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フジテレビ「韓国・文喜相国会議長が国際会議をドタキャン 訪日延期」と誤報

楊井人文弁護士
2017年5月、韓国大統領特使として来日した文喜相国会議長と安倍晋三首相(写真:ロイター/アフロ)

 フジテレビ(FNN)は11月2日、「韓国国会議長が国際会議をドタキャン」というタイトルで、韓国の文喜相国会議長が3日の来日予定を延期し、4日に東京で開かれるG20国会議長会議への出席を取りやめると報じたが、誤報だったことが明らかになった。文議長は3日午後に来日し、複数のメディアが報道。4日未明になって、FNNの記事と動画がニュースサイトから削除されたことが確認された。

FNN PRIMEに配信されていたニュース動画より(現在は削除)
FNN PRIMEに配信されていたニュース動画より(現在は削除)

 FNNは、ニュースサイトで次のように報じていた(動画もほぼ同内容)。

韓国国会議長が国際会議ドタキャン 日本訪問を延期

韓国の国会議長が国際会議をドタキャン。

日本訪問を延期。

慰安婦問題をめぐり、「天皇の謝罪が必要」などと発言した、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が、4日に東京で開かれるG20国会議長会議への出席を直前になって取りやめたことが、FNNの取材でわかった。

3日の来日予定を5日に延期する見通し。

文議長に対しては、山東参議院議長が発言の撤回と謝罪を求める書簡を送っていた。

文議長は5日に都内で講演を予定しており、問題の発言後、初めての日本訪問となる。

出典:FNN PRIME(2019年11月2日掲載、4日削除)

 ニュースサイト「FNN PRIME」にニュース動画とともに2日未明に配信されると、Yahoo!ニュースやスマートニュースにも掲載され、ネット上には文議長を揶揄するコメントが多数上がっていた。Yahoo!ニュースの記事も削除されている。

 しかし、文議長が3日午後、羽田空港に到着した様子をテレビ朝日(ANN)などが報道。韓国メディアも報じた(朝鮮日報)。FNNの記事と動画は4日未明まで閲覧できる状態だったが、削除された。今のところ「FNN PRIME」などに明確な訂正記事は確認できていない(4日正午現在)。文議長が予定どおりG20国会議長会議に出席したことも報じられた(産経新聞)。

 文議長が訪日を延期し、G20国会議長会議への出席をとりやめるという報道はフジテレビしかしていなかった。韓国メディアは予定どおり3日出発する予定と報じていたため、一部では誤報の疑いも指摘されていた。

フジテレビのニュース番組(11月4日11時半すぎ)より
フジテレビのニュース番組(11月4日11時半すぎ)より

【追記】フジテレビは4日午前11時30分からのニュースで文議長が来日し、G20国会議長会議に出席した様子を報じたが、誤報や訂正についての言及はなかった。(2019/11/4 13:40)

文議長「日本側との約束を取り消してはならない」と韓国紙報道

 韓国紙「中央日報」は、3日午前に配信した記事(日本語版)で、文議長の今回の訪日延期を進言する声もあったが、文議長は「約束を守る政治家として日本側と約束した行事を取り消してはならない」と側近に話した、と報じていた。ただ、同紙によると、文議長に同行する予定だった与野党議員団の日程を取り消し、「訪問団の規模も最小実務人員だけで再構成するよう指示した」という。こうした情報をもとにフジテレビが誤って「訪日延期」と報じた可能性もあるが、原因は定かでない。

 報道によると、文議長は今年2月、当時天皇の上皇さまについて「戦争犯罪の主犯の息子」「慰安婦問題の解決には天皇の謝罪が必要」「謝罪すれば解決する」などと発言。日本側の抗議を受け、文議長から「心を痛められた方々へのおわび」という表現が盛り込まれた書簡が参議院に届いたものの、山東昭子参議院議長は文議長との個別会談に応じない方針を決めたとされている(NHKニュースなど)。

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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