『牙狼』新作でメインキャストに抜擢。アクションも冴える中澤実子の素顔と趣里から受けた影響
シリーズ4年ぶりの新作としてスタートした特撮ドラマ『牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者』。メインキャラクターの1人、魔戒法師のコヨリを演じているのは、オーディションから抜擢された中澤実子だ。2020年にモデルとしてデビューし、ドラマ、映画、CMにも出演してきたが、連続ドラマのレギュラーは初めて。凛とした役で颯爽としたアクションも見せて、人気を呼びそうだ。その素顔と演技への取り組みを探る。
芸能界に入ろうとは思ってませんでした
――実子(みこ)さんって本名ですか?
中澤 そうです。“夢が実る”という意味を込めて、おじいちゃんが付けてくれたんですけど、小さい頃はもっとキラキラした名前に憧れていました。でも、今はすごく気に入ってます。友だちにもだいたい「みこ」と呼ばれます。
――出身は長野ということですが、子どもの頃はどんなところで遊んでました?
中澤 私は外が大好きで、自転車で公園に行ってました。とにかく走り回って、木登りをしたり、ジャングルジムの一番上で座っていたり。田んぼや畑も多いので、雨が降ると泥んこになったり、田んぼで虫を探したりもしていました。
――小学校から高校までバスケをしていたとか。
中澤 バスケしかしてないような子でした(笑)。中学ではバスケ部員が12人で、経験者は私だけ。自分でシュートを打って、リバウンドを取りにいって、走って戻って、全部やっていました。高校ではフォワードでした。
――2020年にスターダストプロモーションと雑誌「sweet」がコラボしたモデルオーディションでグランプリになりました。芸能界にも興味はあったのですか?
中澤 最初は全然、自分がやろうとは思ってなくて。オーディションは家族に勧められました。高校3年で、卒業したら専門学校に行くつもりでしたけど、区切りになるし、コロナが流行り始めて部活がなくなって。新しいことに挑戦しようと受けてみたんです。そしたら、まさかのグランプリをいただけて、ビックリしました。
モデルになる前はジャージばかり着ていて(笑)
――ドラマや映画を観たりはしていたんですか?
中澤 観てました。『君の膵臓をたべたい』とか『orange』とか好きでしたね。私たちの学生時代は、少女マンガの実写が多かったんです。そういう学園ものを観て、キャーキャー言っていて。でも、「本当の高校でこんなことはないよね。あんなことをする男子はいないよね」とも話していました(笑)。
――ファッション誌も読んでいて?
中澤 姉が買ったのを一緒に読んでましたけど、自分ではあまり買ってなかったです。休みの日もジャージばかり着てましたから(笑)。
――よくモデルオーディションでグランプリを獲れましたね(笑)。
中澤 正直「いいのかな?」と思いました。最終審査のカメラテストで、ポージングもできなくて全然動けず、「石だった」と言われます(笑)。受かってから「sweet」を買って、母と「このポーズをやってみよう」と写真を撮って、「何か違うな」とか言いながら勉強しました。
――それでもグランプリに選ばれるくらい光っていたということは、学校でもマドンナ的な存在だったんでしょうね。
中澤 いやいや。本当にマドンナではなかったです。バスケばかりやっていたので。中学ではイケメンと言われていました(笑)。めちゃくちゃショートカットで、運動はできるほうで、女子からカッコいいと言われる中学生でした。
悔しい想いをしながら演技に向き合おうと
――演技はレッスンを受けて面白みを感じたわけですか?
中澤 そうですね。モデルから入って、演技レッスンも受けさせていただいて、だんだんやりたい気持ちが芽生えました。コロナ禍でリモートレッスンが何回かあって、東京に来たタイミングで受けられるときに行く感じでした。
――泣いたり怒ったりするお芝居で、自分の殻が破れて?
中澤 最初は全然ダメでした。違う自分になって、いろいろな感情を知るのは面白いと思いましたけど、いざやろうとすると恥ずかしさが勝ってしまう。レッスンの映像を見ても恥ずかしくて、なかなか殻を破れないところがありました。
――どこかで突き抜けるきっかけがあったんですか?
