花粉症シーズンでも家は換気が必要、どう対策? 花粉が一番入らない方法は
春が近づくと、花粉が飛び始めます。鼻はムズムズ、目はゴシゴシ…と、かなりツライ状態になりますが、実は、筆者も花粉症に悩む一人です。数年前にスギ花粉の舌下免疫療法を受けて、スギ花粉のアレルギー症状は弱まったのですが、今度はヒノキ花粉のアレルギーがひどくなって…、悩みは尽きません。
さて、そんな花粉症に悩む私たちは、自宅内の花粉対策をどうしたらよいのでしょう?
考え方の基本は、次の2つです。
(1)外から家に花粉を持ち込まない(付着による持ち込み対策)
(2)家の中に花粉を取り込まない(換気による侵入対策)
暮らし方の工夫などで持ち込み対策を
まず、「付着による持ち込み」の対策について考えてみましょう。花粉が付着するシーンは、主に「衣類や頭髪などに付着した花粉を外出先から持ち込む」か「外に干した洗濯や布団を取り込むときに持ち込む」かになります。
これは暮らし方の工夫で一定の対策が可能です。例えば、外出先から家に持ち込まないように、玄関でコートや帽子などを脱いで中に持ち込まないとか、洗濯物を室内干しにするなどです。
最近では、縦長の玄関収納を設けた間取りも多く、そこにコートや帽子をしまうことで対策が可能です。また、室内干し用のフックを設置した住宅も増えているので、前より室内干しの場所を確保しやすくなっています。我が家の場合は、もっぱら浴室乾燥機を利用して、浴室干しをしています。
さらに、花粉除去機能のある空気清浄機や空気清浄機能付きのエアコンなどを使って、室内の花粉を取り除けば、より安心でしょう。
室内換気の仕組みを正しく知っている?
問題となるのは、筆者の専門領域でもある(2)の住宅の換気による侵入です。換気をしなければ花粉は侵入しませんが、新鮮な空気を室内に取り込んで、汚れた空気を外に出す必要があります。筆者のように、ハウスダストでもアレルギーを起こす場合は、ダニやカビの繁殖を防ぐためにも、換気は必要です。
では、住宅の換気はどうやって行われるのか、ご存じでしょうか?
換気というと、窓を開けて空気を入れ替えると思いがちですが、いまの住宅の換気は、給気口から空気を取り込んで排気口から出すことで、窓を開けなかったとしても換気ができる仕組みが取り入れられています。
そこで、住宅の換気の仕組みについて説明しておきましょう。
リビングや寝室などの居室の外壁に、「給気口」と呼ぶ、空気を取り入れるための穴を開けて、空気を取り込みます。取り込んだ新鮮な空気は室内扉の下の隙間などを通って、廊下やキッチン・洗面所などの水まわりに流れ込み、「排気口」と呼ばれるところから外へ出ていきます。
一戸建ては外壁に面した部分が多いので、外壁に排気口を開ける場合も多いですが、マンションの場合は水まわりが中央に集まっていることが多いので、浴室やトイレの天井に換気扇(排気ファン)を設けて、ダクトを通して外に排出する方法が一般的です。
加えて、換気の方式には次の3種類があります。
○第1種換気:給気/機械換気、排気/機械換気
○第2種換気:給気/機械換気、排気/自然換気
○第3種換気:給気/自然換気、排気/機械換気
原則として、住宅の場合は第1種か第3種の換気方式が採用され、第2種は手術室など特殊な空間で採用されています。第1種はコストが高くつくので、主に高額な住宅で採用され、一般的な住宅の場合は、自然換気による給気と機械換気による排気の第3種が多いと思います。
上に掲載した換気の仕組み図は、給気も排気もファン(機械)によって行われる第1種の例となります。
2003年7月を境目に住宅の換気に違いあり!
