今年の梅雨も大雨予報。最近の一戸建てで注意したい「2階だけ床上浸水」の異常事態
気象庁が発表した6月から8月の3ヶ月予報によると、今年の梅雨も雨が多くなりそうだ。
もともと、日本は世界的にみても雨の多い国とされる。国土交通省のホームページによると、日本国内では年平均1718ミリもの降水量があり、これは世界平均(880ミリ)の約2倍に相当するそうだ。
それほどの雨が秋の台風時期と梅雨の時期に集中する。多すぎる雨は農作物や交通機関に大きな影響を与えるし、住宅にも被害を生じさせる。
住宅の場合、雨と高温によるカビの害もあるが、なにより怖いのが水害。川の氾濫や下水があふれることにより、一戸建てやマンションの1階が床上浸水した、という事例が毎年起きてしまう。
一戸建てで1階が床上浸水しそうなとき、大事なものは2階に上げて……となるのだが、世の中には「1階は大丈夫だったのに、2階だけ床上浸水した」という話がある。
なんとも不思議な出来事だが、現実に起きた話。そして、現代の一戸建て住宅では、意外にありえる話なのである。
「2階だけ床上浸水」を起こした3つの不幸
「2階だけ床上浸水」は、実際に知人宅で起きた出来事だ。
その理由は、3つの不幸が重なったことによる。
知人宅は、2階に大きめのテラスを設置している。これは珍しいことではなく、最近の一戸建て住宅は2階にテラスを設けるケースが増えた。
マンションのバルコニーと同じくらいの広さか、それよりも広く、1メートルを超える高さの壁で囲われた空間がテラス。そこにベンチやテーブル、鉢植えを置いてアウトドア気分を楽しむわけだ。
そんなことしなくても、一戸建てには土の庭があるだろう、といわれそうだ。
しかし、今は庭にコンクリートを打ち、カーポートとして活用するケースが増えた。「土の庭は虫が出るから、嫌」という人もいる。
だから、土の庭を小さくし、代わりに、2階にテラスを設けてガーデンライフを楽しむケースが増えたのである。
住宅展示場でも、2階に大きなテラスを設けた家が目立つ。2階のテラスならば日当たりがよいし、高い壁があるので、プライバシーも守りやすい。虫も少ない。いろいろな利点があり、2階のテラスが好まれているわけだ。
知人も、壁で仕切られたテラスを設けた。そのテラス内には、当然ながら雨水の排水口が設けられていた。排水口が機能すれば大雨が降っても問題なかったのだが、残念なことに掃除を怠ってしまった。
いつのまにか落ち葉が排水口の大部分を塞いだ。これが、1つめの不幸だった。
そして、梅雨のある夜、大雨が降った。
排水口の大部分が塞がれていたため、テラス内に雨水がたまった。
雨水がたまっても、壁に隙間があれば、水の逃げ場があっただろう。ところが、床面からしっかり覆われていたため、雨水の逃げ場がなく、水かさが増した。排水口以外に雨水の逃げ場がなかったこと、それが2つめの不幸である。
雨が降り続いた夜中、浅いプールのようになったテラスから、雨水がサッシの隙間を通って室内に入りはじめた。
蒸し暑い夜だったので、サッシを薄く開けていたのが、3つめの不幸だった。
最新のアルミサッシは、薄く開けてストッパーがかかるものがある。留守中も室内に風を通すことができ、防犯性も保つことができる工夫だ。
知人宅でも、そのサッシを採用し、薄く窓を開けて就寝していた。
以上3つの不幸が重なり、雨水が2階のテラスから室内に入ってしまい、「2階だけ床上浸水」の事態が生じたのである。
雨水で床の木材が変色してしまった
床上浸水した部分は、2階に設けられたリビング。テラスとリビングをセットにして、快適空間をつくっていたわけだ。
これも、現代の一戸建てでは珍しくない。
2階にリビングを設置して、テラスと一体化。リビングの床がテラスまで続いているように設計し、空間の広がりを演出することも多い。
リビングとテラスの床が連続するように設計すれば、テラスとリビングの段差が小さくなる。それで、雨水が室内に浸入する危険が増す。
加えて、リビングは夜中、無人になってしまう。知人宅のリビングも、雨水が入ってきたときに無人だったため、浸水に気づくのが遅れた。それが、追加の「不運」となった。
室内に入った水の量は大量ではなかったが、床材が長く水に浸かってしまった。その結果、拭き掃除をした後も床板が変色してしまった。
以上が、「1階は無事なのに、2階だけ床上浸水」の顛末である。
嘘のような話だが、3つの不幸とひとつの不運により、ちょっとした損害が出た、という実話である。
ちなみに、知人は火災保険による補償も検討したそうだが、「床上浸水」と認められる要件を満たしていないし、「雨漏り」にも該当しないので、あきらめた。家を建てた建設会社に頼んで床材を磨き、ワックス掛け等をしてもらうことでよしとした。
このような「2階だけ床上浸水」は、2階にテラスを設けた一戸建てで起きる可能性がある。
それを防ぐためには、テラスの排水口をこまめに掃除することが大切。そして、これから新築する家に2階テラスを設ける場合、テラス内に雨水がたまったことを考え、排水口とは別に水の逃げ道をつくっておくことも大事な心得といえそうだ。