中澤 一番のきっかけは『サワコ』というドラマです。1週間とか撮影して何話かに出させていただく経験が初めてで、イメージ通りにできなくて悔しい想いもしました。すごい女優さんたちに囲まれて、自分が劣っているのもわかりましたけど、もっと演技に向き合いたいと思いました。
――愛と復讐のホラーサスペンスということで、ホストに貢ぐ女子高生役でした。
中澤 どれだけお金がかかるとか、すごく調べました。あと、主演の趣里さんと近い距離でお芝居したシーンもあって。ちょっと怖い役でしたけど、目力が本当にすごくて、自分の体がウッとなって吸い込まれるようでした。
――趣里さんは現在、朝ドラ『ブギウギ』でヒロインを演じています。
中澤 私もあんなふうに人を引き付ける女優になりたいと、憧れています。
地元で撮った主演映画で恩返しができて
――他に、これまでで特に印象深い出演作はありますか?
中澤 初めて主演した短編映画『春の結晶』は地元の長野が舞台で、学校のシーンは私の母校で撮ったんです。学生として通っていた自分が、お仕事で行ったのは感慨深かったし、家族や長野の方たちが喜んでくださって、目に見える形で恩返しができました。
――役柄的には卒業式の後の高校生ということで、自然体でできました?
中澤 友だちのことを気に掛けている役で、どれくらいの距離感がいいのか、難しい部分はありました。でも、キャストの子たちと仲良くなれて、普通の高校生として自然体でできたと思います。最後に雪が降ったのは予定外で、映像がよりきれいになって良かったです。
――主演を務めて、自信にもなりました?
中澤 映画館の大きなスクリーンで、自分の顔が大きく映ったのはちょっと恥ずかしかったですけど(笑)、ありがたいなと。周りの方も「良かった」と言ってくださったので、少し自信になりました。
バスケで培ったものが役立ちました
――『牙狼<GARO>』シリーズのことは知っていたんですか?
中澤 知らなくて、オーディションを受けることになって調べました。長く続いている作品と知って、受かってから重みを感じました。
――オーディションではどんなことをしたんですか?
中澤 コヨリの登場シーンを仮台本の1ページ分やって、あとはアクションをその場で教わりました。パンチしたあとにキックして、やられて睨みつける……という。
――手応えはありました?
中澤 アクションは未経験で何が良いのかもわからず、とりあえず手を振って脚を上げる感じ。手応えは全然なかったですね。受かったことは、家に1人でいたときにマネージャーさんから連絡をいただいて、「エーッ⁉」と。メインキャストでドラマに出させていただくのは初めてで、アクションもやらなければいけない。喜びと不安と、いろいろな気持ちがありました。
――コヨリは「体術に優れる魔戒法師」という設定です。
中澤 法術を使いながら、体術で戦う場面も多くて。アクション練習では、吹き替えのプロの方が同じ動きをしてくださって、自分の映像も撮って見ると、違いすぎていました。本当に私にできるのか……と思っていました。
――実子さんもバスケに打ち込んでいて、運動は得意なのでは?
中澤 膝の曲げ伸ばしや足腰は、バスケで培ったものが役立ちました。体力にも自信あります。でも、アクションはただの運動と違って、カメラに対する見せ方はすごく難しかったです。
見えない法術を見えているように
――習ったのはパンチやキックが中心ですか?
中澤 メインはそうですね。両手でパンチとか三段パンチとか、いろいろな技もあります。ワイヤーアクションもやらせていただいて、楽しかったです。
――特に難関だったのは?
中澤 一番の壁は、普段動かさないところの筋肉痛がすごくて。肩の後ろや脇腹が痛くなって、それでも練習しないといけないから、最初はしんどかったです。体が慣れてきてからは、実際は当たってないのを当たったように見せたり、リアクションを取ったりするのが難しくて。出すときと引くときでスピード感を変えると強く見えるとか、細かいところから教えていただきました。
――魔戒法師ならではの魔導筆を使うアクションもありますよね?
中澤 ありますね。撮影しているとき、現場で法術は見えないので、自分では見えているようにやるのも難しいところでした。
――予告編からすごくカッコいいです。
中澤 本当にカッコよく撮ってくださって。自分でないみたいだなと思いながら観てました。
ワイヤーは高くて怖かったけど一発OKに
――あれこれありつつ、本番までにはアクションもものにしたんですよね。
中澤 徐々に自信は付きましたけど、アクションがある日は朝からドキドキしました。最初のほうは、本番でやるのと同じ動きを練習してあったんですね。でも、後半は現場で教わって、その場で覚えてやらないといけなくて。苦戦したところはありました。
――ワイヤーアクションも実際にやったんですか?
