人類史上最大の宇宙船「スターシップ」2回連続の打ち上げでの爆発を振り返る
2月17日、JAXAの新型国産ロケット「H3」は見事打ち上げに成功しました。一方、アメリカのスペースX社は巨大ロケット「スターシップ」の3回目の打ち上げに向けて着々と準備を進めています。
本記事では、過去のスターシップの打ち上げを振り返っていきましょう。
■スターシップの軌道飛行テストとは?
スターシップの軌道飛行テストでは、まずはスーパーヘビーが点火され打ち上げられます。約1分後には、マックスQと呼ばれる打ち上げ時に生じる機械的ストレスがピークに達する状態を迎え、約3分後にはエンジンを停止します。
その後、不要となったスーパーヘビーは分離され、いよいよスターシップの点火となります。切り離されたスーパーヘビーは、将来的には再利用のためスターベース、または海上の船に着陸を行いますが、今回の試験飛行では海上に着水をします。
一方、高度をどんどん上昇させていくスターシップは、9分20秒後にエンジンを停止し、そこから慣性飛行を行い地球周回軌道へ到達します。約1時間ほどの宇宙飛行を行った後、スターシップは地球への再突入を試みます。機体は再突入時に高温に達しますが、スターシップには耐熱タイルも取り付けられています。
そして、打ち上げから約1時間半後、スターシップは安全のため海に着水し、地球への帰還は成功となります。
■2023年4月、初めてとなるスターシップの打ち上げ!
2023年4月には、1回目となるスターシップの打ち上げが行われています。離陸には成功したのですが、ブースターの切り離しに失敗、残念ながら打ち上げ4分後には地上からの指令で上空にて破壊されています。
その原因として、ブースターの推進剤が漏れたことにより火災が発生し、制御不能に陥ってしまったと考えられています。そして、ロケットの姿勢を制御するシステムにも影響を与えたため、コントロールが効かず機体は回転を起こしてしまいました。
更に、ロケットの途轍もない出力によって、発射台の損傷も確認されています。発射台下のコンクリートが破壊されてしまっており、岩などが巻き上げられてました。これらの岩が機体にぶつかったことにより、エンジンの損傷が発生したことも否定できない状況だったのです。
極めつけには、爆破されたロケットの残骸がSpaceXの施設や近隣地帯に落下しており、ボカチカ州立公園では約1.5ヘクタールで火災が発生しました。粉砕された発射台のコンクリート片は約10kmも離れた場所に飛散しており、近郊の町では灰などの微粒子が降り積もったことが報告されたとのことです。これらのことから、アメリカの複数の環境団体では、スペースXに対して環境対策が不十分だとして、訴訟が起きた程です。
散々な結果となったように見えますが、マスク氏にとっては期待を上回る成果だったとのことです。ロケットは超音速に達し、飛行データやタンクの加圧データなど、たくさんのデータの取得に成功しました。次の打ち上げは是非成功して欲しいですね。
■様々な対策を施した2回目の打ち上げ試験
1号機の打ち上げ失敗から、約半年後の2023年11月、SpaceXは次の打ち上げ試験の準備を整えます。たった数カ月であれ程の大きさのロケットを準備できるのはすごいですね。2号機では、火災を防止するための消火システムを大幅に拡張しているとのことです。
そして今回、発射台の下には巨大な水冷式鉄板が設置されました。1回目の打ち上げは耐火用のコンクリートのみでしたが、今回はエンジンから噴射される火炎を大量の冷却水で受け止めることで、発射台の損傷を守ろうという目的です。こちらもうまくいって欲しいですね。
これらの対策が功を奏し、スペースXはアメリカ連邦航空局(FAA)から打ち上げ許可を取得したとのことです。
■宇宙まで到達成功!しかし直後に爆発!?
そして2023年11月19日、遂に2度目の打ち上げ試験が実施されます。
スーパーヘビーによる点火は成功!ぐんぐんと上昇していき、無事にスターシップが切り離されます。スターシップは地上から150kmまで到達、一般的に高度100kmから宇宙と言われていますので、スターシップは宇宙に達することに成功したのです。
しかし、ここで問題が発生。スターシップとの通信が途絶え、自動飛行停止システムが作動してしまいます。またしても上空にて爆発という結果となってしまったのです。更に、スターシップを切り離してメキシコ湾に着水するはずであったスーパーヘビーも、下降中に爆発しています。
しかし、ミッションの完全成功には完全に至らなかったまでも、1回目に比べれば大きな前進を見せた打ち上げとなりました。
2024年の早い内にスターシップの3回目の打ち上げ試験が実施されるはずですが、次の打ち上げでの成功を皆さんで祈りましょう。
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