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映えポーズやおしぼりの手渡し……飲食店の「いらないサービス」は? 断トツで多かったのは賛否両論のアレ

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

飲食店のいらないサービス

飲食店はおいしい料理やドリンク、居心地よい空間や感じのいいサービスはもちろんのこと、客に喜んでもらえるように、色々なことを考えています。

誕生日や記念日など特別な日の特典、ライスやスープ、サラダやコーヒーなどのお代わり、ディスカウントクーポンや無料チケットの配布、メンバーズカードやスタンプカードの作成、フリーWi-Fiや充電できる電源やUSBの設置などが挙げられます。他にも、名前を覚えてくれていたり、前回とは違う内容にアレンジしてくれたり、VIP用に内容をアップグレードしてくれたりするのも、客にとっては嬉しいサービスといえるでしょう。

少し前にThreadsで、これとは反対に“嬉しくないサービス”について、盛り上がっていました。その投稿とは次の通り。

飲食店のいらないサービス第1位
お願いします

返信には、飲食店で必要のないサービスが挙げられていました。

どれも客からの目線で大変興味深いです。

言葉遣いや言動

飲食店のサービススタッフや調理スタッフとの会話に対する指摘です。

「空いてるお皿お下げします」
急かされてる感
急かされてるんだろうな…

空いているお皿を下げる時に、声を掛けない時もあります。ただ、意図せず、客が動いてぶつかってしまうこともあるので、声を掛けるのがベターです。コースであれば皿を下げなければ次の料理を出せないので、食べ終えたら下げられます。ただ、コースではなくても、皿の数には限りがあるので、食べ終えたら下げられるのは仕方ありません。

料理運んでくる度の「ごゆっくりどーぞ」
マニュアルにあってきちんと守ってるんだろうけどもw

「ごゆっくりどうぞ」が添えられるのは、オーダーした料理が全て運ばれて来た時が一般的です。コースであれば、最後のコーヒーの時にいわれます。お皿を下げる時に、退店を催促していないことを伝えるためにも、意味のある一言です。

料理の味がどうだったか聞いてくるのも、「おいしかったです」以外の返答できないからいらないですね。

シェフやサービススタッフが「お味はいかがでしたか」と聞くのは、客に対する挨拶のようなものです。自分の伝えたいことだけを話し続けるシェフやサービススタッフに比べれば、よいと思います。単なる挨拶なので「おいしかった」とだけ返せばよいですし、あまりおいしくなかった時に、こういう方が好みだったと正直にフィードバックしても全く問題ありません。

所作や振る舞い

飲食店スタッフの所作や振る舞いについてです。

マニュアルで否応なしにタイミング無視でおしぼり広げて渡される事。
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おしぼりの手渡し!

ファインダイニングでは、おしぼりが提供されることがほとんどで、手渡しになっていることが多いです。カジュアルな業態でも、ホスピタリティを重要視していれば、手渡ししていることがあります。料理の開始や、手を使う料理が提供される時、コースの一区切りの時点など、おしぼりが出されるタイミングは決まっているので、マニュアル化された印象を受けるのは仕方ないかもしれません。

注文の復唱

基本的に、よほど雰囲気を重視しているファインダイニング以外では復唱が必要です。特にオーダーミスが多いアラカルトでは、復唱を必ず行うべきです。面倒に感じられたとしても、オーダーミスが生じてしまえば、店にとってだけではなく客にとっても非常に残念な食体験となってしまいます。そうならないように、言い間違い、聞き間違い、勘違いがないか、復唱時のオーダー確認は重要です。

トイレ

トイレについての言及も少なくありませんでした。

便所に咲く専門の花
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トイレの間接照明

よい飲食店はトイレにも目が行き届いています。ファインダイニングであれば、1人客が入るごとにトイレチェックをするくらいです。花を飾って心を和ませたり、ムーディーなダイニングと一貫性をもたせるために間接照明で雰囲気をつくったりするのも、飲食店の工夫となります。

トイレ行く時の
行ってらっしゃーい

トイレに行きたい時、スマートに案内されることの方が多いです。私はこのような掛け声を聞いたことがなく、かなり稀なことではないかと思います。

過剰サービス

店外に出てきて見えなくなるまでおじぎ

退店する際に、挨拶に来てもらうのは嬉しいですが、見えなくなるまで見送ってもらうのは、申し訳なく感じられたり、大袈裟に思えたりすることもあります。ただ、ファインダイニング、それも客席数が少ないところでは、シェフや店主が店頭に立って最後まで見送るのが一般的です。客によっては、最後までしっかり見送りに来なかったと不満を述べる人もいます。客単価の高い店では、こういったお見送りも、価格に含まれていると思った方が、気が楽かもしれません。

