Yahoo!ニュース

ほめられ続けたきた子供若者の大問題:子育ての基本

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ:近頃の若者は...?)(写真:アフロ)

「子供を傷つけるな」「子供の自己肯定感を高めろ」。それは正しいことだったはずなのに、その教育姿勢が今問題になり始めている。

■今の子供若者は?

「近頃の若者は」「今時の子供は」。そんな批判は、数千年の昔から行われてきました。中高年にとって、「俺たちの若い頃は」と語りながら若者に文句を言うのは、良い酒の肴です。盛り上がります。だから、若者たちはそんな批判を恐れることはなく、思い切って行動をすれば良いと思います。

けれども現代の若者批判は、昔とは変わってきています。何千年来言われ続けてきた若者批判は、近頃の若者は「常識がない」「伝統を守らない」「過激だ」「無茶をしすぎる」「急ぎすぎる」といったものでした。

しかし現代の若者批判は、「元気がない」「がむしゃらさがない」「保守的だ」といったものです。これは、昔とは異なっています。青年たちは、一方ですっかり優しくなり、大人と対決する姿勢を取ることもなく、穏やかになりました。また一方で、自分が世話をやいてもらい、守ってもらい、配慮されて当然だと感じる若者も増えています。

我慢できず、自分の権利ばかり主張し、うぬぼれ屋で、それなのに本当の自信はなく、打たれ弱い現代の子供若者たち。

アメリカでは、彼らを「 自分(ミー)! 自分(ミー)! 自分(ミー)! 世代」と呼ぶ人もいます。

これは、昔から続いてきた若者批判の延長ではなく、過去数十年の教育の結果ではないかとも言われています。

日本でもアメリカでも、この20年、子供若者はとても大切にされてきました。子供を大切にすることは、もちろん悪いことではなりません。子供は、私たちの宝です。

しかし、子供を傷つけてはいけない、子供の自己肯定感を高めようとの動きの中で、誤った行き過ぎた教育が行われたのではないかとの指摘が、アメリカでも起きています。

子供を傷つけないこと、子供の自己肯定感を高めること。それは正しいことです。でもそれは、子供をただほめれば良いことではなく、子供に苦労させないことでもありません。

子供を守ろうとする大人の思いが、どこかで歪み、結果的に子供から「やり抜く力」(グリット)を奪い去ったのではないかとの指摘が始まっています。

「可愛い子には旅をさせよ」「若い頃の苦労は買ってでもせよ」。それは、古い間違ったことではなく、やはり必要なことなのかもしれません。

私たちは、子供若者が、強く優しく賢くなることを望んでいるでしょう。そのために必要なことは、一体何なのでしょうか。

■ほめすぎることは何が問題か

小さな子供の小さなことを何でもほめることは、良いことだと思います。大人にとっては小さなことでも、子供にとっては起きなことだからです。砂場に作った砂山とトンネルも、歩いて10分の「はじめてのおつかい」も、子供にとっては、大事業、大冒険だからです。

たっぷりほめてあげましょう。しかし、次第に大きくなっていっても、相変わらずほめ続け、「良い子良い子」し続けることは、子供にとっては毒になることもあるのです。

この記事は有料です。
心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法のバックナンバーをお申し込みください。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法のバックナンバー 2018年9月

税込550(記事3本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

碓井真史の最近の記事