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PayPayで「資産運用」どういう仕組み? 実際に試してみた

山口健太ITジャーナリスト
PayPayで「資産運用」どういう仕組み?(筆者撮影)

PayPayのアプリ内に、新たな機能として「資産運用」が加わりました。PayPayの残高で証券投資ができるサービスとのことですが、どういう仕組みなのでしょうか。運営会社に確認しつつ、実際に試してみました。

PayPayの残高で資産運用とは?

QR決済で知られるPayPayのアプリに、新たな機能が続々と追加されています。8月2日からは「資産運用」が始まりました。

ホーム画面に並ぶアイコンから「すべて」を押して機能一覧を開くと、「ファイナンス」カテゴリの中に加わっていました。

PayPayアプリに「資産運用」が加わった(アプリ画面より、筆者作成)
PayPayアプリに「資産運用」が加わった(アプリ画面より、筆者作成)

このサービスは「PayPay証券」との連携で実現しており、利用にあたってはPayPay証券の口座開設が必要となっています。

これは少し手間ではありますが、PayPayに登録済みの情報を使うことで申し込みにかかる時間は最短4分。生体認証による本人確認なら、1~3営業日程度で取引可能になるとのことです。

PayPayには似たような機能として「ポイント運用」もあります。こちらはPayPayポイントが相場と連動して増減することを体験できるサービスで、口座開設の必要はありません。

これに対してPayPay資産運用は、PayPayの残高で実際に証券取引ができる、より本格的なサービスといえます。運営会社は「キャッシュレス決済サービス上で有価証券の売買ができるのは国内初」としています。

PayPayの残高には複数の種類がありますが、資産運用に使えるのは銀行口座やフリマの売上からチャージした「PayPayマネー」のみとなっています。

このPayPayマネーでどうやって証券取引ができるのか、PayPay証券によれば、実際の仕組みは以下のようになっているといいます。

・買付時:ユーザーのPayPayマネー残高がPayPay証券側の口座に移り、日本円で有価証券を購入する

・売却時:ユーザーのPayPay証券側の口座から売却代金相当額の日本円が減算され、PayPayアプリ上のPayPayマネー残高が加算される

配当金や分配金についても、同じ仕組みでPayPayマネーで受け取れるとのこと。電子マネーで証券取引というと目新しく感じますが、実際には既存の枠組みの中で実現しているサービスといえそうです。

投資のハードルを下げる工夫も

PayPay資産運用の口座開設をすると、PayPay証券の口座も普通に使えるようになります。あえてPayPayアプリを使う理由はあるのでしょうか。

PayPay証券は、もともとOne Tap BUYという名前で、値がさ株でも1000円から取引できるスマホ証券という位置付けでした。ただ、基本的には自分で銘柄を選べる人向けといえます。

そこでPayPay資産運用では、これから投資を始める初心者に向けて、さらにハードルを下げる工夫が入っています。

まず、選べる銘柄はあらかじめ用意されている6つのコースのみです。たとえば「スタンダードコース」は、米国のS&P500指数との連動を目指すと説明されています。

実際に売買しているのは「SPDR S&P500 ETF」(ティッカーシンボル:SPY)というETFですが、この銘柄を知らない人向けに丁寧な解説もついています。

コースの名前はPayPayのポイント運用のコースと同じ名前になっており、ポイント運用からのステップアップも考慮されている印象です。

あらかじめ用意された6つのコースから選択する(アプリ画面より、筆者作成)
あらかじめ用意された6つのコースから選択する(アプリ画面より、筆者作成)

買い付け金額について、PayPay証券では最低1000円からですが、PayPay資産運用では最低100円からと、さらに小さくなっています。

取引時間はPayPay証券と同じく、24時間可能。米国のETFは株式市場が開いている時間しか取引できませんが、PayPay証券は相対取引によって米国の夜間や休日でも売買を可能としています。

相対取引のため、価格はPayPay証券が提示する金額での売買となります。この価格には為替コスト(片道1ドルあたり35銭)や、取引手数料(時間帯によって0.5%〜0.7%のスプレッド)が含まれると説明されています。

実際に、土曜日にスタンダードコースを100円分買い付けたところ、評価額は98円となりました。すぐに売ってしまうと、2円の損になります。頻繁に売買するのは避けたほうがよさそうです。

価格には手数料などが含まれるため、100円分を買い付けると評価額は98円となった(アプリ画面より、筆者作成)
価格には手数料などが含まれるため、100円分を買い付けると評価額は98円となった(アプリ画面より、筆者作成)

「貯蓄から投資へ」PayPay経済圏で本格化するか

PayPay経済圏では、買い物などで獲得したポイントを運用して投資を体験し、そこからPayPay資産運用、PayPay証券へと段階的に進む人が増えそうです。

将来的に給与のデジタル払いが実現すれば、PayPayマネーで給与を受け取り、そのうち一定額を投資に回すといった使い方も見えてきます。

ただ、長期的な資産形成を考えるとNISAやiDeCoといった制度を活用したいところですが、PayPay資産運用、PayPay証券ともにまだ対応していません。相場の上下を気にせず続けていくには、「積み立て」機能もほしいところです(こちらはPayPay証券では可能)。

今後、このあたりの機能が充実していけば、PayPay経済圏で「貯蓄から投資へ」の流れが本格化するかもしれません。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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