中澤 やりました。敵の攻撃を後ろ向きに飛んで避けて、空中で私も技を出して。後ろ向きで飛ぶのは怖いし、高さも意外とあって、リハーサルでは顔に怖がっているのが出てしまったんです。慣れるまでちょっと大変でしたけど、本番では練習した甲斐があって、一発OKが出ました。
――コヨリの衣装も似合っていますね。
中澤 皆さんに似合うと言っていただいて、自分でも着ていく中で合っている気がしてきました。私のサイズを測って作ってくださって、フィット感があります。動きにくいのかと思ったら、全然そんなこともなくて。この衣装を着ると、気が引き締まります。朝早くて眠くても、着替えたらスイッチが入ります。
負けず嫌いなところが自分と重なります
――コヨリのキャラクターとしては、キリッとした感じでしょうか?
中澤 真っすぐで芯のある子です。生まれ育ったクレアシティを守る意志が強くて、守りし者としての正義感がカッコいいなと思います。負けず嫌いなところは私自身とも重なるので、入りやすかったです。
――実子さんの負けず嫌いは、どんなところで出ますか?
中澤 バスケをやっていて、小学1年生の頃は6年生を見て練習していると、走っていても「私はこんなに疲れているのに、あの人たちはなぜ平気なんだろう」と悔しくて。走る練習やフットワークだけは、1年生にして上級生と同じことをしていました。試合が始まったら、私はベンチで座っていただけでしたけど(笑)。
――1年生と6年生では、体力の差は相当ありますよね。
中澤 泣きながら走っていました(笑)。試合に負けて、点差の分だけグラウンドを走らされたときも、私は出てないから走らなくていいと言われましたけど、それはイヤで。6年生の後ろを、ひたすら付いていった記憶があります。
――すごい根性だったんですね。
中澤 コヨリも魔戒騎士の創磨と一緒に育って、男女の力の差も出てきたと思いますけど、そこで負けず嫌いが出たのかなと想像しました。
キビキビ動いて強く見えるように
――逆に、コヨリを演じるうえで、普段と変えているところもないですか?
中澤 普段の私はマイペースでゆったりしがちですけど、コヨリはテキパキ、キビキビした感じなので。そういう動きや目力の強さは、普段と変えるように意識しました。
――背筋を伸ばすとか?
中澤 そういうのもありますし、女の子は脚を閉じて立ったり座ったりしますけど、コヨリは戦う子なので。脚を肩幅くらいに開いて立って、強く見せるようにもしました。
――話し方はどうですか?
中澤 コヨリははっきりしゃべる子で、私はモゴモゴしてしまうことが多くて(笑)。そこは注意されました。急ぎすぎず、ていねいに話すように心掛けました。
――アクション以外にも、演技で特撮ドラマならではの部分はありますか?
中澤 「私は守りし者」とかズバッとカッコいい台詞を言うのは、特撮ならではかなと思います。現実と違う世界線なので、魔導筆とか破滅ノ門とか難しい言葉が多くて噛みそうでした(笑)。
特殊メイクにビビらず戦いました
――ホラー(魔獣)は間近で見ていたんですよね?
中澤 はい。私もホラーと戦ったんですけど、特殊メイクがすごくて。目に白いコンタクトを入れたりもしていて、怖かったです。現場で私たちより前に準備をされていて、ちょっと距離を取ってあいさつしちゃいました(笑)。目が見られなくて、遠くから「お疲れさまです」と。
――でも、カメラが回ったら立ち向かって。
中澤 ビビらずに戦いました。最初に戦ったホラーが体が大きめで、蹴ったり殴ったりも、生身の人間の方と練習したときと感覚が全然違いました。自分も大きく動かないと、ホラーに隠れて映らなかったり。そこを修正しながらやっていました。
――コヨリの見せ場が多い回もありますか?
中澤 戦いも見せ場になりますし、コヨリ自身、成長していく中で葛藤もして、感情が高ぶるシーンもあります。それも初めてのことで、本番の前日はすごく緊張しながら「やるぞ!」って気持ちで挑みました。
『マイネーム』のハン・ソヒさんが刺激になって
――現場で頑張る以外に、日ごろから演技力の向上のためにしていることはありますか?
