鬼界海底カルデラに巨大溶岩ドームが存在: 超巨大噴火との関係は?
110もの活火山が密集する日本列島。ここ数年でも、御嶽山、西之島、阿蘇山、桜島などで噴火が相次ぎ、富士山大噴火はもはや日常的な関心事である。歴史上最大級の噴火は1914年桜島大正噴火や1707年富士山宝永噴火などで、東京ドーム約1300杯分ものマグマを噴出した。
さらに日本列島では、これらの数十〜数百倍のマグマを噴き上げる超ド級の「巨大カルデラ噴火」が幾度となく繰り返されてきた。最も直近は7300年前、鹿児島県南部海域、現在の薩摩硫黄島・竹島辺りの「鬼界カルデラ」で起きた。降灰は東北地方にまで及び(関東でも約10cm)、火砕流は海を越えて薩摩・大隅半島を襲った。この噴火で南九州縄文人は絶滅したと言われている。
深江丸の挑戦
巨大カルデラ噴火を予測するには、病院のX線CT検査と同じ原理で地下にあるマグマ溜りの大きさや形を可視化して、その時間変化をモニタリングすることだ。地下を透視するにはX線の代わりに人工地震波を使う。しかし、人口が密集する陸域では人工地震を駆使するのは難しい。一方海域では、船を縦横無尽に走らせながらエアガンから発射して地下を通ってきた地震波を受信すればよい。そこで海域にある鬼界カルデラがターゲットとなった。調査を行うのは神戸大学の「深江丸」。多くの外航船員を輩出してきたこの練習船は、最新鋭の海底地形・地下構造を探査する装置や海中ロポッドなどを搭載して、昨年10月から調査を開始した。
桜島2個分の巨大溶岩ドームが存在
これまで海上保安庁などが行ってきた海底地形調査で、鬼界カルデラの海底にはドーム状の盛り上がりがあることは分かっていた。
このドームについて、深江丸は以下のことを明らかにした:
- ドーム内部は地層や火山灰層などが積み重なった層状の構造を示さない
- ドーム表面には水中に噴出した溶岩に特徴的な構造(水冷構造)が認められる
- ドームを構成する岩石は二酸化ケイ素に富む火山岩(流紋岩〜デイサイト)である
- ドームでは火山ガスや熱水の活動が認められる
これらのことから、カルデラ形成後、つまり7300年前以降にマグマが海底に噴出して溶岩ドームが形成され、このドームは現在でも活動的であることが分かった。
驚くのは溶岩ドームの巨大さだ。おおよそ40立方キロメートル、同じようにカルデラ形成の後にできた桜島の2倍以上の体積である。しかも桜島は約3万年もかけて形成したもので、鬼界海底ドームの成長は異常に速い。
ドームを作る岩石は、7300年前の超巨大噴火で噴出した岩石とよく似ている。今後これらの岩石の「DNA」を調べてその血縁関係を調べる必要があるが、今でも地下に巨大なマグマ溜りが存在する可能性がある。
最悪の想定死亡者数が1億人という巨大カルデラ噴火(詳しくは「富士山大噴火と阿蘇山大爆発」に)の予測を目指す深江丸の挑戦を見守っていただきたい。