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政治人材を消耗、浪費したこの10年

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー

この10年間の政治を振り返ると、小泉政権の構造改革や郵政民営化選挙に始まり、自民党の失政により政権交代、民主党政権の混迷、東日本大震災、そして政権再交代とアベノミクス等々と大きなさまざまな変化があった。

他方で、下表をみていただくとわかるが、衆議院選挙に小選挙区制が導入された前後をみてみると、単純には比較できない面もあるが、導入前には、1年半から2年ぐらいは政権が維持できていたが、導入後は、小泉政権以外では(また安倍政権をどう考えるかはいまだ難しいが)、1年前後からそれ以下の期間しか政権が維持できていないことがわかる。これは小選挙区制導入に伴って機能しなくなった派閥の人材育成機能にかわる仕組みを政治、特に政党が構築できていないことによると考えることができる(注)。

そのことを別のいい方をすると、この10年間は、ある意味で政治人材を猛烈に消耗し、浪費してしまったといえるのである。総理という多くの政治のトップリーダーを短期間に消耗したことに伴い、その周辺にいたネクストリーダーも、政権などに関わったりした関係で判断ミスや失言そして批判等で、トップリ-ダーになる機会を失ってきているといえる。

その結果、現在の政界で、現在の安倍総理の次のトップリーダーが近々にはほとんどといっていいくらい見つからないのが現状だ。

つまり、この10年間は、政治において人材を使い尽くしてきてしまい、人材の育成と供給が、人材の需要に追い付かない状況が生まれてしまったのだ。政治人材は、健康や多忙さを考えると若さも重要な要素であるが、それなりの経験も必要であり、人材が育つにはある程度の(場合により、長い)時間も必要だ。

その意味で、安倍政権はいつまで続くかはいまだ未知数であるが、政治のトップを務めるリーダーの人材不足は当座長期間続くことが予想される。それは、政治において今後も混乱や不安定が生まれる可能性があるということだ。

私たち国民・有権者も、自分たちのリーダーを生み、育ていていく視点も考えて、選挙や社会的な活動に関わっていく必要があるようだ。

表:近年の歴代総理の在任期間

総理大臣名  期間        

海部俊樹  1989年8月10日~1991年11月5日    

宮澤喜一  1991年11月5日~1993年8月9日 

細川護煕 1993年8月9日~1994年4月28日 

(94年1月衆議院選小選挙区・比例代表並立制導入、非自民政権)

羽田孜  1994年4月28日~1994年6月30日

(非自民政権)

村山富市  1994年6月30日~1996年1月11日 

橋本龍太郎 1996年1月11日~1998年7月30日

(1996年10月同上制度導入による初の衆議院選)

小渕恵三  1998年7月30日~2000年4月5日 

森喜朗  2000年4月5日~2001年4月26日 

小泉純一郎 2001年4月26日~2006年9月26日 

'''安倍晋三  2006年9月26日~2007年9月26日 

福田康夫  2007年9月26日~2008年9月24日 

麻生太郎  2008年9月24日~2009年9月16日 

鳩山由紀夫 2009年9月16日~2010年6月8日  

(政権交代)

菅直人   2010年6月8日~2011年9月2日 

野田佳彦  2011年9月2日~2012年12月26日 

安倍晋三  2012年12月26日~現在       

(政権再交代。いつまで続くか?)'''

(注)この点に関しては、次の記事を参照のこと。

今の政治に必要なのは、21世紀型の政党だ」(2011年1月15日 朝日新聞WEBRONZA)

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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