五輪後もマンション値崩れしない説が急浮上 まだ安い「唯一の穴場」はどこ?
半年ほど先に迫ってきた「東京五輪」。この時期になって急速に広まってきたのが、「五輪後もマンション価格は下がらない」という予測。これまで多くの専門家が言い続けてきた「五輪後にマンション価格が大幅に下がる」を信じた人にとっては、「なんだかなあ」の気分だろう。
「東京五輪後に下がる」と言われ出したのは、2015年くらいから。下がる、下がるといわれてきた間、都心を中心に新築マンション価格は逆に上がり続けてしまい、購入のチャンスを逃した人は少なくない。そのうえで、「五輪後も下がらない」と言い出されると、まさに「なんだかなあ」である。
都心から始まったマンション価格上昇は、準都心エリアを巻き込み、郊外エリアにも波及。千葉県内で都心から離れた千葉市内や柏市内でも新築マンション価格の上昇と、面積の圧縮が見られるようになった。3000万円台で購入できた3LDKが4000万円台になり、70平米以上あった3LDKの面積を60平米台まで圧縮する動きも広まっている。価格が上がり、狭くなれば、大幅な価格上昇ということになる。
この時期、首都圏でまだ安く、まだ広いマンションを購入できるところはないか。探してみると、「唯一、ここなら」と考えられる場所があった。埼玉県で埼玉高速鉄道の浦和美園駅周辺エリアだ。
3000万円台で、つくりのよい新築3LDKが購入できる理由
浦和美園駅周辺では、大規模マンションが複数分譲されている。その価格設定は、3LDKが2000万円台後半から。といっても、それは特別安い住戸で、メインになるのは、3000万円台で購入できる70平米台の3LDK。4700万円台で購入できる90平米の4LDKもみつかる。
そのなかには、最新の住宅設備「エネファーム」を全戸に設置する大規模マンションもある。
現在の首都圏通勤圏のなかにあって、格段に安く、つくりのよいマンションが購入できるわけだ。
なぜ、このような特殊な状況が生まれたのだろう。
浦和美園駅はさいたま市緑区に位置し、埼玉高速鉄道の始発駅だ。同線は東京メトロ南北線に乗り入れているので、駒込駅や飯田橋駅、四ッ谷駅、永田町駅など都心のターミナル駅に乗り換えなしで行ける。駒込駅まで30分の所要時間で、四ッ谷駅へは43分……意外に時間がかかると思われるのは、急行や快速電車がなく、すべて各駅停車であるから(一部電車に「急行」の表示が出るが、埼玉高速鉄道・南北線内は各駅停車)。将来、快速や急行が運行されれば、所要時間は短縮されるだろうが、今はのんびりした路線の印象があるわけだ。
この「のんびり」イメージのためか、浦和美園駅の注目度は低い。それが、マンション価格が抑えられている大きな理由になっていると考えられる。
東京五輪で、脚光を浴びる場所でもある
一方で、浦和美園駅には大きな利点がある。
朝7時台にはほぼ5分に1本の割合で上り電車が出て、始発駅なので座って通勤できる可能性が高い。そして、南北線は都心各地への乗り換え駅が多いのも隠れた利点となる。各駅停車しかなくても、長所のある駅・長所のある路線といえる。
もともと「浦和美園」エリアは、さいたま市の副都心として開発が行われている場所。市内最大の土地区画整理事業が進んでいる「みそのウィングシティ」構想の一画で、美しい田園都市を目指した街づくりが進められている。
すでに、「浦和美園」駅周辺には広い歩道が設けられ、電線を埋設して、電柱のないすっきりした街区がつくられている。電線の地下埋設は、地下に鉄筋コンクリート製の共同溝をつくり、その中に電線やガス管、上下水道管を通すもの。この共同溝が頑丈であるため、大地震が起きても停電や都市ガスの停止、断水が起きにくい。
先進の街づくりが行われているなかに、埼玉スタジアム2002がある。それは、02年サッカーワールドカップ(W杯)に合わせてつくられた球技専用競技場。そのため、浦和美園駅というと、埼玉スタジアム2002に行く駅と認識している人が多い。実際、02年当時は、埼玉スタジアムと浦和美園駅以外は何もない場所だった。
それが、現在は大きく様変わりしている。
06年にイオン浦和美園ショッピングセンター(現・イオンモール浦和美園)がオープンし、大型の公園も整備されて駅周辺に住宅が増えた。順天堂大学付属病院の建設も進んでいる。
ちなみに、埼玉スタジアム2002は2020年東京五輪でサッカー競技の会場となる。
割安に新築マンションが購入できる浦和美園駅周辺は、東京五輪で脚光を浴びる場所でもある。