2003年7月に建築基準法が改正され、換気についてのルールが変わりました。筆者の自宅は2000年に建てられたものなので、イマドキの住宅と換気に違いがあります。どう違うのか説明しましょう。
その当時に問題となっていた「シックハウス」対策のひとつとして、原因となる化学物質の室内濃度を下げるために、常時換気できる「24時間換気システム」が義務付けられました。この改正によって、以降に新築される住宅は、第1種でも第3種でも、設計段階で給気量や排気量、空気の流れなどを計算して、2時間ごとに部屋の空気が全部入れ替わるように建てられています。
つまり、改正前に建った我が家は、換気量を計算して、常時入れ替わるようには設計されていないので、換気については住んでいる人が意識的に行う必要があるわけです。
ただし、あくまで住宅内の化学物質を外部に出すための基準なので、料理をしたりタバコを吸ったりなど、家庭によって空気が汚れる程度も変わってきます。換気が不足していると感じたら、換気扇を回したり、窓を開けて空気を入れ替えたりすることも大切です。
換気の花粉対策は可能?
では、花粉対策として何ができるでしょうか?
外気を取り込む「給気口」にフィルターを付けることで、住まいの換気の花粉対策をすることができます。最近の住宅の給気口には、フィルターが付いているものが増えています。ただし、フィルターにも種類があります。土や砂の侵入を防ぐためのものもあれば、小さい花粉などを防ぐもの、さらに小さいPM2.5を防ぐものなどの種類があるので、フィルターの有無だけでなく、どんなフィルターが付いているのかも確認する必要があるでしょう。
残念ながら、業界関係者に話を聞くと、新築のマンションや一戸建てであっても、花粉が予防できるフィルター付きの換気システムを採用している事例は、あまり多くはないようです。
我が家の給気口は古いタイプなので、フィルターは付いていません。そこで、後付けて花粉フィルター付きのカバーを取り付けました(場所によって取り付けられないも給気口もあります)。
ただし、目の細かいフィルターを付けると風を通す力が弱まります。設計上で計算した給気量が確保できない可能性もあるので、注意が必要です。
また、コロナ禍のいまは換気の重要性が高まっています。厚生労働省では、商業施設という前提ですが、「30分に1回以上、数分間程度、窓を全開する」ことを推奨しています。
住まいの換気システムによる換気だけでは不十分な場合、やはり窓を開けて換気をすることになります。その場合は、外気と一緒に花粉も侵入してしまいます。我が家の場合は、通常の網戸に、網目がより細かいフィルターをプラスして2枚張りにする、「花粉対策用網戸」に張り替えました。
ただし、フィルター類は付いていればそれだけでいいというものではありません。定期的にフィルターの交換や清掃が必要になるので、推奨された方法でメンテナンスすることも大切です。
ほかにも、花王の生活者研究センターが2006年に発行したレポートで、室内への花粉の侵入量は、「窓を10cmだけ開けて、レースのカーテンを閉めて換気をした場合が最も少ない」という結果を紹介しています。
寒い冬の時期には、換気量を増やすと、外の冷気を取り込むことになるので、室内が寒くなります。暖めた空気の熱を回収して再利用し、外気を室内の温度に近づけてから内部に取り入れる「熱交換換気」機能を持つ換気扇なら、換気によって室内が寒くなるということはありませんが、住宅ではまだあまり多く採用されていないのが残念です。
さて、今回この原稿を書くに当たって、デベロッパーや建材メーカの知人にいろいろと話を聞きました。後付けで給気口に花粉対策フィルターを付けたという話をしたら、換気量が減ることを知らされ、意識していなかっただけに恥じ入るばかりでした。花粉対策のために換気について変更したいという場合は、設計士などの専門家に相談して、住宅全体の換気計画と合わせて検討してもらうのがよいでしょう。
空気の流れは目に見えないだけに、花粉を恐れて換気を怠りがちになりますが、快適に暮らすためには、工夫をしながら換気をしっかり行うことも大切だと思い知った次第です。
取材協力:大建工業
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】