在宅勤務中ペットの姿を見るだけで休憩になる?!研究論文をサイエンスライターがわかりやすく解説
ペットを飼っている人にとって、常にペットの近くにいることができる在宅勤務はありがたいものです。近くに来たペットをなでたり、のんきに眠るペットを見つめるだけでも癒しを感じる人が多いのではないでしょうか?
ポルトガルのリスボンにあるISCTEビジネススクールのアナ・ジュンサ・シルバ博士はそんなペットによる癒し効果を検証し、在宅勤務時にペットと触れ合う休憩の有効性を証明しました。
この記事ではこの研究論文をわかりやすく解説するとともに、ペットと人間のふれあいに関する他の研究についてもご紹介します。
ペットとの小休憩が多い日はやる気がUP
調査は犬や猫などペットを飼っている在宅ワーカー211人に対して行われました。調査期間は5日間で、以下の3つの項目についてアンケート調査を行ったそうです。
- ペットと関わった休憩の回数(見つめるだけなど直接触れ合わないものも含む)
- 自己調整リソース(自分の気持ちを制御してどれくらい仕事に打ち込めたか)
- 精神の健康(1日のうちどれくらいの時間穏やかな気持ちでいられたか)
アンケートは各項目について3つの質問が用意され、5段階の評価で回答が行われました。それらを分析し被験者たちのデータを日ごとに比較した結果、ペットと関わった休憩の回数が多い日ほど、自己調整リソースを示す数値が高くなったといいます。すなわち、ペットと関わった休憩によって、仕事に対するやる気が生まれ、仕事に打ち込めるリソースが増えていたのです。
この効果は直接ペットと触れ合うだけでなく、ペットのかわいい姿を見つめるだけでも得られるのだといいます。
ペットが在宅ワーカーの小休憩をつくる
しかし、アンケートから得られたそれぞれの数値を5日間で集計し、それぞれの被験者のデータを比較すると、異なる結果が見えてきました。5日間の集計でペットと関わる休憩時間が長い人は、自己調整リソースが低い傾向にあったのです。つまり、ペットとの休憩は仕事のやる気を引き出すことには役立つものの、ペットと過ごす時間が長くなりすぎてしまうと実質的に仕事をする時間が減ってしまうということです。
とはいえ、ペットと関わる休憩時間が長い人は精神の健康の数値が高い傾向にありました。このことから、ペットと関わることで自己調整リソースが減ったことは、精神を安定させるのに必要だったという可能性もあります。
出社していれば同僚と少しおしゃべりをしたり、コーヒーブレイクを挟んだりして自然に小休憩がとれますが、在宅ワーカーは自ら休憩を定めなければなりません。1人では休憩の管理がなかなか難しいものですが、常にペットという「毛むくじゃらの同僚」がいることで、在宅勤務中でも特別意識せずちょっとした休憩をとれるようになります。ペットのおかげでうまれたちょっとした休憩が仕事のやる気向上と仕事のストレス緩和に大きく寄与しているようです。
時には相談相手にもなってくれるペット
人間と直接言葉での意思疎通がとれないペットですが、こちらの気持ちを理解しているように寄り添ってくれるときがあります。そんなときには人になかなか言えないような相談をペットに対してしてしまうという方も少なくないのではないでしょうか。
実際に、親しい人間よりも犬の方がネガティブな事柄について相談をしやすいという研究結果もあります。
参考:Self-disclosure with Dogs: Dog Owners’ and Non-dog Owners’ Willingness to Disclose Emotional Topics
なぜそのような結果になったのか結論は出ていませんが、ペットが意見を述べず、ただ聞いてくれることで、ネガティブな感情も恐れずに口に出すことができるためではないかと言われています。
我々が抱えている問題や悩みは、必ずしも相手から解決策が必要なわけではありません。聞いてもらうという体裁で言語化するだけでも、その本質に気づき解決につながることがあります。そのように考えると私たちの在宅勤務に寄り添う「毛むくじゃらの同僚」は仕事の上でも最良のパートナーなのかもしれませんね。