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3月が検索ピークとなる「退去」。データから分かったみんなが知りたいことを解説

山本久美子住宅ジャーナリスト
3月に検索ピークとなる賃貸からの退去(写真:イメージマート)

4月の新生活スタートに向けて、賃貸物件からの退去が増加する。そこで、退去に当たって、みんなはどんなことを知りたいのか、ヤフーが提供するビッグデータ分析ツール「DS. INSIGHT」を利用して調べてみた。

■「退去」は3月に検索ピークになる

まず、「退去」の検索件数を調べると、毎年1月から上昇し始めて3月に検索数のピークに達している。やはりこれから関心が高まるテーマだと分かる。

(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)
(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)

では、退去と一緒にどんなワードを検索しているのだろう?

■退去と一緒に検索される「退去費用」「連絡」「立ち会い」

「DS.INSIGHT」で結果をマッピングすると、次の画像のようになった。

(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)
(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)

退去する場所である「賃貸(物件)」や「アパート」が多いのは当然として、注目したのは、「費用」に関するグループと「連絡」に関するグループ、「立ち会い」に関するグループだ。

さらに、一緒に検索されたワードのランキングを見ると、上位10位以内に、「退去費用」に関するものが多く挙がっていることが分かる。

(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)
(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)

さらに、11位以下を見ていくと、「連絡+賃貸」9位に加えて、「退去申し込み」12位や「連絡」18位、「連絡+アパート」21位などの連絡に関する検索が多い。

(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)
(提供:ヤフー・データソリューション|DS.INSIGHT)

ほかにも、「立会い+注意点」13位、「クリーニング代」11位、「掃除+どの程度」15位(退去時との検索では24位)、「立会い+賃貸」30位などが上位に入っていた。

実は、退去費用と立ち会いの有無には、関連性がある。そこで、退去費用について説明しよう。

■退去費用でカギを握る、原状回復費用やクリーニング代、鍵交換費用

退去費用については、一概に言えないのだが、一般的には面積が広いほど、居住年数が長いほど高くなる傾向がある。一概に言えない理由は、どういった賃貸借契約を結んでいるかで変わるからだ。例えば、退去時に専門事業者が行うクリーニング代(清掃費用)や鍵を交換する費用を入居者が負担するという契約内容になっていた場合は、その費用を貸主や管理会社から請求される。こうした契約の内容によっては、退去費用が高額になる場合がある。

次に、入居者は「原状回復費用」を負担する必要がある。入居者の使い方によって賃貸物件に損傷を与えた場合などは、その補修費用を支払わなければならない。通常は、入居時に「敷金」を預けているので、そこから原状回復費用が差し引かれ、残金は退去時に返還される。

ここで問題になるのが、原状回復費用についてはトラブルも多いことだ。そこで、国土交通省では、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

を作成した。これによると、時間が経てば建物や設備は劣化・損耗する(経年変化)し、普通に生活していても一定の損耗はある(通常損耗)ので、それについては貸主が費用を負担する。一方、入居者が故意や過失、当然払うべき注意を怠ったりして生じた損耗は、原状回復費用として負担するとなっている。この考え方は、2020年4月の改正により民法に明記された。

費用負担の例を挙げると、日差しで壁紙が黄ばむのは「経年変化」だし、エアコンを設置した跡や冷蔵庫の裏の電気ヤケによる変色などは「通常損耗」なので、原状回復の対象外だ。一方、入居者が物を落として汚してしまったり、喫煙で壁紙がヤニで汚れたりした場合は、原状回復の対象になる。こうした線引きを知ったうえで、貸主や管理会社と交渉できるかどうかで、原状回復費用が変わる可能性がある。

ちなみに、ガイドラインでは、新しい入居者のためのクリーニング代や鍵交換費用は貸主側が負担すべきものとしている(鍵を紛失したことで交換する場合は入居者負担)。ただし、これらを入居者が負担するといった「特約」を合意して契約書に付けることは可能なのだ。

■退去費用を抑えたいなら、立ち会いをすべき

では、現実的にいつどのように原状回復費用が定められるのかというと、退去時の立ち会いで進められる。建物の状態を確認しながら、劣化や損傷は入居者が負担すべきものかどうかを検討し、補修する箇所や費用負担割合などを決めていく。立ち会わないと、入居時にすでにあったキズであるなどの交渉ができないので、ぜひ立ち会ってほしい。

したがって、退去費用を抑えたいなら、事前にガイドラインに目を通し、立ち会い当日に手元に置いて交渉することも効果的だ。ほかにも、自分で落とせる汚れやカビなどをしっかり落としておくことも、補修箇所を減らせる可能性があるので、掃除もしっかりしておこう。

■退去の申し込み期限を契約書で確認

次に、「退去の連絡」についてだが、これも契約書などで確認する必要がある。1カ月前までに管理会社に連絡するといった例が多いが、思い込みは禁物なので、誰にいつまでに連絡する必要があるかをしっかり書面で確認しよう。

新居への引っ越しのタイミングと退去日が合わないと、二重で家賃が発生したりトラブルになったりするので、早めに段取りするのがおススメだ。なお、月半ばで退去する場合などは、家賃や管理費を日割りで計算することになる。

こうして、説明したうえで、「DS.INSIGHT」のマッピングを見直すと、説明する際に出てくるワードがマッピング上にも紐づいていることが分かった。おそらく、トラブルなく、できるだけ費用を抑えて退去したい人が多いということだろう。

これから賃貸物件から退去する人、入居を検討している人は、ぜひ契約書をしっかり確認してほしい。

ヤフー・データソリューション | DS.INSIGHT

※この記事は、Yahoo!ニュース 個人編集部、ヤフー・データソリューションと連携して、ヤフーから「DS.INSIGHT」の提供を受けて作成しています。

※ヤフー・データソリューションは、ユーザーのデータを統計データとしたうえでデータの可視化や分析結果を提供するサービスであり、個人を識別できるデータ(パーソナルデータ)については、ユーザーから新たな同意がない限り外部に提供することはありません。

住宅ジャーナリスト

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「東洋経済オンライン」「ビジネスジャーナル」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナー等の資格を持つ。江戸文化(歌舞伎・落語・浮世絵)をこよなく愛する。

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