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葬祭では黒マスク着用?:マスクとコロナとマナーの社会心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:マスクもいろいろ、人もいろいろです。(提供:kikuko/イメージマート)

<新型コロナにより、様々な新マナーや新ルールが登場。どれが正しいか、わからない。でも、マナーもルールも、みんなの健康と幸せのために活用したい。>

■葬祭では黒マスク着用?

葬儀では、白いマスクではなく黒いマスクをするのがマナーという変な話が出回っています。

コロナ禍での、マスクに関する話題は尽きないものです。

葬儀のマスクに関しては、専門家もツイートしています。

まあ、葬儀だからといって黒いマスクをしなければならないことは、なさそうですね。

葬儀だからといって、黒い包帯や黒い眼帯をしている人は、いませんからね。

■マナーとは

マナーは、規則や決まりとは違います。文化により、時代により、地域や状況により違ってきます。

「赤い自家用車で葬儀に行くのは控えましょう」という人もいますが、真っ赤なランボルギーニに乗って葬儀会場に来られる御住職もいらっしゃいます。

あるマナーの先生がおっしゃっていたのですが、マナーは流派のようなもので、同じ時代同じ文化の中でも、いろいろあるものだそうです。

そう考えれば、意見が異なっても、対立しないですみますね。

マナー違反とは、多くの人にとって不快と感じられることでしょう。葬儀に赤いパーティードレスで来たり、結婚式に黒い喪服で来れば、不快に思う人は多いでしょう。

■マスクのマナー

現代のようなマスクは、大昔はありませんから、伝統的なマナーはありません。一般的には、人前に出る時や接客の時は、マスクを外すのがマナーでした。半年前までは。

今は、接客時もマスクをするのはマナー違反ではなくなりました。むしろ、マスクをしていない方が、マナー違反と考える人も増えたでしょう。

新型コロナの感染予防としてのマスクですが、そうではなくても、マナーとしてマスクをするべきだという雰囲気が広まっています。

ただ、どのようにマスクをするのかは、人々の意見や感覚も揺れています。

今は熱中症の危険もありますから、屋外で距離が取れる時はマスクを外しましょうと言われていますが、不快に思われることを心配してマスクをつけている人もいます。

ビジネスシーンでは、白いマスクがマナーであるという考えもありますし、悪目立ちしなければ良いという考えもあるようです(社内にも柄マスク族が続出…ビジネスマナー違反にならない?)。

■マスクと規範意識

「〜すべき」「〜してはいけない」という考えを、規範意識と言います。法律だけではなく、様々なことを含みます。葬儀にわざと白いネクタイをしてきたら、そんなことはするべきではないと、関係者は怒るでしょう。

規範意識には、「命令的規範」と「記述的規範」の2種類があります。

「命令規範」とは、「○○すべし」と感じる感覚です。絶対的なものと人々が感じるものです。「コロナ感染で入院している人は勝手に外出してはいけません」という考えです。

一方、「記述的規範」はみんなが実際にどうしているのかということから生まれる意識です。本当は、ここではマスクは要らないと思うのだけれど、みんながしているし、自分もマスクしないとダメかなと感じる考えです。

マスクをするかしないか、どんなマスクをするのか、人は様々に考えます。

■日本人がマスクをする理由

先日、日本人がマスクをしているのは、感染防止ではなく、「皆が着けているから」という社会心理学の研究が発表されました。同志社大学の研究で、「感染防止」とマスク着用頻度はほとんど関連がなく、圧倒的な理由が「みんなが着けているから」でした。

どんな理由でも、マスクをする方が良いという考えもあるでしょう。しかし、単に「みんなが着けているから」という理由だと、外して良い時もマスクが外せません。

周囲の目を気にしているだけだと、正しいマスクの使い方ができません。

結果的に、熱中症の危険が増したり、マスクの効果が薄くなることもあるでしょう。

マナーとか、人の目を気にするとか、大切な場面もあるのですが、健康に勝るものではないでしょう。

■新型コロナのマナーと規範と新しい生活様式

感染予防と健康第一が守られている限り、マスクのおしゃれも良いでしょう。洋服とマスクのコーディネートを楽しむ人もいます。故人のことを思い、葬儀に黒いマスクで参列するのも良いでしょう。

コロナと共に暮らすためには、新しい生活様式も大切です。

けれども、いずれにしても、それは自分で自分の行動に気をつけるためのものではないでしょうか。

様々な理由でマスクができない人もいます。様々な理由で県外に出る人もいます。ソーシャルディスタンスが取れない時もあるでしょう。

新しい生活様式によれば、「買い物は1人または少人数で、すいている時間に」ですが、守れない時もあるでしょう。

社会的迷惑行為は、たしかに困ります。けれども、コロナに関するルールやマナーを振り回し、他人を避難攻撃しては、感染予防にも逆効果です。感染予防のためには、分断ではなく、信頼と協力が必要です。

ルールもマナーも、みんなの心身の健康と平和で楽しい生活のために活用したいと思います。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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