椅子を引いてくれて座らせてくれるやつ
タイミング怖くてオドオドします

しっかりとした造りのファインダイニングの椅子や、隣客との距離が近くて狭いカウンター席は、椅子を動かしづらいです。下手に椅子を動かすと余計な騒音も発生してしまうので、スタッフがサポートしてくれます。椅子が足に触れたあたりで腰を下ろすと上手く座れますが、心配なら後ろを見ていても全く問題ありません。左から座るというマナーもありますが、店の造りによるところが多いので、座りやすい方からでよいです。

「お取り分けのお皿をお持ちしましょうか?」のひとこと。取り分けるつもりがない場合、気まずいです

※入稿できないので顔文字は削除しました

2人以上のテーブルでは、ポーションが大きい料理だと、何もいわなくても、取り分けの皿を持って来てもらえます。一人前を想定した料理であれば、シェアしたいと伝えない限り、取り皿は持って来てもらえません。取り皿が供されても、全て使う必要はないので、気まずいようなら、あとで取り皿を下げてもらえばよいでしょう。

撮影

飲食店での撮影に関するものもあります。

インスタ映えを狙ったダサい提供ポーズ 主に寿司屋

鮨店もだいぶ変わりました。高級鮨店では、職人がカウンター越しに握ってくれるだけに、見栄えが非常に大切。SNSに投稿するかどうかは別として、写真や動画を撮りたい客も少なくないだけに、店が意識するのも当然のことです。

動画とりますか?と、店から言ってくる

Instagramを意識した飲食店は、撮って拡散してもらいたいと思っています。撮影したい客にとっては気兼ねなく撮れるので安心ですが、撮影しない人にとっては自分も撮らなければならない雰囲気となるので、戸惑ってしまうかもしれません。

お通し

断トツで言及が多かったのは、よく賛否両論となっているお通しです。

お通し、おしぼり開封渡し…
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お通し
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付き出し
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居酒屋のいらねぇ〜しょぼい付き出しやね!

お通しは日本の居酒屋文化のひとつだと感じているので残念です。ただ、その押し付け感や不透明感のせいで、いらないという声が多いのであれば仕方ありません。飲食店と客は対等の立場であり、飲食店は客を、客は飲食店を選ぶことができます。多くの人から不要だと指摘されているのであれば、一考の価値があります。

その他

これまでの分類に属さない意見です。

紙ストロー。飲み物の味を損ねるだけ…。

SDGsを意識した店では、プラスチックではなく、紙のストローが提供されることがあります。プラスチックに比べると、味わいもテクスチャも気になるところがあるので、敬遠する人も少なくありません。ただ、紙ストローの価格は高く、プラスチックストローの3倍くらいです。それでもあえて導入している飲食店であれば、料理やインテリアなどについても、全体的にSDGsを大切にしていることでしょう。飲食店と客のミスマッチかもしれません。

サービスではないけど
客に聞こえる声で若いスタッフに説教

客は飲食店で楽しい食事をするために訪れています。そのような時に、誰かが叱られているのを聞きたいはずはありません。特に最近では、飲食店の労働環境もだいぶ改善されているだけに、かなりマイナスであるといえます。

長くて口に出すには恥ずかしい料理名

料理は飲食店の大切な商品なので、当然のことながらその名称も非常に重要です。それだけに、料理名にはシェフなど店のこだわりがかなり表れます。モダンガストロノミーでは、調理方法が高度化・融合化してきているので、食材名しか記されないことが多くなってきましたが、一般的ではありません。むしろ、擬音語を用いたり、概要も加えたりする長い料理名の方が多いです。料理名はその店の個性だと思って、受け止めるのがよいのではないでしょうか。

いらないサービス

“いらないサービス”として、最も多かったのは、お通しに関連するものでした。お通しに限らず、飲食店がよいと思っていながらも、客が疑問に感じているサービスがあります。

サービスは、受け取る相手が喜んでこそ、意味があるもの。お金を支払ってもらう客商売であれば、なおのことです。指摘のあったサービスをすぐに廃止する必要はありませんが、客の反応を見ながら今後どうするか、飲食店に考えていただければ幸甚です。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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