バルベルデがバルサで思い描く桃源郷。システム変更と新たなクライフイズム。
エルネスト・バルベルデ監督が、期待を上回る成果を挙げているのは確かだ。指揮官は度重なるアクシデントに襲われながら、チームを自分色に染め上げている。
リーガエスパニョーラ開幕から、バルセロナはここまで全公式戦で無敗を維持している。リーガ14試合11勝3分け、チャンピオンズリーグ(CL)6試合4勝2分け、コパ・デル・レイ2試合2勝だ。
22試合負け知らずのバルセロナだが、先のCLグループステージ最終節でパリ・サンジェルマンとマンチェスター・シティが敗れたため、今季欧州で唯一無敗のチームとなっている。
■ボールを握るスタイルは健在
バルセロナに安定感をもたらしているもの、それはポゼッションである。CLでは、6試合を終えてポゼッション率で32チーム中1位の数字だ。
バルセロナ(63%)、マンチェスター・シティ(60%)、セビージャ(60%)、レアル・マドリー(59%)、バイエルン・ミュンヘン(57%)、ボルシア・ドルトムント(57%)、マンチェスター・ユナイテッド(57%)が上位を占める。
ここに、走行距離のデータを加えると、興味深い事実が浮かび上がってくる。ただ、この場合、“走らない”というところに焦点を当てるのがミソだ。
バルセロナの選手の総走行距離(536.266m)は次点のマンチェスター・シティ(603.165m)に大きな差を付け、CLで最も少ない。これは各選手が優れた位置取りでスペースを埋めながら、ポゼッションを高めて試合をコントロールしていることを意味する。
ちなみに、レアル・マドリーは678.672mで、最も走ったのはスパルタク・モスクワ(727.577m)だ。
■4-3-3から4-4-2への移行
ポゼッションスタイルをバルセロナに植え付けたのは、故ヨハン・クライフだ。クライフは4-3-3を基本布陣として、ボールを握りながら相手を仕留める攻撃フットボールでバルセロニスタの心を掴んだ。
選手時代に1988年から2年間クライフの指導を受けたバルベルデ監督だが、ネイマールのパリ・サンジェルマンへの移籍と、ウスマン・デンベレの負傷で、システム変更を余儀なくされた。指揮官は4-3-3から4-4-2へと移行することを決意する。
リーガでは第3節エスパニョール戦、第6節ジローナ戦、第7節ラス・パルマス戦、第8節アトレティコ・マドリー戦、第9節マラガ戦、第10節アスレティック・ビルバオ戦、第11節セビージャ戦、第12節レガネス戦、第13節バレンシア戦、第14節セルタ戦で、4-4-2が採用されている。
その戦績は、7勝3分け。バルセロニスタに有無を言わせぬ数字を残して、バルベルデ監督は新布陣の基礎を固めた。
■22試合で14選手が得点
バルベルデ監督がもたらした変化は、システムに限らない。
過去3シーズン、バルセロナは攻撃面でリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールに依存していた。昨季のリーガにおいては、116得点のうち、78得点が「MSN」によって記録された。
だが今季は異なる。メッシ、スアレス、パウリーニョ、デニス・スアレス、ジェラール・デウロフェウ、パコ・アルカセル、アンドレス・イニエスタ、セルジ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバ、セルジ・ロベルト、ジェラール・ピケ、アレイクス・ビダル、ルーカス・ディーニェ、ホセ・アルナイスと実に14選手が公式戦で得点を挙げている。
■ペップとは異なるクライフイズム
現役時代、1980年代後半から1990年代前半にかけて黄金時代を謳歌したエル・ドリームチームの一員であったバルベルデ監督の下、クライフイズムは現バルセロナに息づいている。
バルベルデ監督は、現マンチェスター・シティ指揮官ジョゼップ・グアルディオラように、イノベーションを起こしているわけではない。しかしながら多くの選手が得点に絡み、どこからでもゴールを奪えるという意味で、彼はグアルディオラ監督とは別の形でトータルフットボールを体現しているのだ。
バルベルデ監督が描く桃源郷、それはシーズン終了時の戴冠と共に現実となる。