SBGの『3兆円-7500億円+62兆円』『ARM』の非売却現在価値とIPOの将来価値
KNNポール神田です。
ついにソフトバンクグループ(SBG)が100%保有する英ARM(アーム)が米国市場で上場申請したとロイターやFTが伝えた。
IRの発表会見から身を引いた孫正義CEOが『ARMに専念する』と語り、ようやくその結果が見えそうだ。
しかし、年内でのナスダック市場での調達額は80億〜100億ドルと報じられている。つまり、1兆880億円〜1兆136億円という調達額だ。
ARMを 『nVIDIA』へ売却する路線から大幅に変更しての保持した上での世界市場からの資金調達となる。
■一筋縄ではいかなかった『ARM』売却のビジネスモデル
巨額のボーダフォン、スプリントをはるかに凌ぐ3兆円を超える買収だった。
ソフトバンクの買収の歴史の中でも英ARM社の買収は、最大のもの
■3兆円で買って、2兆2.500億円の配当金を得て、4,000億円の課税を受けた。残ったARMの価値は7,500億円に。
2016年『ソフトバンク(現ソフトバンクG)』が、3兆円で買ったarmから、2兆2,500億円の配当益を得て、4,000億円の課税を支払う。結果として、1兆8,500億円の配当の非課税スキームとなった。そして、3億円で買ったARMの価値は7,500億円に。結果として、追徴課税の4,000億円を支払っても十分に配当が得て、7500億円の価値の下がったアームをSVF(ソフトバンクビジョンファンド)へ売却。
■2022年、mVIDIAへのARM売却のディールは4兆円そして、nVIDIAの筆頭株主。ARMを売ったら、おまけにnVIDIAがついてくるところだった…2/3の株式で現在価値は62.1億円に!
3兆円で買ったarmの価値は4兆円のディールに、筆頭株主となればNVIDIA時価総額63兆円の価値に…。
■4兆円のディール内容は…
1/3(1兆3,333億円)が現金、2/3(2兆6,666億円分)は、NVIIDIAの株となり、ソフトバンクグループは、nVIDIAの筆頭株主となる予定だった。
それでも、3兆円のarmから2兆2,500億円の配当があり、7,500億円のarmが4兆円(5.3倍)の価値となり、そして、結果としてarmのNVIDIAへの売却がなくなった。
ディールを元に考えると、最大 NVIDIAの時価総額63兆円とはいかなくても、最低でも、NVIDIAから、現金でもらえるはずだった1/3の価値はあると考えられる。
それを現在のNVIDIAの時価総額で考えると21兆円ほどだった。
しかしだ!
現在のnVIDIAの時価総額は、6854億ドル @136円でなんと、93兆2,144億円と、当時の1.5倍だ。2/3の株式だと なんと62.1兆円の時価総額と逃した魚の大きさがわかる…。
■2021年、買収に失敗してもお釣りが巨大なケースもあり!
2021年9月7日 SprintによるTmobileの買収も失敗したが、結局はドイツテレコムの大株主となった。ドイツテレコムの親会社はドイツ金融公庫、ドイツ政府、そしてソフトバンクGと民間では筆頭株主の座におさまった。
つまり、Tモバイルの買収に失敗しても親会社のドイツテレコムの大株主になったのだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB077O70X00C21A9000000/
このように、転んでもただでは起きないのが、ソフトバンクGの流儀だ。
今回のARMのIPOも、プランA プランB といろんなリスクヘッジが入念に用意されていることだろう。
ここからは、筆者の想定だが、孫正義氏のアクションをChatGPTように想定してみたい。
■『アリババ』亡きあとの『ARM』にかける上場益の理由
2023年2月時点の3ヶ月前のソフトバンクGの保有株式の価値は16.9兆円だ。2021年の24.7兆円から▲7.8兆円が溶けたことに…。
アリババは全株売却ということで2兆円近くの現金化は2023年Q4には見込める。
そして、今回の『ARM(アーム)非上場』が『IPO(株式上場)』を2024年3月期のQ1(2023年4から6月)Q2(7〜9月)Q3(10〜12月)に米国でのIPOを実現できれば、現在価値の2.6兆円に上場益が現金で入り、時価総額で株式価値が変わる。つまり、ソフトバンクGの保有株式価値の順位が大きく変わりそうだ。
ネガティブ要素は米国株全体の下落が回復するタイミングが読めないところだ。おそらくハイテク株が集まる『NASDAQ』でのIPOが想定されるが『いつ』IPOするのかが重要だ。そのタイミングで資金調達金額が大きく変わるからだ。
もしも、ネガティブに考え、『ARM』のIPOも今までのようにどこでどうなるかは本当にわからない…。そうなると『SBKK』も売却?というシナリオもBプランとしてあるのか? …いやそれはない。『SBKK』は株価だけではない実業での儲けの仕組みがいくつも存在している。
