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サマソニ出演決定! 横浜のローカルアイドル・nuance(ヌュアンス)インタビュー

宗像明将音楽評論家
nuance(ヌュアンス)(提供:ミニマリング・スタジオ)

 夏フェスの代表格のひとつ「SUMMER SONIC 2018」への出演が決まったnuance(ヌュアンス)。しかし、彼女たちがどんな存在かを知る人はまだまだ少ないだろう。

 カタカナ表記は「ヌュアンス」とされるnuanceは、横浜の商店街イベントから生まれたローカルアイドルグループ。こう紹介するととても地味なグループに思えるが、楽曲のクオリティの高さやアートワークの洗練ぶり、さらには写真家のハービー・山口が撮影したCDジャケット(『mirai circus(ミライサーカス)』)などが、局地的かつ熱狂的な支持を得てきたグループだ。

ハービー・山口撮影によるnuance(ヌュアンス)「mirai circus(ミライサーカス)」CAMPFIRE限定盤のジャケット(提供:ミニマリング・スタジオ)
ハービー・山口撮影によるnuance(ヌュアンス)「mirai circus(ミライサーカス)」CAMPFIRE限定盤のジャケット(提供:ミニマリング・スタジオ)

 そのnuanceへの評価が決定的なものになったのは、2017年12月21日に横浜クリフサイドで開催されたワンマンライヴだった。クリフサイドは創業1946年のダンスホール。そんな場所で開催されたnuanceのワンマンライヴは、真の意味で横浜の歴史と文化を背負った感動的なものだった。

 そのクリフサイドで発表されたのが、2018年6月27日の渋谷TSUTAYA O-WESTでのワンマンライヴだった。TSUTAYA O-WESTのキャパは約600人。「正気か」と思ったが、あれから半年の間にnuanceは急成長を見せ、「SUMMER SONIC 2018」への出演も決めてしまった。

 nuanceとはそもそもどんなグループなのか。nuanceのmisaki、珠理、わか、みおに話を聞きくと、そこで明かされたのは、取材当日である2018年4月30日に予定されていた、衝撃的な「あるライヴ」であった。

nuance(ヌュアンス)。左からわか、みお、珠理、misaki(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)。左からわか、みお、珠理、misaki(提供:ミニマリング・スタジオ)

4人中3人が親のすすめでアイドルに

――もともとnuanceは、横浜市商店街総連合会が主催の「ガチでうまい横浜の商店街 ○○No.1決定戦」のテーマソングを歌うアイドルとして結成されたグループですが、みなさんがオーディションを受けたきっかけはなんでしょうか?

わか  もともと高校の先輩が「HAMAJO」(nuanceをマネージメントするミニマリング・スタジオが手がけるフリーペーパーやインターネット配信)のモデルをしていて、すごく憧れだったんですよ。その人がTwitterでアイドル部門が始まることをツイートしてて、それを見て応募しました。

――それまで好きなアイドルはいましたか?

わか  私はずっとAKB48さんが好きで、今でも握手会とかよく行ってます。最初はこじはる(小嶋陽菜)が好きだったんですけど卒業されたんで、今はいろんな人を転々としてます。

――もともとアイドルにはなりたかったのでしょうか?

わか  んー……。好きではあったんですけど、なりたいとはそんなに思ってなくて。でも、なってみたらすごく楽しいので、もしかしたらなりたい気持ちもあったのかなーって今では思います。

――じゃあ最初はどっちかというとノリみたいな?