中澤 今回コヨリ役をやるに当たっては、勧められたアクション作品を観て勉強しました。最初に観たのは韓国ドラマの『マイネーム』。ハン・ソヒさんもあれが初めてのアクションだったそうですけど、女性の美しさもありつつ、カッコ良くて。本当にすごいなと刺激になりました。初めてでここまでできる方がいるなら、自分も絶対やってやろうと、そこでも負けず嫌いが出ました(笑)。
――それに限らず、勉強のために作品を観たりはしているんですか?
中澤 前は普通に物語を楽しんでいたのが、お芝居の仕方とかを観るようになりました。しゃべってないシーンを巻き戻したりもします。自分の中で、台詞を言ってないときの間を課題に感じているので。そういうところで、どんな表情をしているとか勉強しています。
部屋が乱れているとやる気が失せます
――東京暮らしにはすっかり慣れましたか?
中澤 3年目で慣れてはきましたけど、ひとり暮らしの寂しさはなかなか抜けません。忙しくて洗濯や掃除が溜まったりすると、実家に戻りたいなと思ったりします。母のありがたみを日々感じていて。
――洗濯や掃除は忙しくなければ、ちゃんとやっているんですか?
中澤 ドライヤーをするだけで髪はたくさん抜けるし、掃除は定期的にしています。洗濯機を回して干すのも、時間はすごく取られますけど、家に帰ってきたときに部屋が乱れていると、すべてのやる気が失せるので。なるべく出る前に整えていくようにしています。
――電車はスムーズに乗りこなしています?
中澤 携帯がないと乗れませんけど、昔に比べたらスムーズになりました。長野の駅はだいたい「こっちに行くか、あっちに行くか」みたいにシンプルなんです。東京に来て「10何番線って何ごと?」と思いました(笑)。しかも、長野は車両が少なくて、どこから降りても景色は同じ。新宿駅だと出たところで景色がまるで違って、違う駅で降りちゃったかと思うくらい。だから、オーディションで行くことになったら、1時間前には駅に着いてないと心配です。
撮影が終わってコンビニスイーツを食べて
――休みの日は何をしていることが多いですか?
中澤 『牙狼<GARO>』の撮影が終わってからは、たくさん寝ています(笑)。寝ることが大好きなんですけど、撮影期間はそうもいかなかったので、目覚ましを掛けずに寝る幸せが身に染みます。衣装も体が結構出るので、お弁当もおかずだけにしていて、終わってから大好きなコンビニスイーツを食べました。
――推しスイーツは何ですか?
中澤 私はプリンが大好きです。チートデーとか自分へのご褒美にはケーキやパフェを選ぶ方が多いと思うんですけど、私はプリン。それもお店に行くより、コンビニスイーツがいいんです。
――出掛けるなら、東京だとどの辺が多いですか?
中澤 どこに行っても人が多いのは、なかなか慣れませんけど、やっぱり渋谷は買い物するなら何でも揃っているので、よく行きます。あの交差点では一回信号が赤になっている間に、どこからこんなに人が集まるんだろうと、毎回驚きますけど(笑)、いろいろな人を見るのも楽しいです。
埋もれずにメインの役をやりたいです
――『牙狼<GARO>』の放送も始まって、未来は明るく感じますか?
中澤 「楽しみにしているよ」という声もたくさんいただきましたけど、どう評価されるか、怖い気持ちもあります。お芝居に関しては、いつも「もっとこうすれば良かった」というのがあって。常に100点は難しいとしても、そうなれることを目指して、どんどん磨いていきたいです。
――これからいろいろ経験を積んでいくわけですしね。
中澤 今回、3ヵ月の撮影は大変かなと思ったら、ひとつの役を長く演じられるのは、すごく楽しかったです。これからもメインの役をやりたい気持ちは強いです。
――負けず嫌いも発揮しつつ?
中澤 同世代の方も多いので、埋もれないようにというのが一番大きいです。いつか主演ができるように頑張っていきます。
Profile
中澤実子(なかざわ・みこ)
2002年7月26日生まれ、長野県出身。2020年に「STARDUST×sweetモデルオーディション」でグランプリ。主な出演作はドラマ『失恋めし』、『サワコ~それは、果てしなき復讐』、『大病院占拠』、『きのう何食べた?season2』、映画『春の結晶』、『17歳は止まらない』など。ドラマ『牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者』(TOKYO MX、BS日テレ)に出演中。
『牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者』
TOKYO MX・木曜22:00~ BS日テレ・木曜24:30~
出演/栗山航、仲野温、中澤実子、黒谷友香、萩原聖人ほか