知る人ぞ知る大阪の名店。本まつばやさんの「月あかり」は、柚子香るふんわり食感のお洒落なお干菓子
大阪の和菓子屋さん、と聞いて皆さんはどちらを思い浮かべるでしょうか?と申しますのも、都内のみならず関東や東北などの物産展を覗いても、グルメは多々あれど和菓子屋さんという印象は薄いものではないでしょうか?銘菓等はあっても、関西の和菓子といえば京都や奈良の印象の方が濃厚かと。
1927年創業、大阪府大阪市にて創業なさった「本まつばや」さんは、日常のワンシーンにそっと花を添えてくれるような、それでいて心を掴んで離さないような上生菓子をはじめとするお菓子が揃うお店。大阪の玄関口、新大阪駅から電車で約30分、そのほか天王寺駅やなんば駅までのアクセスにも恵まれたお店です。とはいえ、桃谷駅というアットホームな街中に佇む和菓子屋さんです。にも拘わらず、ご進物からご挨拶用、毎日のおやつにとお菓子を買い求める方が後を絶たない名店。
今回は本まつばやさんの研ぎ澄まされた完成が光る代表作のひとつ「月あかり」をご紹介。
いわゆる「お干菓子」の視野をぐっと広げてくれるようなお菓子。
煌々と夜空を照らす満月のような色合いは、精選された平飼い卵の卵黄の色。更に、卵黄のまろやかさやコクの濃縮された持ち味を更に昇華させているのが、清涼感と可憐さを演出する柚子。甘味だけではなく、柚子の果皮が持つ豊かな涼香と仄かな苦味が交わることで、ぐっと奥行きのある味わいに。乳脂肪分は入っていないのに、どこか洋菓子のような気品をも見いだせるような気がします。
また、お干菓子というと落雁やもろこしのような歯応えのあるイメージが強いかと思いますが、上質な寒天の作用によりふんわりと軽やかな、繊細な口溶けに思わず口元がほころんでしまうはず。いうなれば、マシュマロのような軽やかさと落雁のような繊細な儚さを宿した不思議な食感。その不思議という感覚が嫌なものではなく、もう一度味わいたいと思わずふたつめに手を伸ばしてしまうような食感なのだから人気の理由も頷けます。
この「月あかり」という銘は、万葉集に選出された湯原王が詠んだ恋歌。お茶席だけではなく、大切な方へ気持ちを込めたプレゼントや、ちょっと特別な十五夜のひと時にその煌めきを添えてみてはいかがでしょうか。