わか  そうですね、ノリで。

――misakiさんがオーディションを受けたきっかけはなんだったのでしょうか?

misaki  お母さんがHAMOJOを読んでて、「HAMAJOのモデルのオーディションを受けたらー?」ってお母さんが私にURLを送ってきたんですよ。それでURLをタップしたら、送り間違えたのかわかんないんですけど、nuanceのオーディションの画面が出たんですよ。で、「これを受けろってことか」って思って、それを受けて……(笑)。

――え、いきなりで抵抗はなかったんですか?

misaki  抵抗はなかったです。そのとき大学1年生がちょうど終わったぐらいだったんですけど、すごく暇だったし、そういうことをしたかったから「やってみよー」って思って。私、横浜大好きだから、横浜のアイドルになったらもっと詳しくなれるかもしれないと思って。あと、募集要項に「乃木坂46」って書いてあって、「なんかすごそう!」って思って(笑)。

――佐藤嘉風(さとうかふう)さん(シンガソングライター。乃木坂46の『渋谷ブルース』の作曲を担当)がnuanceのサウンド・プロデューサーですからね。

misaki  そうなんです。とりあえずやってみようって思ったら「二次審査も来て」と連絡が来て「おー!(拍手)」みたいな感じでした。

――それまで好きなアイドルはいたんですか?

misaki  AKB48さんとか欅坂46さんとか、曲は好きで聴いてたけど、アイドルを追っかけたことはなくて。だからいざアイドルを始めても自分が何をしたらいいかがよくわかんなくて、わかちゃんとかが色々教えてくれて……。

わか  え……教えてる?(笑)

misaki  自撮りのアプリはこれがいいみたいな(笑)。

――珠理さんはどういうきっかけでオーディションを受けたのでしょうか?

珠理  私も母がオーディションのチラシを持ってきたので「やりまーす」って言いました。

――なんでそんなにノリが軽かったんですか?

珠理  その前に乃木坂46さんのオーディションを受けて落ちて、ちょっと病んでて。そしたら「これ乃木坂46って書いてあるから、ほら!」って言われて、「わかったじゃあ受ける!」ってなったんです。

――乃木坂46のオーディションはどこまでいったんですか?

珠理  書類が通って面接は行きましたけどダメでした。

――じゃあ、nuanceに受かったときはけっこう嬉しかったんじゃないですか?

珠理  まぁ嬉しかったです。

――「まぁ嬉しかった」って微妙な(笑)。

珠理  受かったときに「本当にここでいいのか」と勝手に悩んでました。

――みおさんはどういうきっかけでオーディションを受けたのでしょうか。

みお  そのときのバイト先が、「ガチでうまい横浜の商店街揚げものNo.1決定戦『ガチあげ!』」の金賞を取った居酒屋で、そこのお店のTwitterに流れてきて、お母さんが「ワンチャンいけんじゃん?」って言うのでノリで受けました。

――みおさんはアイドルになりたい気持ちはあったのでしょうか?

みお  いや……特に……。ちょうど高校1年生になった年だったから、暇そうだし、新生活だからやってみようかなって。

――温度差がいろいろありますが、4人中3人が親のすすめで受けているって、すごいですね横浜は。みなさん横浜在住なんですか?

全員  そうです。

nuance(ヌュアンス)のmisaki(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)のmisaki(提供:ミニマリング・スタジオ)

ライヴ、帰宅、そしてお風呂で病む

――2017年4月に結成されて、2017年5月から実際に歌ったり踊ったりして、感触はいかがでしたか?

misaki  想像よりは忙しかったです。逆にそこまでのヴィジョンがなくて、「どれぐらい忙しいんだろう? どんなことをするんだろう?」と行ったから「あ、こういうことをするんだ」っていう驚きがありました。

わか  確かに。なんかこんなにちゃんと活動すると思ってなくて……。がっつり歌って踊るし、すごい……ね……疲れるよね(笑)。体力が最初はすごくなくて、息切れがやばかったです。

――珠理さんはInstagramのストーリーで病むようになったり、いろいろあると思いますけど(笑)。

珠理  本当にそれですよね! 病んでるわけじゃないんですけど、世間一般から見ると病んでるのかな。私は短大にも通ってて、1年生のときに半年間丸1日休みの日が本当になかったんです。そんな生活をしてたら誰でも病むんですよ。……今、ストーリーの弁解をしている(笑)。だけど、ライヴや物販をやって、家のお風呂に入るまではめっちゃ楽しいんです。

――お風呂で何があるんですか?

