米陸軍にMRCタイフォン中距離ミサイルシステムが納入
12月5日、ロッキード・マーティン社からアメリカ陸軍に中距離ミサイルシステム「MRCタイフォン」が納入されました。このシステムはトマホーク巡航ミサイルとSM-6艦対空ミサイル改造の攻撃型の2種類のミサイルを発射可能な地対地ミサイル車両です。ミサイルのバージョンによっては対艦攻撃も可能です。
MRCタイフォンは海軍の発射システムとミサイルを車載化して陸軍が使用する構想です。構成要素の基幹部分は海軍から譲り受けているのです。
Lockheed Martin Delivers Mid-Range Capability Weapon System to the United States Army
MRCタイフォンは起立式の4連装の垂直発射機(VLS)です。公開された写真はVLSが起立した状態で、キャニスターに封入されたミサイルはVLSには装填されていない状態でした。
そしてこの実物の構造は、先行して公開されていた構想図のイラストと全く同じでした。起立式のVLSの骨組みや天蓋の付き方、起立する方向など特徴が全てそのままです。
VLSを挟んで天蓋の反対側に付いている2本の円筒は、ミサイルをホットランチで発射した際の排炎を吐き出す排炎筒と呼ばれる部品です。
実はこの「海軍艦艇用のMk.41VLSを起立式にして地上のトレーラー車両に載せる」という構想は、2011年にアメリカ海軍が特許で出願していました。
US8266999B1 - Mobile vertical missile launcher
関連記事:アメリカが地上発射型トマホーク巡航ミサイルを試射、INF条約失効後初の実射試験(2019年8月20日)
こうして2019年8月2日のINF条約失効を受けてアメリカ軍の地上発射型中距離ミサイルの開発が始まって、3年後にはもう実戦型車両の納入が始まりました。MRCタイフォンは既に実績のあるトマホーク巡航ミサイルを運用するので開発の手間も掛かりません。
ただしMRCタイフォンで運用可能なミサイルのもう片方のSM-6攻撃型(実質的に弾道ミサイル)については詳細がまだ分かっていません。海軍の資料によると開発中の「SM-6 Block1B」は対艦兵器という記述があるのですが、陸軍の運用構想としては基本的に対地攻撃です。ところが陸軍は海軍のミサイルを改造せずにそのまま使うとしています。