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大相撲名古屋場所が今日からスタート 出羽海親方が語る大の里への期待と、岩友親方の遺した功績の大きさ

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
話を伺った出羽海親方。名古屋場所のポスターでアピール(写真:すべて筆者撮影)

大相撲名古屋場所が今日、初日を迎えた。例年のうだるような暑さはまだ息を潜めているが、全日程満員御礼予定のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)は、熱気であふれることだろう。来年からは新設のIGアリーナに移行するため、この会場は今年で最後の開催となる。そんな節目となる今回の名古屋場所について、担当部長の出羽海親方(元幕内・小城乃花)にインタビュー。名古屋の思い出や土俵の見どころに加え、同じく名古屋場所担当で今月6日に急逝した岩友親方(元幕内・木村山)への思いについても伺った。

盛況の名古屋 亡き岩友親方への思いも

名古屋場所の担当になって今年で9年目を迎えた出羽海親方。すでに15日間全日程のチケットが完売しているこの状況は「本当に初めて。チケットはまだありますかという問い合わせが多くて、申し訳ないんですがまた来年来てくださいとしか言いようがないです」。前例のない盛り上がりの理由は何か。親方の分析はこうだ。

「やっぱり土俵が面白くなってきているんじゃないですか。3月(尊富士)、5月(大の里)と2場所連続で若手力士が優勝しているので、そういう期待が名古屋場所にもあるのかと思います」

また、愛知県体育館では最後の本場所開催ということもあり、慣れ親しんだ自身のデスクで、名古屋の思い出も語っていただいた。

「私は入門が名古屋場所で、幕下昇進も十両昇進も、そして引退も名古屋で、いまは名古屋の担当をしています。だから、名古屋には思い入れがあるんです」

初日前日に行われた土俵祭には、多くのファンが駆けつけた。ドルフィンズアリーナでの本場所は、今年が最後となる
初日前日に行われた土俵祭には、多くのファンが駆けつけた。ドルフィンズアリーナでの本場所は、今年が最後となる

出羽海親方の土俵人生の節目を彩った名古屋場所。その担当になった際、親方自身が指名して一緒に担当になった親方がいた。それが、今月急逝した岩友親方だ。沈痛な思いを聞いた。

「本当に早すぎました…。名古屋場所に関しては、岩友親方がすべてを把握していたので、彼を中心に仕事をしていました。ファン感謝祭なんかも、企画は彼が全部やったんです。いまは皆で協力し合って、それを補うようにやっていますけどね」

そう言って肩を落とす親方の机の横には、笑顔で収まる岩友親方の写真が数枚飾られていた。彼の功績は大きい。筆者は、胸が締め付けられるような痛みと、まだ信じたくない気持ちとで、飾られた写真を直視はできない。しかし、変わらずここでこうして、皆と一緒に場所を支えてくれている――。いまはただ、そう言い聞かせるしかない。

注目は「大の里と上位陣の意地」

出羽海親方には、今場所の土俵の見どころについても伺った。注目はとにかく、先場所優勝の大の里だと強調する。

「大の里がどれだけまた勝てるか。そして、横綱も出場しますから、上位陣がどれだけ意地を見せてくれるか。そこに尽きるんじゃないですかね。うちの部屋?そうですね、大きなケガもなく、みんなよく頑張っていますよ」

大の里は「どれだけ勝って大関への足掛かりを作れるか」、そして横綱大関は「そうは簡単にはさせないぞという意地」が見どころであり、最後のドルフィンズアリーナの盛り上がりになるだろうと締めくくった。出羽海親方の期待、そして岩友親方の遺した思いもこの熱気に乗せて、暑い、熱い名古屋場所が、いよいよ始まる。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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