巨額の賞金つき!ソフトバンクが月間2,500万円のアイデアコンテストを開催!AIを中心とした戦略とは
KNNポール神田です。
昨日(2023年6月21日)の株主総会での発表を受けて、年初来の高値を更新しているのが、『ソフトバンクグループ<9984>』だ。この期待感はどこからきているのだろうか? 6,937円の株価だった。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/9984.T/
四半期ごとの決算発表には登場しなくなった、孫正義会長兼社長が半年ぶりに、株主総会の議長として登壇し、発表したキーワードが『反転攻勢』だった。
■『反転攻勢へ』むけ、630件もの発明特許の申請へ
『人類の未来を向けてのアーキテクトの役割を果たしたい…』これが一番やりたかったことと株主総会で語る。
孫正義氏は、19歳の学生時代に右脳を駆使して、1年間に250件の発明をおこなったことを明かし、その後、経営者として45年間、左脳を駆使した経営だったが、この半年間に5つの特許事務所を通じて出願作業をおこなっているという。その数は630件、年内に1000件弱は発明を果たせそうだと語る。
そして、それだけではなく『ソフトバンク社長室』という直轄の部署を3交替制にし、24時間365日、孫氏のアイデアに対して、5分以内に返答がもどるという布陣を敷いているからこのAI事業に対しての、異常なまでの体制に驚く…。
これは、ひとえに、『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』などで500数社のAI関連事業に出資してきているにも関わらず、『OpenAI社』に出資できていなかったことへの後悔と悔しさがバネになっているようなものだ。
■毎月賞金2,500万円!社内AIアイデアコンテストに5.2万件の応募
発表の中で最もユニークだったのが、社内でのAI活用コンテスト制度だ。ソフトバンクの、グループ企業内で毎月『AI活用コンテスト』が開催されていたことだった。しかも1年間だ。それでも総額3億円だ。傘下のグループ企業には、通信のソフトバンク、YahooやLINEにZOZO、アスクル、そしてPayPayなどがある。それぞれのグループ会社の中から、10日間で5.2万件、1日、5,200件以上ものAI活用アイデアが応募されたこととなる。社内で、毎月2,500万円をかけ、AIの新規事業を練るというのも異例だが、それだけ、ソフトバンクグループ全社をあげてのAIへの本気ぶりを語る証拠となり得るだろう。自社の事業に対話型のAIが加わるとどんなことができるのか?その可能性を模索するのはとても良いアイデアだ。
■OpenAI社サム・アルトマンCEOとの密約は?
NHKの2023年6月12日 のニュースによると…
つまり、ビジョンファンドの出資では叶わなかったが、なんらかのOpenAI社とソフトバンクのグループ会社間の中での取り決めのアイデアが語られていたと考えるのは当然だろう。
もちろん、ソフトバンクのビジョンファンド所有の企業には、iPhoneなどのチップセットに採用されている『arm社』の存在もある。
かつて、『arm社』を『NVIDEA社』に売却するスキームでは、現金と株式交換が採用され、孫氏は『NVIDEA社』の筆頭株主になるという計画までがあった。
SBGの『3兆円-7500億円+62兆円』『ARM』の非売却現在価値とIPOの将来価値
https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20230501-00347821
2023年5月1日時点で、『NVIDEA』の株価は、277ドルで時価総額6,854億円だったが、ChatGPTなどでのGPU景気で、現在の株価は430ドルで、時価総額は1兆ドル超えだ。日本円で1ドル140円とすると140兆円の時価総額となる。もし、ソフトバンクが2/3の株式をもっていたら、それだけでも93兆円の時価総額の価値比率となっていた。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/NVDA?term=1y
NVIDEA社の時価総額はすでにテスラ社を抜き、Amazon社の次に迫っている。
■ソフトバンクグループ『反転攻勢へ』の意味するもの
このように、今回の株式総会発表時点での、ソフトバンクグループの強みを分析してみると下記のように考えられる。
1.OpenAI社、サムアルトマンCEOとの密約事項
長年の知人でありながら、Microsoftが40%の出資をしているOpenAI社に対して、なんらかの提案とすれば、まずはMicrosoftだけで身動きがとれない状態ではなく、同等の出資、いやそれ以上の出資の働きかけは当然あってしかるべきだろう。軍資金は5.1兆円もある。増資割当でMicrosoftの2倍だすということも十分に想定内だ。
かつてYahooの時も断られるよりも強引に出資を決めた実績があった。
また、Microsoftを敵にまわすよりも、穏やかにOpenAIとのシナジーを考える方法もある。三方良しの施策も考えられる。ソフトバンクKKでは、法人や自治体などのBtoB事業の売上もある。
2.グループ会社総動員のアイデアコンテスト
単なるアイデアコンテストではなく、社内の事情通がだしてくる提案、毎月1,000万円クラスのアイデアがでるということで、本業以上に精を出す社員がでてくる状況だろう。そこで発表がくりかえされながら、社内全体がAI事業を自分事として考える社風になっていく。
3.24時間365日、孫正義氏をささえる体制
5つもの特許事務所が孫氏のアイデアを出願し、直轄の社長室では3交替制でアイデアを5分以内に戻してくるという体制を作っている。
そして、何よりも、最後には、孫正義自身が、自ら、日夜ChatGPTで、いろんな施策を自問自答しながら壁打ちしながら考えているということだ。
何よりもこれが最強のアイデア出しとなっていることだろう。
経営者、投資家としての立場から、自らを、事業者のポジションにおいた孫正義の人生に悔いをのこないための、チャレンジは、2023年内になんらかの形で登場することだろう。