く、4000病床を確保する予定としている。

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 都内の重症者も93人(4月27日)から55人(5月16日)に減少。都内の重症者病床数やその使用率は明らかでないが、人工呼吸器を装着している患者はピーク時の半数近くにまで減っており、政府専門家会議も、重症者の医療提供体制は逼迫していない、と14日の見解で明言している。

 5月6日ごろの病床確保数は正確にはわからないが(11日に2000から3300にいきなり急増したとは考えにくい)、病床利用率が60%程度に低下し、緊急事態宣言の延長がなされた7日時点で、医療体制のひっ迫状況はかなり改善されていた可能性がある。

大阪府のホームページより(5月17日、筆者撮影)
大阪府のホームページより(5月17日、筆者撮影)

 大阪府は、出口戦略として独自の「大阪モデル」を提唱している。自粛解除基準の一つに「患者受入重症病床使用率60%未満」を示し、日々の使用率もホームページで公表している。16日現在20.7%となっており、大幅な休業緩和措置に踏み切った。

 他方、東京都は15日、自粛緩和基準として7項目を発表したが、医療体制のひっ迫状況を表す「病床使用率」を基準に盛り込んでおらず、その具体的な数値も発表していない。

東京都は不正確な入院患者数を発表か

 そもそも、東京都は入院患者を誇張して発表していた疑いがある。

 東京都の4月27日発表の入院患者は2668人だったが、今回公表された厚労省の資料では1832人となっていた。5月6日の入院患者数も、東京都は実際の2倍近く多く発表していたとみられる(上記のグラフ参照)。

 東京都は5月10日ごろに大幅に入院患者数、退院者数を修正したとみられる。

 緊急事態宣言の延長が議論されていた4月下旬から5月上旬までの間、東京都は正確な入院患者数を発表していなかった可能性が極めて高い。

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厚労省も宣言延長決定後にデータを大幅修正

 厚労省の発表データも極めて不正確だ。

 5月8日にそれまでの集計方法を変更したとして、突如「入院治療等を要する者」を一気に5000人くらい減らした。(*2)。4月下旬から「入院治療等を要する者」の数値は1万人超で推移し、これが入院者数と同視されていた。

 厚労省は、いまだに全国の「入院患者数」は発表していない。日々、国内の感染状況を発表しているが、ここで公表されている「入院治療等を要する者」は、ホテル等で療養している人も含まれ、実際の入院患者数はもっと少ないとみられる。

 現に、5月8日の「入院治療等を要する者」は6302人と発表されていたが、今回発表された資料によると、入院患者数は4449人(5月6日)だった。

「入院治療等を要する者」が宣言延長翌日の5月8日から"急減"?

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(厚労省の発表に基づくグラフ。東洋経済オンライン特設サイトより)

「東京都の医療体制がひっ迫」の報道はミスリード

 5月11日、「コロナ病床、想定の半分以下 確保済み12県、東京、石川逼迫―厚労省」との見出しで、依然として東京都の新型コロナ入院患者の病床がひっ迫しているかのような報道があった。Yahoo!ニュースでもトップで取り上げられた。

Yahoo!ニュースのトップ記事(5月10日夜)
Yahoo!ニュースのトップ記事(5月10日夜)

 これは、東京都で確保されていた病床数(2000)の使用率が「9割超」になっていると指摘したものだが、よく見ると、約2週間前の4月28日時点のデータだった。

 しかし、小池知事は5月11日の会見ですでに3300床確保したことを明らかにしており、前述の通り、この時点で病床使用率は5割を切っていた。

 NHK特設サイトは、現在も、「5月11日時点でのデータ」として、東京都につい「病床数2000、入院患者2518人、ベッドに対する割合126%」と掲載しているが、これも間違いだ(前述の通り、12日時点のベッドに対する割合は約43%)。都の不正確なデータをもとに掲載したとみられる。

 これまで、緊急事態宣言(延長)や社会経済活動の自粛の根拠として強調されていた「医療崩壊」の危機。

 現実には、医療提供体制の状況が大きく改善されているとみられるが、厚生労働省、東京都、メディアが正確な情報を出していないことが浮き彫りになったと言える。

(訂正)当初、厚労省の発表資料で、東京都の病床数が3300確保されたのは5月8日時点と記していましたが、資料の注釈に5月11日時点と書いてあるのを見落としていたため、訂正しました。緊急事態宣言延長前の5月6日の入院患者数が当初発表より約半分と大幅に少なかったという事実を左右するものではありません。

(*1) 資料にはそれぞれ、4月28日0時現在、5月7日0時現在と書かれている。

(*2)5月7日発表資料8日発表資料を比較のこと。

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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