珠理  お風呂に入ると「あ~!」ってなっちゃって、今後のことが大丈夫か不安になってくるんです。そのお風呂から寝るまでの2時間ぐらいでめっちゃ病むっていう。

misaki  お風呂に入んなきゃいいんじゃない?

珠理  でも、本当に活動自体は楽しいし、私もアイドルもめっちゃ好きだから、対バンに出て好きなアイドルさんがいるとめっちゃ楽しいし、職権乱用させていただいてます。

――一番大変そうだったのは、短大の実習に行ってる時期でしたよね?

珠理  そうなんです。去年3回あって、もうそこは地獄で。まぁ今年も6月が実習なんですよね。

――TSUTAYA O-WESTの前に……。

珠理  6月は本当にずっと実習で、ちょっとやばいなと思って……。

――みおさんはノリでアイドルになってみていかがでしたか?

みお  もともと韓国のアイドルが好きだったんですけど、韓国のアイドルさんたちの生活ってすごいじゃないですか。十何時間もダンスレッスンをしてるのも知ってるから、「これでいいのかな?」的なところはあります。

――ちなみに韓国のアイドルは誰が好きなのでしょうか?

みお  Red Velvetさん、EXIDさん、あと最近はMOMOLANDさんとか。韓国の女の人たちが好きです。

――ノリで受けたわりには腹がすわってますね。misakiさんはいかがですか?

misaki  大変だったことと良かったことが両方あって。大変だったのは、今まで中高女子校だし、大学も自由なところで、生暖かい環境で生きてたので、あんまり協調性を意識したことがなくて。でも、nuanceが始まったら、メンバー4人とマネージャーさんとプロデューサーさんの6人でずっと一緒にいる環境で、初めて私には協調性がないんだなってことを学びました。でも、良かったこともいっぱいあって。私は服とかお化粧にあんまり興味がないけど、みんなはすごくいろいろ知ってて。あと、アイドルさんはあまり聴かなかったけど、いろいろ聴くようになって、フィロソフィーのダンスさんにもけっこうハマっちゃって。知らない世界を知れたのはめちゃ良かったなって思います。

――きれいにまとまりましたね。

misaki  考えたかいがありました!

nuance(ヌュアンス)の珠理(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)の珠理(提供:ミニマリング・スタジオ)

4月30日で2人脱退の予定だった

――でも、さすがにこの1年間で辞めたくなったこともあったんじゃないですか?

珠理  1年のうちの8割は辞めたいって思って暮らしてました。

――だいたい9.6ヶ月は辞めたいって思っていたんですね。それはなぜでしょう?

珠理  学校がつらすぎて。私が学校に行ってたらnuanceはできないし、nuanceをやってたら学校に行けないし、どうしたらいいんだってなって、「じゃあ辞めよう」みたいな。

――「辞めます」って口にしたことはあるんですか?

珠理  毎日言ってました。でも、親にも「自分で始めたんだったらやりなさい」って言われて。

――今この瞬間は辞めたいって気持ちが何%ぐらいでしょうか?

珠理  今は20%ぐらいです。最近は基本的に20%ぐらいで、0%はないけど、20%以上もないみたいな感じです。

――わかさんはどうでしょうか?

わか  ……ほぼないです!

――ポジティヴですね!

わか  そうなんですよ。あんまり病まなくて(笑)。私も大学が大変なんですけど、忙しいほど楽しい部分もあるので、そんなにつらくないですね。

――みおさんはいかがでしょうか?

みお  去年の9月ぐらいはバイトもやってたけど、nuanceがあるからシフトを多く出せなくて。そのときはnuanceよりも、すごくバイトしたくて(笑)。

全員  (爆笑)

みお  プラスいろいろやりたくて……。

わか  高校生だからね。

みお  そう、ちょっと若かったんですよ。それで、めっちゃ辞めたいって思ったときが……。

――みおさん、たくさんピアスが開いてますよね。何個開けているんですか?

