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咬ませ犬を倒したWBCスーパーウエルター級4位

林壮一ノンフィクションライター
Ryan Hafey & Esther Lin/PBC

 20勝(16KO)1敗で、WBCスーパーウエルター級4位にランクされている23歳のサウスポー、ヘスス・ラモス。2023年9月30日に世界タイトルに挑んだ経験のあるベテラン、エリクソン・ルビンに111-117、112-116、113-115のスコアで判定負けを喫した。

 デビュー以来、過保護過ぎるマッチメイクで、安全な相手とばかり戦ってきたラモスは、メッキを剝がされたのだ。

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 先日、そのラモスが再起した。対戦相手のヨハン・ゴンザレスは、34勝(33KO)2敗のベネズエラ人。ラモスより、10歳年上の選手だった。

 初回からパワーで勝るラモスがペースを握る。ジャブの差し合いでアドバンテージを取り、左ストレート、ボディショットも決める。2回の中盤、ラモスは左ストレートをぶち込み、33歳を後退させた。

 この一発で、ゴンザレスは動きが鈍くなる。拳に体重が乗らず、バランスの悪さが目に留まった。

 勢い付くラモスは何度も左フックをボディに見舞い、ベネズエラ人を削っていく。

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 スピードが無く、時折フリッカーにして横着なボクシングをしながら、ラモスのボディは効果的だった。

 ラモスはヒットしたパワーショットの半分以上がボディブローだった。何とか凌いでいたゴンザレスだが、反撃の糸口を見付けられない。手を出すことを忘れはしなかったが、パンチ力の差も大きかった。

 6ラウンドに入ると、ゴンザレスは力なくリングを旋回した。ラモスの攻撃は粗いが、そこを掻い潜って終盤にコンビネーションを見舞う、これによって、ラモスは左目尻をカットし、鮮血が滴り落ちる。

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 息を吹き返し、前進するベネズエラ人に対し、ラモスは真っ向から打ち合った。世界4位はこの乱打戦に打ち勝つ。その姿には、かつてラモスが見せたことの無い力強さが備わっていた。

 そして迎えた第9ラウンド2分29秒、ノーガードで相手の動きを観察しながらパワーパンチを繰り返していたラモスの左フックがゴンザレスを捉え、ベネズエラ人ファイターは腰からキャンバスに沈む。

 カウント8で立ち上がったゴンザレスだが、もはや、倒されるのは時間の問題だった。ラモスがラッシュをかけ、2度目のダウンを奪ったところで、レフェリーが試合を止めた。

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 ラモスの動きは決してシャープではない。世界チャンピオンになれる逸材とは、とても呼べない。しかし、一つ殻を破ったかに見えた。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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