■『ARM』だけではない『PayPay』IPOの可能性
通信会社でもあり、ソフトバンクGの100%子会社の『SBKK(ソフトバンクKK)』の存在はソフトバンクGの子会社でも特殊な存在だ。
本来の『ソフトバンクG』はソフトバンクKKからスピンアウトしたホールディングス組織だったからだ。
https://www.softbank.jp/corp/ir/documents/presentations/fy2022/
なぜ?『ソフトバンクKK』が特殊かというと『通信事業』『法人事業』『流通事業』『金融事業』『ヤフーLINE』のポートフォリオを持つからだ。
今や、ソフトバンクKKの売上4兆3455億円(Q3累計)の26.9%の1兆1,696億円と3割に近い。
『Zホールディングス』や新サービス名となる『LINEヤフー(合併は2023年10月1日)』を傘下に持つ。その傘下には『ZOZOTOWN』や『ASKUL』『出前館』などがある。
そして、『PayPay』も『PayPay証券』『PaPayカード』という複雑な関係企業が存在する。
これらの『PayPay』関連事業の統合が進みIPOを果たすと、ソフトバンクKKのみならず、ソフトバンクGの株価だけではない旨味が加わる事となる。
ただ、中間会社が多く存在し、複雑な形態となっている。
しかしながら、『PayPay』が『ARM』のIPOに続いて、ソフトバンクGやソフトバンクKKの成長エンジンとなることは明確だろう。
赤字も縮小しながら、『給与デジタル払い 解禁』などでの流通総額の増大も期待できるからだ。
■『ソフトバンクG』のアリババ株3兆6,996億円の内訳
+3,596億円+2兆6,065億円 =※約3兆円
※為替差額およびソフトバンクG子会社連結のSVFや汐留事業17号との誤差も含まれた金額 2023年4月の+9,600億円は含まれていない
2023年2月7日発表のソフトバンクグループの2023年3月期Q3資料では、
アリババ関連利益3.6兆円を計上したがSBF(ソフトバンクビジョンファンド)の損失5兆円の穴埋めにはならず、1.3兆円の投資損失を発表。
アリババ株関連取引利益 +3596億円
アリババ株関連取引利益+2兆6,065億円
100%子会社の汐留事業17号合同会社(連結対象)に、+2.96兆円移動
アリババ株関連取引利益2023年4月 +9600億円
次回のソフトバンクGの2023年3月期の連結決算の発表は 2023年5月11日木曜日に開催される。データシートなどもこちらですべて開示されている。
https://group.softbank/event/earnings_2022q4
https://www.youtube.com/c/SoftBankGroup
■『SBG』の『アリババ』という名の打ち出の小槌 全株売却 株価はほぼ底値 84.69ドルで推移…。
アリババは、2014年9月19日にニューヨーク証券取引所『NYSE』に『BABA』で上場。
その後中国政府との対立が深まり、創業者のジャック・マーが2019年9月10日に会長職を退任し、2019年11月26日にアリババグループの親企業ある『アリババ・グループ・ホールディング』は、香港証券取引所にも二次上場。取引銘柄名は『9988.HK』.
現在の米国ドルは、@136.25円
アリババグループ の株価は84.69米ドル(2023年4月28日)
時価総額は 2,191億ドル(約29.7兆円)
現在の香港ドルは、@17.36円
アリババグループ の株価は82.05香港ドル(2023年4月28日)
時価総額は、1.66兆香港ドル(28.81兆円)
ソフトバンクGがアリババ株を現金化した時期はいずれも株価が最盛期の半値を下げた頃。資金調達をした『守りの経営』という名の泣く泣くの台所事情だ。
本来であれば、株価の回復を待ってから、それを担保に融資なども考えられたが、むしろ『投資事業』がメインであり、ある意味、一本足打法であるので、時価総額の積み重ねで、株価などの景気の影響が直撃となる。未公開株も査定の上だ。
『ソフトバンクG』の本当の収益源は『株式投資』だけではない『実業』からの『配当金』であったりグループ企業同士を有機的にネットワーク化した『グループシナジー』であるべきだろう。
AI企業がこれだけ注目される中、ソフトバンクGが種を撒いた名だたるユニコーンのAI企業群がこのまま鳴かず飛ばずというのは考えられない。
『NAV(NetAsset Value)』が健全なうちに、次の一手もほしいところだ。
NAV= 保有株式価値-調整後純有利子負債
■『LTV』とはLoan to Value 調整後純有利子負債÷保有株式価値
財務の安定性を確保するという観点から、ソフトバンクグループ(株)の
LTV(Loan to Value、調整後純有利子負債÷保有株式価値で算出
保有資産に対する負債の割合
https://group.softbank/ir/investors/management_policy