みお  片方が6個、もう片方が1個だけ開いてます。

――なんでそんなに開けるんですか?

みお  わ、若くて(笑)。

――すべてを若さに結びつけてきますね(笑)。

みお  2つ開けたのは、年少のときだったんですよ。

――年少っていうのは少年院ですか?

全員  (爆笑)

みお  違う! 幼稚園です(笑)。親に開けられたんですよ、お姉ちゃんがいて一緒に。

――親御さんはヤンキーでいらっしゃるんですか……?

みお  普通です(笑)。幼稚園の頃から開きっぱなしです。

――misakiさんは辞めたくなったことはあるでしょうか?

misaki  ん~ないかなぁ?(笑)

わか・珠理・みお  あれ? あれ?(笑)

――完全に今のは「辞めたい」って言ったことがある人の反応ですね。

misaki  まぁあります(笑)。

わか・珠理  なんで1回嘘ついたの(笑)。

――理由はなんだったんですか?

misaki  別に「こうだから」みたいなのがあったわけじゃなくて。「このままでいいのかな」って思うときもあったし、本格的に辞めたいなって思って、プロデューサーさんに「辞めます」と言ったら「本当に辞めるの? あと1週間考えてきて」と言われて、1週間考えて「やっぱり辞めます」って。「じゃあ1週間後ぐらいにはオフィシャルサイトで発表するから」と言われて、「じゃあ4月いっぱい頑張ろう、nuanceを最後頑張ろう」となってたんですけど、いろいろあって続けます(笑)。

全員  (爆笑)

――4月で辞める気だったんですか?

misaki  本当は今日で終わりで、今夜yoshidamachi Lily(横浜市中区吉田町にあるコミュニティースペース。nuanceの定期公演『ヌュマ』の開催場所)で卒業公演をやる予定だったんですよ(笑)。

――え!? パラレルワールドでは今夜卒業公演をやっていたはずなんですか?

misaki  ってゆう夢をみたんですよ(笑)。

――なぜそこまで悩んだのでしょうか? みんなの雰囲気からして、すでに解決している問題なんだろうとはわかるんですけど。

misaki  解決済みだけど、なんかまぁ、あるじゃないですか?(笑) 私はリスペクトはしてるけど、プロデューサーさんがすごく変な人だから、私も変な人なので一緒にいると「わー!」ってなるじゃないですか(笑)。それで4月30日に本当に辞めようと思ってました(笑)。でも、まぁいろいろあってもう全然平気です。

――良かったです。どこで考え直したのでしょうか?

misaki  yoshidamachi Lilyにメンバーと集合していろいろ話して、もうちょっと頑張ってみたいなと思いました。

――メンバーと話し合うことによって解決する話だったんですね。

misaki  まぁそうです。プロデューサーさんも優しくしてくれるから、ちょっと頑張ろうって思って。でも、「新メンバーは誰になるんだろうねー」みたいな時期もちょいあり……。

――めちゃくちゃ具体的に決まってたじゃないですか! 珠理さんはそれを聞いてどう思いましたか?

珠理  私も本当は同じタイミングで辞めようって思ってて(笑)。なんかいろいろ嫌になっちゃって。

――言える範囲でどういうことで? プロデューサーさんが嫌になったとか?

珠理  そうそう。

フジサキケンタロウ(nuanceプロデューサー。nuanceが所属するミニマリング・スタジオのCEO) 理由の過半数は僕ですよ。

misaki  でも、珠理は「辞める辞める詐欺」みたいな(笑)。

珠理  え、あの時はマジで辞めようと思ってたよ!

――でも、そこから残ることにしたのはどうしてでしょうか?

