「店の売れ残りで冷蔵庫パンパン」 コンビニオーナーの自宅に潜入
2017年から縁あってコンビニ関係者の方に取材を続けている。その中で、「売れ残って余った食品が自宅の冷蔵庫にパンパンに詰まっている」「捨てるのもったいないから専用の冷蔵庫を買って、おにぎりとか弁当を冷凍して置いてある」などといった声を聞いてきた。オーナーの自宅冷蔵庫は、コンビニで売れ残った食品で本当にパンパンに詰まっているのだろうか。今回、大手コンビニ加盟店でオーナーを務める方の自宅を訪問し、冷蔵庫の中身を見せてもらう機会を得た。
「近くで見てて、こんな大変な商売はない」
大手コンビニ加盟店でオーナーを務めるQさん。取材で訪れたこの日、昼だけで、4〜5kg分の弁当、おにぎり、サンドウィッチ、パンなどを捨てたという。
ごみ袋は、70リットルの大きなサイズを使っており、「だいたい、1日に2枚は使う」そう。
Qさんのお母様にもお会いした。お母様は「近くで見てて、こんな大変な商売はない」と語る。
肉まん、フライ類、弁当の廃棄が多い
「どんなものの廃棄が多いですか?」とQさんに聞いた。
弁当やおにぎりは、消費期限の切れる2時間前に棚から下げてしまう決まりだ。サンドウィッチも消費期限が切れる3時間手前で棚から撤去する。おにぎりを割引するセールの時には、大量に廃棄になる。
「本部からは1ヶ月30万の廃棄を指示されるがそれ以上捨てている」
コンビニ本部からは、1日1万(円分)の廃棄を指示されるという。つまり、1ヶ月あたり、30万円分の食料を廃棄するということだ。だが実際にはそれ以上捨てているとQさんは話す。
廃棄が多い肉まん、フライもの、弁当のほか、デザート類も全然売れなくて捨てることが多い。シュークリームなど、本部からは納品を指示されるが、「全然売れない」。
売れない。けれど、「1日、6便、食べ物が運ばれてくる」。弁当やパン、加工食品、冷凍食品など、カテゴリ別に運ばれてくる。
「お客さんがこれ欲しいと言って入れても来ない」
お客さんから「これが欲しいから(店に)入れて」と言われ、リクエストに答えて入れたものの、そのお客さんが来ないこともあった。待てど暮らせど来ないから、もう入れるのをやめた。そしたらお客さんがやってきて「無い」と不満をいう。
売れ残った食品をオーナーが私用で使うことについて
自宅の冷蔵庫は、売れ残った食品で一杯だった。
このように、コンビニで売れ残った食品を、オーナーが自宅で消費することについて、コンビニ本部とオーナーが締結した契約書ではどう書いてあるのだろうか。
Qさんが加盟するのとは別の、大手コンビニ加盟店でオーナーを務めるPさんに聞いた。
Pさんは、「捨てるべき食品を食って生きろと言うのか?それに対してオーナーたちは憤りを感じないのか?」とも語った。
売れ残りを食べ、結果的には肥満体に
Pさんは語る。
Pさん曰く、肥満はコンビニオーナーの職業病だと言う。
スーパー幹部は「見切りはOK。廃棄はダメ」
土屋トカチ監督の映画『コンビニの秘密』によれば、全国55,000店舗あるコンビニのうち、弁当などのいわゆるデイリー食品で見切り(値段を割り引いて)販売をしているのは、1%程度に過ぎない。
ある大手スーパーの経営陣であるVさんに、見切りについてどう考えるのかを聞いた。
ただ、見切り販売で売り切る努力をしていても、この企業全体では、年間、億単位の食品廃棄が出ているそうだ。まして、見切り販売をしない場合、廃棄は全国でどれほどの金額になるのか。
全国のコンビニで廃棄される量は「弁当にして1日あたり90万個から150万個」
筆者が前に取材して書いた記事の、1日当たりのコンビニの廃棄量を、弁当1個を400gとして計算した。すると、全国のコンビニで廃棄される量は、1日あたり90万個から150万個と試算された。
念のため、Pさんにも聞いて、試算してもらった。およそ120万個だという結果だった。
弁護士の意見
このような状況を変えようとして、申し入れをしているコンビニオーナーもいる。
コンビニ最大手、セブン-イレブン・ジャパンがオーナーと締結している、加盟店基本契約書の第57条には、改定条項があるという。5年ごとに加盟者の意見を聞いて改定することになっている。
前述の『コンビニの秘密』にも出演している、中野和子弁護士の意見を聞いた。
「食べられるものは食べるのが当たり前」なはずなのに・・・
家庭で作った食べ物は、基本的には、食べるのが当たり前だろう。「さあ、ごみ箱に捨てるために今から1日かけて料理しよう!」という人は、今のところ、聞いたことがない。だが、事業活動になると、なぜ、1日どころか1ヶ月も数ヶ月もかけて作って、運ばれてきた食品が、当然のように捨てられるのだろうか。
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