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虐待されて殺処分寸前だったアンズちゃんがお手柄。トイプードルも警察犬になれる?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
TBS NEWS GIG Powered by JNN より

水戸警察署は、、行方不明になった高齢女性を見つけ出したとして、 警察犬指導士の鈴木博房さんと嘱託警察犬のアンズ(トイプードル、雌10歳)ちゃんに感謝状とジャーキーを贈ったと、茨城新聞クロスアイが伝えています。アンズちゃんが感謝状を贈呈されるのは3度目だそうです。

警察犬はジャーマン・シェパードのイメージが強いですが、アンズちゃんはこんなかわいいトイプードルなのです。そのうえ虐待され殺処分寸前の犬だったということなのです。アンズちゃんのいままでの歩みを見ていきましょう。

アンズちゃんは、虐待を受けていた

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アンズちゃんの過去を知らない人は、トイプードルは、賢い犬なので警察犬になることもあるよね、と思うかもしれません。しかし、アンズちゃんは、生後3カ月で、飼い主に飼育放棄されているのです。

たまたま鈴木さんが、2013年3月、所用で立ち寄った動物指導センターで元飼い主が遺棄するところに遭遇しました。

「この犬、もういりません!どうしてもらってもけっこうです」

と、声を荒らげる男性がいたそうです。元飼い主は、鳴いてうるさい、オシッョコもできないなどの理由で遺棄したそうです。

当時、アンズちゃんは、3カ月の子犬でブルブルとふるえていたそうです。センターに持ち込まれたペットは、殺処分になることが多く、鈴木さんは、とっさに飼いますと言ってしまったそうです。

鈴木さんは、トイプードルなので飼いやすいし誰かに譲ればいいかな、と当初は考えていたらしいです。

ところが、鈴木さんのところに引き取った時、アンズちゃんは布団の中に入って顔だけ出して遊ばなかったようです。アンズちゃんは、元飼い主に叩かれていてそのトラウマを持っていたのです。

鈴木さんは簡単に人に譲ることができないと思い、アンズちゃんを愛情を持って育てました。保護され4年も経っていても、顔の前に新聞紙の丸めたものを上下させるだけで、ビクビクするような恐怖心を持っています。(虐待されていない犬は、平気な顔して怖がりません)。

こんな犬が、警察犬になり人命救助に当たっているのです。

アンズちゃんが警察犬に

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鈴木さんは、アンズちゃんを人に対して警戒心が強すぎて、なかなか人に譲れないと思い、家で飼うことを決心しました。鈴木さんは、アンズちゃんを人が集まるところに連れ歩いて犬好きな人に事情を説明して、触れてもらっい人間に対する恐怖心をなくしていったそうです。

上の動画を見ると、ジャーマン・シェパードと並んで、アンズちゃんは、警察犬に任命されています。本当にアンズちゃんは立派に育ちました。

それでもやはり警察犬はジャーマン・シェパードの方がいいのではないか、と考えるかもしれません。

しかし、アンズちゃんのような小型犬は、以下のように大型犬ではないメリットがあります。

・狭い場所に入っていける

・地面と鼻が近いので、小さなものを捜索できる

・今回のように行方不明者が、トイプードルのようなかわいいい犬を見ると心が和み恐怖心を抱きにくい

鈴木さんのところには、ジャーマン・シェパードの警察犬もいるので、一緒に捜索活動をしているそうです。

アンズちゃんが教えてくれたこと

犬がいうことをきかないで鳴いたりトイレを覚えなかったりするとイライラする飼い主もいるでしょう。そんなとき、アンズちゃんのことを思い出してほしいのです。

アンズちゃんは、幼い頃の虐待から人が怖いというトラウマを持っていましたが、いまではそれを克服して、警察犬になり人命救助までしてくれているのです。鈴木さんは警察犬指導士の技量ももちろんですが、当初はおびえていたアンズちゃんは、鈴木さんが育成するジャーマン・シェパードのグリム(雄、11歳)ちゃんに懐(なつ)き、次第に明るさを取り戻したそうです。

アンズちゃんを見ていると、やはり、愛犬が思うように行動してくれないというのは理由があり、飼い主がそれを懸命に克服できる愛情があることが大切です。アンズちゃんが、虐待を乗り越えて、警察犬として活躍をしている様子を知ると胸が熱くなります。

もし、愛犬を思うようにしつけができない場合は、犬の訓練士や警察犬指導士などの専門家に相談することをおすすめします。犬の性質を知って、愛情を込めて飼っていただきたいものです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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