珠理  misakiが辞めるって言ってたから、さすがに2人辞めるのはまずいなって思って。で、とりあえず「辞めません」って言いました。misakiが4月で辞めるなら、じゃあ私は6月まで頑張ろうって思いました。でも、そこから1週間ぐらい考えた結果、私はソロ曲(『ハチミツ片想い』)があるんですけど、それをまだ1回しか歌ったことがないのにお蔵入りにもなるわ、衣装はもう着なくなるわ……。私がいなくてもnuanceは成り立つとは思ってるけど、ここで辞めたらちょっとかっこ悪いなと思って、まだ一応います。

――わかさんは2人の話を聞いたときはいかがでしたか?

わか  え~……すごく悲しかった。

――みおさんは?

みお  え~……メンバーの中でもいろいろあって、「辞める、辞めない、辞める、辞めない」みたいな感じだったから、みおは続けようって思ってたし、「どっちかにしてよ!」って感じでした。3人残るんだったら、このまま4人でやりたいって言って、4人で続けようということになりました。

nuance(ヌュアンス)のわか(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)のわか(提供:ミニマリング・スタジオ)

商店街ツアー、そして家から2分の場所でライヴ

――インタビュー前半のはずなんですけど、突然山場を迎えた感じになりましたね(笑)。nuanceは活動形態が独特じゃないですか。商店街ツアーを何度もやっていたり。この間の商店街ツアーで衝撃的だったのは、民家の裏で歌っている光景でした。商店街ツアーで地元の人のnuanceへの反応はありますか?

misaki  地元の人の声、聞いたことなくない?

珠理  ないかも。「なんかいる~」って言ってどっか行っちゃう。

わか  地元の人とはそんなに触れ合ったことないよね。ちびっこが見てくれたりして、すごく嬉しいんですけど、まだ話したことはないよね。

misaki  商店街のお祭りの一部とかでやってて、盛りあげる一助にはなったかもしれないけど、そこにいる人たちをファンにしたわけじゃないのかな。でも、都内の人が横浜の商店街に興味を持つきっかけにはなれたのかなって思います。

珠理  商店街のお祭りとかに行った時は、地元の人も遠くから眺めてくれるから、今後商店街ツアーをやるなら、そういう人といかに交流できるかが課題だなって思いました。

わか  でも、私達も横浜に住んでるけど、全然知らない商店街にいっぱい行くことが多いから、いろんなところに行けるのはすごく嬉しい!

――みおさんはいかがですか?

みお  1回だけ、家にめっちゃ近いところでやったことがあって。「2分歩けば家」みたいな。そこでやったときはマジで帰りたかったです(笑)。周りもみんな知り合いみたいな(笑)。あれは本当に嫌だった……(笑)。

――みおさんは活動を周囲に言ってなかったんですか?

みお  話してないから、知られるのが嫌で(笑)。でも、思いっきりみんなに知られました(笑)。

nuance(ヌュアンス)のみお(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)のみお(提供:ミニマリング・スタジオ)

横浜っていう街を背負ってるんで

――最近は対バンも増えていますが、他のアイドルと比べて自分たちが独特だなと思うところはありますか? ステージに上がるときにイスを持っていくところ(※小道具として使用する)とか。

misaki  衣装とかけっこう違う……。

珠理  なんだろう……曲とか?

わか  振り付けとかも独特だから、振りコピとかしてくださる人が大変そうだなって(笑)。私たちも覚えるの大変なので……。

珠理  全般的に大人って感じですよね。……すごいドヤ顔で言っちゃった(笑)。

――いいですよ、ドヤって(笑)。洗練されてますよね。

珠理  キャピキャピしてないし。横浜っていう街を背負ってるんで。

――なんで急に口調がヤンキーっぽくなるんですか(笑)。

珠理  衣装も大人っぽい感じで、曲も良くて、振りも良くて。あんまり自分の曲を聴かないんですけど、最近「青春の疑問符」と「i=envY」にめっちゃハマってて聴いてます。だからnuanceっていう存在はもうnuanceでしかなくて、他と比べるとかそういうんじゃないと思います。

――みおさんはいかがでしょうか?

