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「選手が自ら考えることが大事」元浦和レッズのエスクデロ競飛王の指導論

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:アフロスポーツ)

 2005年に浦和レッズでプロデビューし、韓国の強豪、FCソウル、中国の江蘇国信舜天足球倶楽部、京都サンガ、蔚山現代FC、栃木SC、チェンマイ・ユナイティッド、エルサルバドル1部リーグのアトレティコ・マルテと渡り歩き、オーストラリアのバンユール・シティ、今季は同国3部リーグのノース・ギーロング・ウォリアーズでプレーするエスクデロ競飛王が、<サッカーを指導する折に大切な事>について語った。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 「京都にいた2016-2017年のシーズンくらいから、後輩を成長させたいと考えるようになりました。自分が中堅からベテランに近付くにつれ、これまでの経験を伝えたいなという気持ちが芽生えたんですね。

 絶対にポジションを獲られない自信があったし、今もそうです。その自信がなくなったら、サッカーを止めて、指導者になります。出ている選手に歯がたたない、そうなったら終わる時ですね。

写真:アフロスポーツ

 僕は日本人ですから、日本がワールドカップ優勝することを心から願っています。そのために、敢えて述べますが、まずビギナーの課題として、小学生が最初から大きいコートで9対9でやるのが問題だと思うんですね。あれでは伸びない。上手い子はボールを触れるけれど、下手な子は試合中に1回か2回しか触れないですよね。

 アルゼンチンでは、この年代、GKを入れて6×6のベビーフットボールをやります。6×6ならボールを触るし、足裏も使うし、ボディコンタクトもあるんです。アルゼンチンで基礎は、自分で死ぬほどやってマスターするんです。蹴り方、止め方、リフティングとか。インサイド、トーキック、インステップ、足裏で抜くとか、全部自分で身に付けます。所属チームでは、ゲームとか、シュート、1対1、体の使い方、そういうメニューが練習ですね。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 また、日本の監督で怒鳴ったり、怒ったり、罰走を命じる人がいますが、怒ったって変わらないんですよ。本人が気付かないと。何故、このメニューをやるのかを理解させてやらないと。日本の選手は教えられたことは出来ます。でも、日本の教え方だと、普通の選手しか生まれないでしょうね。

写真:アフロスポーツ

 僕が未経験者を教えるなら、質問を投げかけます。インステップのボレーなら足首をロックして、膝をちょっと上げてヒットする。ロックした方がいいかな、どうだろう? キミはどう感じる? って訊きますよ。

 あるいは、『1対1の時に必要なものって何ですか?』って。仮にゴール決める事だという回答だとしたら、『そのために何をしたらいい?』と。DFを躱すって答えが返ってきたら、『そうだよね。どうやって躱す? じゃあ、やってみよう』『どうだった? 考えてやった?』『なぜ、抜けないの?』『スピードチャンジした?』『してなかったら抜けないよね。緩急をつけた後にもう一度フェイントをかけるのか、空いた瞬間にシューッと打つのとどっちがいい?』『試合中にもう一度フェイントかけたら、どうなる?』『DFがより多く入って来るならどっちがいいの? シュートを打った方がいいね』という感じで、可能な限りクエスチョンを投げかけます。

写真:アフロスポーツ

 従うだけじゃなく、自分の頭で考えないと、選手は伸びません。僕の経験では、レベルの高いところって、そういう会話がありました。監督が『俺はこうしたい。でも、お前らはどうなんだ?』と質問してきました。中国でプレーしていた際、ルーマニア代表で94年のW杯に出たぺテレスク監督は、物凄く質問を浴びせてきました。もちろん「〇〇してほしい」っていうのは彼の中であるんです。でも、選手が出来るか否かは別の話ですよね」

写真:アフロスポーツ

 ~徹底的にプレーヤーに考えさせる指導~

 エスクデロ競飛王の言葉は、日本の指導者に欠けているものを指し示しているように感じる。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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