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「LINE電話」「楽天でんわ」「イオンの格安スマホ」は「スマホ貧乏」を救うか?

横山信弘経営コラムニスト

営業・マーケティングのコンサルタントをしていると、ビジネスモデルをいろいろな角度で眺められるようになります。よくビジネスモデルを構築するうえで「お客様のニーズにどう応えるか?」というフレーズを聞きますが、そのような表面的な発想でビジネスを考えている企業人はごく一部です。消費者の皆さんは、そのような言葉に踊らされず、ビジネスモデルを見つめる目を養う必要がある時代になってきたと思います。

モノがあふれる時代。「お客様のニーズ」といっても、無理やりその「ニーズ」とやらを企業側が作っていかないと企業の業績を下支えすることは不可能です。この時代の中でいかに儲けるか、稼げるかを企業は考えています。きわどい方法で、うまく儲ける方法を次々と考案し、世に出しているのが現実です。

スマホ契約に代表される「レ点ビジネス」は儲かる仕組みで書いたように、保険や携帯電話、電力、ガスなどのストック型ビジネスで「スイッチングコスト」を高くすると、とても高い収益モデルを構築することができます。ですから、こういったストックビジネスの営業は成果報酬型になっていることが多く、営業成績を高めて多くの報酬を得ている営業も、世の中には多数存在します。

企業、個人の営業にとっては良いことですが、消費者サイドに立つと、いかがでしょうか。「スイッチングコスト」が高いということは、一度契約するとなかなか他のサービスにスイッチすることができないということです。解約するのに「解約手数料」が発生する、長く契約していたメリットが失われる、他のサービスに移行する際に大きな手間がある、と知ると、

「今のサービスのままでいい」

と思うようになり、結局、スイッチすることなく「泣き寝入り」する消費者が出てきます。このような「泣き寝入り」の消費者によって企業が高収益を上げているとしたらどうでしょうか。「お客様のニーズ」どころではありません。消費者にとって望ましい姿になっているとは言い難いと言えます。

現在、最も身近なストックビジネスで、とりわけ「スイッチングコスト」が高いものは「スマートフォン」です。スマホの月額料金は、平均「6785円」と言われています。(7000円を超えるという調査結果もあります) 携帯電話が全盛のときよりさらにユーザー負担は上昇しており、家族で3人がスマホを所有していると月額2万円を超えることになります。年間24万円。4年で100万円に達する金額です。

普通の人の人生における最も高い買い物は「マイホーム」。その次が「保険」と言われています。月額や年払いで考えると、それほど高額には思えないかもしれませんが、ストックビジネスのお客様になると、知らぬ間に膨大なお金を支払っていることになります。「スマホ」もそうです。使い方によっては「保険」よりもお金を使うことになるかもしれません。

しかも前出のコラムに書いたとおり、いろいろなオプションに加入させられ、解約を忘れていたりすると、負担はさらに増えます。ショップ店員の言いなりで必要のない機能を付加し、歌をダウンロードし、ゲームで遊び、電子書籍を読んでいたりすると、いつの間にか「スマホ貧乏」一直線です。この「いつの間にか」というのがクセモノなのです。消費者が意識することなくお金を支払っている事実にもっと目を向ける必要があります。しかも4月1日から消費税が8%にアップしました。「スマホ貧乏」の人の負担は、雪だるま式に増えていきます。

スマホビジネスに絡む企業が軒並み好業績をあげているのを見ても明らかです。このビジネスは儲かるのです。というか、儲かりすぎています。

そして、儲かりすぎるビジネスのお客様になると「貧乏」になる、と肝に銘じましょう。

スマホで利用できる低額の通話サービス、「LINE電話」や「楽天でんわ」はこういった「スマホ貧乏」の救世主となり得ます。「LINE電話」や「楽天でんわ」はスマホにアプリをダウンロードして、使いたいときに使うサービスです。そのため「スイッチングコスト」がゼロ。さらに3月末、イオンが月額2980円(端末と通話料金)の格安スマホの発売を発表しました。

それぞれ似たようなサービスは以前から存在しますが、知名度の高いLINEや楽天、イオンといったビッグネームが市場へ参入することにより、スマホ関連の料金引き下げ効果を促すことは間違いないでしょう。

月額7000円が3500円と半額になっただけで、年間42000円節約できます。1世帯に3人同額の節約ができれば、12万6000円の節約です。毎月1万円の収入があったと受け止めることもできます。ショップ店員の言いなりでスマホ契約をするのではなく、少し工夫するだけで「スマホ貧乏」にならずに済むかもしれません。

私は営業・マーケティングコンサルタントですから、企業側に立ってこういったビジネスを仕掛けるほうです。しかし昨今のスマホビジネスは、コンサルタントの立場からしても、少々「儲かりすぎ」だと感じています。スマホビジネスに群がる企業は、いずれ下降ラインを辿る可能性があるので、今からリスクマネジメントをしていただきたいと私は思います。これだけ高収益のビジネスモデルは長続きしないものなのです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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