東京ー山口と同距離進んだ「メガフラッシュ」世界記録に認定
昔むかしヨーロッパでは、教会の鐘の音が雷を撃退すると信じられていました。だから雷鳴が聞こえると、鐘撞男が教会の塔に駆け上がって、必死にベルを鳴らしていたのです。しかしその風習のおかげで33年間で103人が被雷し命を落としました。当時は、高台かつ金属のそばにいることが逆に雷を寄せ付けていることに気が付かなかったのです。
実は雷の本来の規模も、今頃になってようやく分かり始めています。
2016年に打ち上げられたアメリカの気象衛星が雷の正体をとらえるようになってから、雷光のスケールが今まで知られていたよりもはるかに大きいことが分かってきました。世界気象機関(WMO)は1日(火)に、度肝を抜く2つの世界記録を発表しています。
①世界最長"距離"の稲妻
まず1つ目が、世界でもっとも長い距離進んだ雷光の記録です。
2020年4月29日、アメリカ南部テキサス州ーミシシッピ州間で発生したもので、その距離は768キロ(誤差±8キロ)に及びました。これはおよそ東京ー山口間の直線距離に匹敵します。東海道・山陽新幹線でも4時間ほどかかる距離を、数秒で駆け抜けていきました。下の動画はその雷が発生していた時の衛星画像です。
前回の記録は、2018年にブラジルの空を光らせた709キロの雷光でしたから、それを60キロ近く上回る記録です。
②世界最長"時間"の稲妻
2つ目が、世界でもっとも長い時間光っていた雷光の記録です。
2020年6月18日、アルゼンチンと隣国ウルグアイ間を駆け抜けた雷は17.1秒(誤差±0.002秒)も光り続けていました。多くのテレビCMの長さが15秒ですから、それを見続けてもなお光っていたことになります。
前回の記録も同じくアルゼンチンで2019年に出ていますが、それを0.39秒塗り替えました。
メガフラッシュ常襲地帯
こうした、数百キロ移動して10秒以上光りを放つド迫力の雷光を「メガフラッシュ」と呼びます。これがよく発生するのが「メソ対流系」とよばれる組織化された積乱雲の大集団ができやすい、アメリカの大平原や、アルゼンチン北部からブラジル南部にかけてのラプラタ平野です。今回の2つの記録も、メガフラッシュ常襲地帯で起きたものでした。
ただ、今回雷を検知した衛星はアジア域はカバーできないので、もしかすると、それよりもスケールの大きな雷が東南アジアで起きているかもしれないと、北欧の雷専門家はワシントンポストに語っています。
トンガ火山噴火の雷
ところで、すごい雷といえば、1月に発生したトンガの海底火山の噴火では急激な上昇気流と飛び出した粉塵などの影響で、信じられないほど多くの雷が発生したようです。
7時間で40万発、そのうち20万発はたった1時間で発生したそうです。つまり1秒間に55回という計り知れない頻度です。
トンガの火山噴火は世界中に衝撃波を飛ばし地球を揺るがしただけあって、その雷の数も常識をはるかに超えるものだったようです。