大学入試改革への懸念が強まった大阪大入試ミス
「自分も合格していたんじゃないか?」という疑いが頭に浮かんだ人が少なからずいたはずである。
年明け早々の6日、大阪大は昨年2月に実施した一般入試(前期日程)の物理で、出題と採点にミスがあったと発表。合否判定をやり直した結果、不合格とした30人を追加合格とするとともに、補償も検討することを明らかにした。
ミスは、正しい解答が複数あったにもかかわらず、特定の解答のみを正答としたことから起きた。たまたま今回は指摘があって発覚したが、同じようなことが他大学でもあった可能性は否定できない。不合格者にしてみれば、「採点ミスがあったのでは?」という疑問を抱かせる事件である。
さらに、同様のことが2020年に予定されている大学入試改革での入試では多発する懸念がある。新たな大学入試では、国語および数学に記述式問題が出題されるなど、「考える」ことに重点が置かれる予定だからだ。
考えることに重きがおかれる問題では、正解がひとつだけとはかぎらない場合が多くなるはずである。考え方は多様だからだ。
そうなってくると採点はきわめてむずかしくなる。採点の効率化を重視して、正解を絞ってしまえば、考え方を狭めることになり、そもそもの入試改革の趣旨から逸脱しかねない。
知識偏重から脱して思考力や表現力を問うことを趣旨とする新たな大学入試の趣旨からいえば、多様な解答を正解として受け入れなければならない。それは、短期間で合格・不合格に振り分けなくてはならない入試制度では不可能に近い。
思考力や表現力を問うといいながら、選別を目的とする入試制度を維持しようとしていることに、そもそもの間違いがあるといわざるをえない。今回の大阪大の入試ミスは、ただ大阪大だけの問題ではなく、「一発勝負」でしかない入試制度そのものを問い直すきっかけにしていかなくてはならない。