みお  あんまり他のアイドルさんのことは詳しくはないんですけど、「明らかにお金がかかってんだろうな」的なのは感じます(笑)。稼がないとなぁ(笑)。

nuanceの「ハマ民」らしさ

――さっき珠理さんが「横浜っていう街を背負ってるんで」と言ってましたけど、nuanceの横浜っぽさってどんなところにあると思います?

珠理  「yokohama sweet side story」は横浜感があります。

misaki  でも、「横浜っぽさを出していかなくてもいいんじゃない?」みたいなところはあります。ワンマンライヴも渋谷でやるし。そこはプロデューサーさんの意向だと思います。アルバムも最初横浜っぽさがあったけど、3枚目のアルバム(『mirai circus』)は「nuance」という世界観みたいになってきたから、「横浜に帰ってくる時に爆発的に売れて帰ってくるぞ」的なノリなのかなって。

わか  確かに。でも、定期公演はyoshidamachi Lilyでしかやらないよね。

みお  商店街ツアーとかは横浜だから、そういう面では横浜……「ハマ民」だなって。

わか・珠理・misaki  ハマ民って何!?(爆笑)

珠理  「ハマっ子」じゃないの?

misaki  ヤンキーっぽい、ちょっと治安が悪い!(笑)

――横浜と言うと、2017年12月21日のクリフサイドを見て非常に感動したんですよ。横浜の文化と歴史を背負っていて。横浜の人でも、実際にクリフサイドに入ったことがある人はそんなにいないんですよね。あそこでライヴをやった感想はいかがでしたか?

珠理  お洒落でした。建物もお洒落だったし、従業員の人もおばあちゃんとおじいちゃんが働いてて、それが珠理の中でめっちゃエモくて。ライヴハウスだと若い人しかいないじゃないですか? でも、クリフサイドはおじいちゃんとおばあちゃんが掃除してたり、ドリンクを出したりしてて、珠理たちみたいな小娘たちのためにおじいちゃんとおばあちゃんが働いてくれるのが嬉しくて嬉しくて。

――確かにドリンクをもらいにいった時に、ご年配の男女の方々が制服をビシッと決めていて驚きました。

珠理  「すごく歴史がある!」って思って、そういうのがすごく良かったです。

わか  幻みたいでした。伝説のように記憶に残ってて。でも、やっぱり横浜の伝統的な場所でできたのはすごく嬉しかったです。

misaki  めちゃくちゃ用意したから、本番はすごくやりきったなって感じがしたし、終わった時は「あー、これでひと段落した」ってホッとした気持ちもあって。クリフサイドはすごく広いところだったから、いっぱい人を集めなきゃいけないっていう責任感もあったから、成功したから良かったなって安堵した記憶があります。

みお  みおは初めて聞いた場所で……。

――ハマ民でも知らない場所(笑)。

みお  そう(笑)。でも、みんながよくライヴに使ってるライヴハウスでやらないあたりがnuanceっぽいなって思いました。

nuance(ヌュアンス)。左からみお、珠理、misaki、わか(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)。左からみお、珠理、misaki、わか(提供:ミニマリング・スタジオ)

プロデューサーの辞書に「段階」という言葉はない?

――クリフサイドで、2018年6月27日の渋谷TSUTAYA O-WESTの発表がありましたね。TSUTAYA O-WESTでやると聞いてどう思いましたか?

珠理  頭おかしいと思った。

misaki  TSUTAYA O-WESTはキャパが大きいって聞いたけど、実際に会場をまだ見に行ったことがなくてビビってます。(みおに)ハマ民もビビってる?

みお  うん。ビビりまくりだよね。

わか  やばいよね。

珠理  「段階」って言葉はプロデューサーさんの辞書にないんだろうなって思いました。

――TSUTAYA O-WESTでのライヴのイメージはそろそろ湧いてきていますか?

