米国が支援する反体制派戦闘員がシリア政府支配地域に脱走、その真相は?
反体制派戦闘員が政府支配地域に脱走
反体制系サイトのドゥラル・シャーミーヤは、米主導の有志連合が違法に占領を続けるヒムス県タンフ国境通行所一帯地域、いわゆる「55キロ地帯」で活動を続けている反体制派戦闘員が4月15日、シリア政府支配地域に脱走したと伝えた。
複数の情報筋によると、脱走したのは15人で、長らく部族自由人軍(ドゥラル・シャーミーヤは「部族軍」としている)メンバーとして活動していたが、1年半ほど前に革命特殊任務軍に移籍していた。
部族自由人軍、革命特殊任務軍は、イスラーム国に対する「テロとの戦い」を口実にシリアに軍事介入する米国が支援してきた「協力部隊」(partner-force)。
「ハマード浄化のために我らは馬具を備えし」作戦司令室、自由シリア軍砂漠諸派、「土地は我らのものだ」作戦司令室など、さまざまな連合組織を名乗って連携を続けている。
シャームFMが配信したビデオ映像には、戦闘員を乗せた軍用車複数輌がヒムス県の政府支配地域内に入る瞬間が映し出されている。
これに関して、55キロ地帯情勢を詳しく報じている反体制系サイト(フェイスブック・アカウント)のハムラビ通信の管理人ハーズィム・サッルーム氏は、脱走した戦闘員が、この地域で麻薬密売人として知られ、2018年から革命特殊任務軍が監視対象としていたガンナーム・ハディールの一派だと主張した。
サッルーム氏によると、ハディールはレバノンのヒズブッラーと連携して麻薬を密売しており、革命特殊任務軍は、彼の一派が移籍した当初からその存在に警戒していたという。
サッルーム氏は、脱走がヒズブッラー指導部と連携して、55キロ地帯経由でヨルダンに麻薬を密売していたことを示すものだと強調している。
また、革命特殊任務軍も4月7日にツイッターで、ヨルダンや湾岸諸国に麻薬を密輸しようとしていたヒズブッラーの車輌を取り押さえたと発表していた。
ロシアとシリアは米占領地で新型コロナウィルス感染症対策が行われていないと批判
周辺諸国のシリア難民や国内避難民(IDPs)の帰還を調整・推進しているロシア合同連携センターとシリア国外難民帰還調整委員会は共同声明を出し、米国とその同盟国によるシリア制裁を非難、国際社会に解除に向けた支援を呼びかけた。
共同声明は、米国は、イスラーム国が勢力拡大した時と同様、シリアでの新型コロナウィルス感染症拡大の脅威から目を逸らしていると非難した。そのうえでシリアの「国民もろとも根絶」させようと目指している米国とその同盟国のシリアに対する制裁を解除させるため、シリアを支援するよう国際社会に呼びかけた。
声明はまた、「55キロ地帯」に面するヨルダン国境の緩衝地帯にあるルクバーン・キャンプと、米国の支援を受ける北・東シリア自治局(クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体)の支配下にあるハサカ県のフール・キャンプのIDPsが、感染拡大の脅威に晒されていると警鐘を鳴らした。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)