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男児用水着ーどんな水着を選べば安全か? 消費者の声を聞く

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
記事の内容とは関係ありません(写真:Paylessimages/イメージマート)

 2021年7月16日、国民生活センターの報告を受け、「リコールされた男児用水着や足入れ付き浮き輪が、今も販売されている!-夏の子どもの安全のために」という記事を出した。

 その後、Safe Kids Japanの会員から、次のような声が寄せられた。

うちの子の水着は大丈夫?

 ある会員から、自身の子どもの水着の写真(下)と共に、「この程度のメッシュであれば大丈夫でしょうか?」という質問が寄せられた。写真を見たところ、網目が細かく、メッシュというよりニットなので、「これは大丈夫でしょう」と回答した。この会員は、「国民生活センターの発表にあった水着の写真を見ても違いがわからず、どちらが良いのかわからなかった」と話していた。

Safe Kids Japan会員から送られてきた男児用水着メッシュ部分の写真
Safe Kids Japan会員から送られてきた男児用水着メッシュ部分の写真

保育園の保護者に資料を配布したところ・・・

 保育園の園長をしている会員からは、「国民生活センターの発表資料を印刷し、保育園の保護者に配布しました。ところが、その資料を持って水着を買いに行った保護者から、『資料には「インナーにメッシュ生地を使用した水着を子どもに着用させないようにしましょう」と書いてありますが、どの水着にもメッシュが付いていました』『どれを買っていいかわからないので、結局買えませんでした』と言われました。もう少し違いがわかりやすい画像はないでしょうか?」という質問があった。

消費者団体に相談してみた

 このような声を受け、「子ども服の安全」分野で共に活動しているNACS(公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 東日本支部)の「標準化を考える会」の皆さんに相談してみた。同会にも同じような声が寄せられているそうで、「検討している段階でまだ結論は出ていない」とのことだが、下記のようなアドバイスをいただいた。また、本件に詳しい人からもコメントをいただいたので、あわせて紹介したい。

◆ 国民生活センターでも穴の直径で線引きをすることを検討したようだが、数値を示すことができなかったため、「目で見て穴が分かる」という表現にしたのではないか。

◆ 「ニット生地なら絶対に安全」とは言えず、「穴のサイズは2ミリまで」というのもあくまで目安であり、明確な基準ではない。

◆ 消費者の皆さんは基本的に「メッシュのものは買わない、着せない」というメッセージが現時点では妥当なのではないか。

◆ (過去の事例を受けて)国内繊維業界として安全に配慮、改良してきた経緯があり、現在、店頭で売られている製品は改良型が多い。しかし、過去に売られていたもの、インターネット販売されているもの等には危険な製品が混じっているのが現状である。

◆ 危険と安全を明確にわける規格やバックデータが公開されていない現在、消費者が今すぐできることとして、手元にある水着の穴の有無、大きさを確認することが挙げられる。たとえば、一般的な直径1.8mmのパスタがメッシュの穴を通るようであれば、危険なサイズの可能性がある。

保護者向けの動画

 NACS「標準化を考える会」では、国民生活センターによる発表前からこの問題に注目され、消費者に向けた動画を制作、注意を呼びかけていた。2021年7月14日に公開された動画はこちらである。

メッシュ付き水着の穴・サイズ注意!

 その後、上記のような消費者の声を受け、続編を制作した。

どうして危ない?メッシュ水着・簡易チェック

制作者註:「ストッキングタイプ」「鹿の子メッシュ」という製品名があるわけではない。メッシュの穴の明らかな大きさの違いに着目し、混乱を招いている部分に対して、補足説明する意図で作成した。

消費者に向けた「報告」「発表」の課題

 今回、国民生活センターから出された報告は、わかりやすく、よくまとまっていると思った。しかし上記のような消費者、保護者の声を聞くと、本当に役に立つ情報だったのだろうか、という疑問が湧いてきた。

 消費者、特に仕事や子育てに追われる保護者に対するメッセージは、短ければ短いほど良く、「目」や「耳」に訴えて印象に残るようなものが有効である。そういう意味で、今回NACSが制作した動画は大変すぐれている。もちろん制作者のセンスもあるが、やはり消費者の声を直接聞いている、という点も大きいだろう。行政の担当者にはぜひ参考にしてもらいたい。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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