わか  すごく楽しみなんですけど、新しい曲とかまだそんなに練習してないから、大丈夫かなって思ってます。頑張らなきゃなって思ってます。

misaki  クリフサイドと同じじゃつまんないから、違ったところを見せたいなと思ってます。

珠理  私、友達にまだアイドルをやってるって言ってないんです。でも、TSUTAYA O-WESTに人がいっぱい来たら呼ぼうかなって思ってて。友達、2人しかいないんですけど。なんかかっこよくないですか? バンドがあって、めっちゃ広い会場に人がいっぱいいたら。だからバンドの音に負けないぐらい歌も頑張んなきゃいけないし、ダンスもちゃんと踊らなきゃいけないし、でも実習もあるし。ワンマンライヴが復帰ライヴなんですよね。でも、めちゃめちゃかっこいいライヴにしたいし、楽しみが6割、不安が4割ぐらいでやってます。

みお  んー……今までやってきた中で一番良い、お互いが楽しめるものにしたいなと思ってます。こっち側は普段以上に楽しんで、お客さんも人それぞれに楽しんでくれたらなって。

――しかも2組バンドが出演するんですよね。どういう編成なのでしょうか?

フジサキケンタロウ  以下の構成です。

佐藤嘉風(gt) / 斎藤渉(key) / U(dr)

masato(gt:METROPOLIS de ONELIA / ex.SuG) / 奥泰正(b:THE WELL WELLS) / 辰己裕二郎(dr:花団)

円山天使(gt)

――と言われて、メンバーのみなさんはいかがですか?

わか  やばいね(笑)。クリフサイドのワンマンライヴから今までもあっという間だから、今からTSUTAYA O-WESTまでも秒で終わるなって。すごくやばい。

珠理  「バンドかあ」って……生音ってどうなんだろうってすごく思います。

わか  やったことないからね。

みお  えー……もう全然想像がつかない。

misaki  高校生の時とか、nuanceに入る前は弾き語りしたり、バンドも好きだったりしたので、バンドの演奏で歌えることはすごく嬉しいんです。でも、バンドに合わせて踊るって、どうなるんだろうって思って。だけど、成功したらきっとかっこいいライヴになるんじゃないかなって思ってます。

――良かったです、misakiさんと珠理さんがいるTSUTAYA O-WESTになって。

珠理  (時計を見て)今ちょうど19時30分だから、卒業ライヴだったら開演かな?

――その世界線じゃなくて良かったですよ。TSUTAYA O-WEST、4人で頑張ってください!

全員  ありがとうございます!

nuance(ヌュアンス)の2018年6月27日の渋谷TSUTAYA O-WESTワンマンライヴのフライヤー(提供:ミニマリング・スタジオ)
nuance(ヌュアンス)の2018年6月27日の渋谷TSUTAYA O-WESTワンマンライヴのフライヤー(提供:ミニマリング・スタジオ)
2018年6月発売のnuance(ヌュアンス)「ongen e.p.」のジャケット(提供:ミニマリング・スタジオ)
2018年6月発売のnuance(ヌュアンス)「ongen e.p.」のジャケット(提供:ミニマリング・スタジオ)

 結成から1年強で「SUMMER SONIC 2018」への出演が決定したnuanceが、人知れず波乱万丈の歴史を歩んできたグループであることを私もこのインタビューで初めて知ることになった。ステージ上のnuanceはいつもエレガントで、メンバーの葛藤など微塵も感じさせないからだ。そんなnuanceが初めてバンド・セットで挑むTSUTAYA O-WESTでのワンマンライヴは、まさに夏への前哨戦。たとえ渋谷でも、そこにはきっと横浜の匂いがしているはずだ。

2018年7月15日に開催されるnuance(ヌュアンス)主催の「フェヌュ」のフライヤー(提供:ミニマリング・スタジオ)
2018年7月15日に開催されるnuance(ヌュアンス)主催の「フェヌュ」のフライヤー(提供:ミニマリング・スタジオ)
音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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