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前期挑戦者・菅井竜也八段、今期王将リーグで初白星 相穴熊で羽生善治九段に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月21日。東京・将棋会館においてALSOK杯第74期王将戦・挑戦者決定リーグ▲菅井竜也八段(32歳)-△羽生善治九段(54歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時11分に終局。結果は127手で菅井八段の勝ちとなりました。

 リーグ成績は菅井1勝2敗、羽生0勝2敗となりました。

前期リーグ1、2位の戦い

 菅井八段は前期リーグ、5勝1敗で藤井聡太王将への挑戦権を獲得しています。


 羽生九段と菅井八段は前期のリーグでも対戦し、139手で菅井八段の勝ち。結果的にはこの一局の勝敗が大きく、羽生九段は4勝2敗で挑戦に届きませんでした。


 なんでも指しこなせる羽生九段。前期の菅井戦では相中飛車を採用しました。


 直近の棋王戦本戦トーナメント2回戦(2024年7月)では、菅井八段の四間飛車に対して「ミレニアム」に組み、139手で羽生九段が勝っています。

 本局、先手の菅井八段は三間飛車に振りました。序盤は両者ともに穴熊に固め合う相穴熊に。互いに金銀4枚を玉側に寄せ、堅陣を築きます。

 駒がぶつかり、銀交換がおこなわれたあと、羽生九段は菅井陣に銀を打ち込んで攻めます。対して菅井八段は穴熊を構成する相手の銀と刺し違え、角をすっぱり切ります。

 難しい戦いながら、菅井八段が一足早く羽生陣の穴熊を薄くする展開となり、やがてはっきりとリードを奪いました。

 96手目、羽生九段は飛車取りに角を成り込みます。持ち時間4時間のうち、残りは菅井57分、羽生19分。とりあえずはどこかに飛車を逃げそうなところ、菅井八段は2分少しの小考で、相手の攻めの拠点となっている歩を払いました。これが正確な速度計算に基づく好判断。飛車を取らせる代償に、いち早く羽生陣に迫る一手を得て、優位を確かなものとしました。

 127手目、菅井八段は羽生陣に角を打ち込みます。羽生玉には詰めろがかかり、受けても一手一手の寄せ。対して菅井陣の穴熊は健在で菅井玉は詰みません。羽生九段はここで投了。菅井八段の勝ちとなりました。

 これで菅井八段は今期リーグ初白星。一方羽生九段はまだ白星がありません。両者ともに2敗で厳しい状況ではありますが、まだ挑戦権獲得の可能性が消えたわけではありません。ここからどれだけ追い込むことができるでしょうか。

 同日おこなわれた▲近藤誠也七段(28歳)-△西田拓也五段(33歳)戦は133手で近藤七段の勝ちとなりました。両者のリーグ成績は2勝1敗となりました。

 羽生九段と菅井八段の通算対戦成績は、羽生7勝、菅井10勝となりました。


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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