大相撲9月場所開幕「注目は琴ノ若。新商品も楽しんで」商品開発に携わる高崎親方のこだわりと今場所の展望
いよいよ幕が開けた大相撲9月場所。初日は「秋場所」と呼ぶには暑すぎるほどの天気で、館内は熱気がこもっていたが、全日程札止めの大盛況。大相撲人気の高さがうかがえた。そんななか、毎日「スイーツ売店」の店頭に立っているのは、元幕内・金開山の高崎親方。さまざまなグルメの商品開発に携わる親方は、「アイデアはまだまだ出てくる」と力強く語る。今場所の新商品を紹介してもらいながら、今場所の見どころや展望も伺った。
高崎親方が見ているのは「国技館の外」
高崎親方が日本相撲協会のグルメやグッズなどの商品開発に関わるようになったのは、コロナ禍になってからのこと。会話も飲食もできない、ふれあいもない、そのなかでも国技館に足を運ぶお客さんに喜んでもらうために何ができるのか。そんな試行錯誤から生まれたのが、「スイーツ親方」こと広報部長の芝田山親方(元横綱・大乃国)と共に作ったスイーツパンだった。あれからおよそ3年。徐々に飲食が解禁になり、いまではすっかりコロナ前のように国技館のグルメを楽しめるようになった。そこで、高崎親方が目を向けるようになったのが、国技館の「外」だ。
「もういまは、スーパーなどの外のお店で手に入るようなものを作っていきたいと思っています。相撲に興味がない人にも、純粋に『おいしいから』『コスパがいいから』といった理由で、いかに手に取ってもらえるか。正直、別にこれらを買うからって相撲に興味をもってもらえなくていいんです(笑)。相撲協会が監修したものはどれもおいしいなと思って手に取ってもらえたら、それだけですごくうれしい。国技館でも販売していますが、だからこそいろんなスーパーで売っていただいていることに価値があると思っています」
今場所から新しく販売し始めたのは、「ちゃんこおでん」「にんにく味噌」「力水コーヒー」の3商品。それぞれのこだわりを聞いた。
「アイスコーヒーは、力士が実際に土俵で口を清める力水を使ったものです。にんにく味噌は、いつも僕が作っている、昔ながらのレシピのものを商品化しました。おでんはレトルトになっていて、簡単に食べられるのがポイント。こだわったのは、くるまふを入れたことですね」
にんにく味噌については、YouTubeで親方自らがレシピを公開。開発の裏側を垣間見ることができる。
外に目を向けながら国技館の売店にも立つことで、お客さんとふれあい、直接感想や意見をもらえるという利点もある。「全日程完売といっても、土日と平日では客層が違うと感じているので、仕入れの量を調整しています。土日のほうが売れるんです」と、マーケティング戦略にも自ら目を光らせる。しかし、「国技館での僕の使命は終わったなと感じています」ときっぱり。親方の取り組みは、外への発信という第2フェーズに突入している。
高崎親方の注目は「琴ノ若。将来性がある」
「もう外しか見ていない」と笑う高崎親方に、せっかくなので土俵の上にも目を向けていただこう。初日は新大関・豊昇龍が阿炎の長い腕をうまく手繰って「とったり」で下し、霧島が自身の師匠である先代・霧島(陸奥親方)の得意技であった「吊り出し」で翔猿を破るなど、見どころ満載であった。
高崎親方はまず「照ノ富士、伯桜鵬、若隆景といった人気力士の休場が本当に残念です。館内でファンサービスをしている身としては、特にそう思います」と肩を落としたが、今場所の土俵で奮闘する力士たちにエールも送ってくれた。
「みんな15日間ケガなく無事に取り切ってほしいなって、コロナもあったのでまずはそういう思いで見てしまいます。ただ、名古屋場所は錦木や北勝富士が盛り上げてくれましたから、今場所も誰かに活躍して頑張ってほしいです。個人的に注目しているのは琴ノ若。将来性があるなと思います」
親方注目の琴ノ若は、大関経験者である正代に対し、立ち合いから圧力負けすることなく攻める堂々の相撲で白星発進。新関脇として臨む土俵に期待が高まった。
長引く残暑に、力士たちの熱気が相まってまだまだ暑い国技館。足を運ぶ際は暑さ対策を忘れずに、しかし、グルメも土俵も思う存分楽しんでいただきたい。