大規模接種会場がある大手町駅。複雑な改札口の案内板は、中国人から見れば「親切!」その意外な理由
5月24日、東京と大阪で、65歳以上の高齢者に対する新型コロナワクチンの大規模接種がスタートしました。東京では大手町の「自衛隊東京大規模接種センター」で朝8時から接種が始まり、今後は1日あたり最大で、1万5000人への接種が行われる予定です。
東京の情報番組などでは、朝からこのニュースを報道しており、大手町駅からレポーターが生中継を行っていました。
地下鉄の大手町駅は改札口が40カ所以上もあり、複雑です。路線によっては(個人差がありますが)、改札口を出てから接種会場に最も近い出口(C2b)まで、徒歩10分以上もかかるかもしれない、といいます。
番組では、駅の改札口や最寄りのC2b出口、あるいは、接種会場付近で、接種にやってきた高齢者にインタビューしたり、案内板の紹介や案内係の様子などを紹介したりしていました。
この様子を見ていて、筆者はふと、中国の北京や上海などの地下鉄駅の改札口付近で見た光景を思い出しました。北京や上海なども、東京と同じく駅の構内が複雑で、改札口を出てから地上に出るまで、延々と歩かなければならないことがしばしばあります。
北京や上海でも、駅の改札を出たところに、東京と同じように、A1、B2、C3などの記号と大きな施設名や通り名、観光地の名称などが書かれている掲示板があり、基本的にはその方向に向かって歩いていけば、着けるようになっています。
しかし、ときにはそうでないこともあります。
不親切な中国の改札口の案内板
たとえば、A改札のところに、目的地の「〇△購物広場(〇△ショッピングセンター)」と書いてあるのですが、そこに向かって歩いていっても、なぜか出口がない。それどころか、途中まで行くと、「〇△購物広場」という案内板の表示がもう二度と出てこなくなってしまったり、あるいは、それはなぜか引き返す方向に案内が出ていたりするのです。
大手町などでも、場所によってはいきなりC2bという出口が表示されていないことがあります。
たとえば、同じ大手町駅でも、C2bは千代田線に近い出口なので、千代田線の人はおそらくほとんど迷わないのですが、東西線など、C2bからかなり遠い路線の改札口では、最初からC2bが掲示されていない場合があります。
1~2回でも利用したことがある人は迷わないですが、初めて大手町駅を利用する高齢者にとっては「C」は見つけられても「C2bがない!」とパニックに陥ってしまうかもしれません。
しかし、東京の場合、とにかくCに向かって進んでいけば、その続きの案内(C出口の詳細)は出るようになっていますし、駅員に聞けば、ほぼ100%の確率で教えてくれます。
一方、中国では、そうはいきません。今ではどの駅にも案内板はあるのですが、表示が不完全であるため、迷うことがしばしばあるだけでなく、駅員に聞いても教えてもらえないことがあるのです。
昨今では中国の駅員もとても親切になってきて、有名な目的地であれば、教えてもらえることもあることはあるのですが、そうでない場合は、教えてもらえないだけでなく、冷たくされてしまうことも少なくありません。
ここ1~2年、レストランやショップなどのサービス業での店員のサービスは見違えるように向上していて、どこで何を聞いても、とても親切に(しかも笑顔で)答えてくれるのですが、駅員などには、まだそうしたサービス精神は備わっていないと感じることがあります。
不愛想な態度に接して「聞かなきゃよかった……」とがっかりしてしまうこともよくあります。そうしたこともあり、他人に聞けない(あるいは、間違った道を教えられる)ので、中国ではスマホの地図アプリがあんなに発達したのではないか、と思うくらいです。
親切な日本の駅員さん
そのような現地の事情があるので、来日した中国人留学生はよくこういいます。
「よく東京の地下鉄は複雑で、外国人にとっては乗り換えが大変でしょう?わかりにくいでしょう?と日本人からいわれるのですが、そんなことはありません。むしろ、東京の地下鉄は、世界一わかりやすいんじゃないでしょうか。路線はすべて色分けされているし、案内板は漢字だし、何よりも、案内板が明確ですから、迷うことはありません」
東京以外の人にとって、まして高齢者にとっては、複雑で不親切に思える地下鉄の案内板は、中国人から見れば「すごく親切」に見えるのです。
そして、多くの人が感激するのが日本の駅員の態度です。
「改札を出る前に駅員さんに聞くと、たいてい、小さな地図を手にして、それを見ながら、ゆっくりとした日本語で説明してくれます。ときには、少し歩いて、指さして行き先を教えてくれることもありますね。だから、安心して地下鉄を利用できます」(中国人留学生)
今回の大規模接種会場での接種について、高齢者がわざわざ大手町まで行って、複雑な構内を歩くのは大変だという声がありますし、会場の設置や接種の予約方法、スピードなどについても、賛否両論、さまざまな意見があると思います。
ですが、もともと不親切なことが当たり前だった中国の駅の案内板を見ていると、このようなときに案内係が駅に立って道案内するところは、彼らの目から見て「弱者にとって優しい」と映るようです。